―― 販路に関しては、キャリア版としてドコモのモデルがあり、あとはオープンマーケット版だと思います。KDDIの「au +1 collection」もこれと同じと考えていいでしょうか。
清水氏 そうなります。KDDIさんには、オープンマーケット版とまったく同じものを取り扱っていただく形です。
中江氏 X(旧Twitter)などでも、auから出ないのかというお声はいただいていました。au +1 collectionはアクセサリー的な扱いではありますが、取り扱っていただけたのはよかったと思います。やはり日本市場においては大きな販路ですからね。
―― シャープ直販の「COCORO STORE」で買う人も増えているのでしょうか。
中江氏 その動きは大きいですね。最上位モデルのAQUOSを買ってくださる方は、他のAQUOSも使っていることが多い。そういう方は、COCORO STOREを使う傾向があります。一方で、各キャリアやIIJmioで買う方は、AQUOSをスマホの1つと見ているので、少しだけ層が違うような気もします。
―― 周辺機器も工夫されていると思います。カメラリングにアタッチメントを付けられるのは面白いですね。
中江氏 こういうものを作れると言ったら、乗ってきたのがエレコムさんとLooCoさんでした。AQUOS R9 proの設計をするときに、リングの部分がステンレスになっているので、レンズフィルターをじか付けしたいというところから企画が始まっています。
―― そこは、最初からフィルターを付ける前提だったんですね。
中江氏 技術メンバーからのアイデアです。今までだとケースがあって、そこにねじ止めするような感じでしたが、今回はカメラだよねというところからスタートしているので、じかに付けてしまおうと無邪気な発想から始まりました。ただ、この位置にマグネットをつけるのは正気ではないと思います(笑)。
清水氏 普通だと、地磁気センサーもジャイロも狂ってしまいますからね(笑)。作る側もワクワクしながらやっていたのがよかったです。
―― その干渉は解決できたのでしょうか。
清水氏 しました。ちなみに、この機種はQi対応ですが、通常だとQiも狂ってしまいます。ですが、微妙な位置調整をして解決しました。
中江氏 内部でもノイズが発生しないよう、保護をしています。
―― ちなみに、オープンマーケット版はシャッター音を消せるのでしょうか。
中江氏 シャッター音はなかなか扱いが難しく、われわれも全面的に押しているわけではありませんが、事実としては消せます。
清水氏 海外のニーズから来ている部分はあります。一方でキャリア版はキャリアからの要求があるのも事実です。
中江氏 人間の善意に委ねている部分はありますが、寝ている子どもを起こさずに撮れるというメリットはありますね。
清水氏 静かな飲食店での撮影もしやすくなります。われわれも(シャッター音を消せるようにしてほしい)という声があることは認識していますが、今回はその声に応えたというより、海外展開を意識しての仕様になります。
AQUOSシリーズ全体のデザインを見直したことで、AQUOS sense9はその外観だけでなく、設計も大きく変更することができた。スペックを大幅に底上げできた背景には、こうした事情もあった。コストアップにつながりそうだが、上位モデルなどとのパーツの共通化で価格は抑えており、競争力をさらに高めることができた格好だ。その結果が、好調な初速に結びついている。
対するAQUOS R9 proも、普通のハイエンドモデルとしてのAQUOS R9があったことで、より大胆なモデルチェンジを断行できたといえる。カメラ機能を強化したのはもちろん、デザインもカメラライクになり、ガジェットを好むフラグシップモデルのユーザー層によりフィットする端末に仕上がった。2機種とも、AQOUS R9でデザインやコンセプトを刷新した好影響が出ている。その意味で、2024年のモデルチェンジは成功だったといえそうだ。
左からAQUOS R9 pro、AQUOS R9、AQUOS sense9、AQUOS wish4。振り切ったAQUOS R9 pro以外はデザインに統一感を持たせ、ローエンドからフラグシップまでくまなくカバーしている
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