2025年も既に多くの機種が登場しているワイヤレスイヤフォン。そんな中、日本でも発表直後から大きく注目されている、パナソニックのTechnicsブランドの完全ワイヤレスイヤフォン「EAH-AZ100」を実際に1カ月使ってみたので、レビューする。パナソニック直販サイトでの価格は3万9600円(税込み、以下同)。
今回レビューするEAH-AZ100ではマルチポイント接続が進化しており、実際に使って特に進化を感じられた。本機種は後述の磁性流体ドライバーを採用したことによる高音質をアピールする機種だが、筆者はこのマルチポイント接続が最もうれしい機能だと感じた。
中でもイチオシのアップデートが接続時の「先勝ち」「後勝ち」を選択できるようになった点だ。1台目のデバイスから音声を再生中に2台目のデバイスから音声を流した場合、「先に再生していた方を優先させる」と「後から再生した方を優先させる」をイヤフォン側から選べるようになる。
ワイヤレスイヤフォンのマルチポイント接続で、接続時の挙動を選べる機種は少ない。通話に関しては2台目の機器に着信があった場合、着信音を鳴らすか否かの選択もできる。
そして、テクニクスのワイヤレスイヤフォンの機能として便利と感じたのが、同社の製品ではおなじみになりつつある「3台マルチポイント接続」だ。これは3台の端末と同時に接続でき、着信を受け取れるというもの。この機能はEAH-AZ100だけでなく、2023年に発売されたEAH-AZ80、EAH-AZ60M2、EAH-AZ40M2でも利用できる。
一般にマルチポイント接続といえば、2台の端末に接続してどちらからも着信を受け取れるもの。ここにもう1台接続できるようにした機能が、テクニクスの3台マルチポイント接続機能だ。
特に会社支給の携帯電話を持つユーザーにとってメリットが大きく、ビジネスユーザーの利用シーンをしっかり想定していると感じた。コロナ禍を経てリモートワークの普及、各種講演やセミナーなどがオンライン化したこともあって、PCを使って通話するシーンが増えた。PCで会議している際に、常時2台の端末と接続できるのが便利で、プライベートと仕事用の端末両方の着信を受け取れる。
セキュリティ対策やリモートワークの浸透を理由に、会社から携帯電話を支給されている人の数も増えている。2024年にMMD研究所が行った「法人向け携帯電話の利用実態調査」によると、仕事で利用する携帯電話のうち「会社から業務用の携帯電話を支給されている」と答えた方が、全体で31.5%とおよそ3分の1を占めた。また、大企業だけで見ると43.4%となり、会社から携帯電話を支給される傾向が強い。
普段のマルチポイント接続+会社支給の携帯電話。この潜在需要にテクニクスは目を付けたのだろうと評価したい。
ここで「AppleのAirPodsでも同じことができる」と指摘する人も多いだろう。しかし、この手の連携機能には端末の相性に制約がある。AirPodsの場合、同一のAppleアカウントにひもづくiOS(iPhone)、iPad OS、MacOSの端末間であれば、音声コンテンツの再生時にシームレスに接続先を切り替えられる。実質的なマルチポイント接続機能であり、iPadとAirPodsを接続していてもiPhoneの着信に応答したり、MacでWeb会議に参加したりできる。
便利な一方、これは必然的に身の回りをApple製品で固めなければならず、汎用(はんよう)性という面では劣る。また、会社から支給されるiPhoneの場合、個人のApple IDが利用できない場合も多い。この場合、AirPodsを接続したからといっても、高度な連携機能は一部利用できない。
一方で、テクニクスの「3台マルチポイント接続」は接続する端末のプラットフォームを選ばないことが大きな利点。iPhoneとAndroidスマホにWindows PCといった全てOSが異なる組み合わせでも問題なく接続できる。
会社で使う業務用PCはWindowsのケースも多く、会社支給の携帯電話が必ずしもiPhoneというわけでもない。EAH-AZ100はそのような場面でもしっかり対応できる点が優秀すぎると評価したい。
1カ月利用した限り、マルチポイント接続機能に関してEAH-AZ100は秀でていると評価したい。筆者もいろいろなメーカーのイヤフォンを使用してきたが、先勝ち、後勝ちの設定で端末間の意図しない接続の切り替えによる誤作動を防げる点はありがたい。
特にタブレット端末を子どもの動画用端末として使う場合、イヤフォンをスマートフォンに接続したはずなのに、意図しないままタブレットの音声に切り替わってしまう状況を防げるのだ。
3台接続機能は、接続先の環境を選ばない点で非常に助かっている。PCでもタブレット端末でも、サブスマホでも。アプリやOSのエコシステムに依存せず、あらゆる環境で使える点は他社商品にない強みだ。
意外なところでは、2台のマルチポイント接続でLDACコーデックが利用できるのも地味ながらうれしい。機種によっては、マルチポイント接続の設定にすると高音質コーデックを利用できなくなることもあるため、音質を求める本機種ではありがたい仕様だ。
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