表向き、EBITDA単月黒字化を達成した楽天モバイル。今回の決算会見で特に印象的だったのが「広告」だ。
2024年12月に「楽天モバイル感謝祭」を開催。その際、Rakuten Linkアプリから楽天市場への送客が1210万件と前月比で120万件伸び、キャンペーン経由の流通総額も281億円になったという。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年2月15日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
Rakuten Linkアプリでは楽天モバイル感謝祭で使えるクーポンを配る一方、大手クライアントが売り上げを伸ばそうと広告を出稿する。このARPUが上昇しており、結果として、EBITDA黒字化ラインを上回ることになるというのだ。楽天モバイルでは今後、楽天モバイル感謝祭を定期的に開催していくという。
楽天モバイルでは、単月黒字化を意地でも達成するため、ARPUに関してデータ、コール、オプション、その他に加えて「エコシステム」という数値を載せるようになった。楽天モバイルを契約すると、他の楽天グループのサービスを使い、決済額が伸びるからという理由だ。
このARPUに関しては「その他」という項目もあるのだが、2024年第4四半期の「その他」は90円なのだが、12月に限ってみると186円となっている。つまり、楽天モバイル感謝祭開催に伴うRakuten Link経由の広告増収で倍近い数字をたたき出すことに成功したというわけだ。
単純計算で一人あたり96円として、全ユーザーの830万人と換算するとざっくり8億円弱の広告収入がもたらされた事になるというわけだ。
これまで、楽天モバイルと楽天経済圏の相乗効果としては「スマホを契約すると他のサービスを使うから経済圏全体が潤う」という構図ばかり取り上げられてきた。しかし、数回前ぐらいからの決算から「広告効果」というのをアピールするようになり、今回、その効果がかなりのインパクトがあるということが示されたように思える。
実際、楽天市場など、出店している事業者からすれば、売り上げを上げるためには楽天市場上の目立つところに広告を出稿することが求められるし、広告をうまいこと展開できれば、店の売り上げもあがり、さらにターゲットにしているユーザーにきちんとリーチできるというマーケティング的な効果も現れるというわけだ。
最近ではユーザーに商品を買ってもらうため、AIを活用して、ユーザーのニーズに合わせた的確な商品提案ができるようになっているという。
そう考えると、データ使い放題で通信料収入の増加は見込めなくても、楽天グループ全体の売り上げに加えて、広告で稼ぐという、世界の他のキャリアでは真似のできないビジネスモデルを楽天モバイルは構築しつつあるのかもしれない。
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