決済や送金、割り勘など、基本的には日本と同様の機能が使えるが、一部、制約もある。その1つが、ネットワーク圏外の場所でも支払いができる「オフライン支払いモード」だ。海外でPayPayを利用するには、Wi-Fiやモバイル回線を含むネットワークに接続している必要があり、サービス開始当初はオフライン支払いモードを利用できない。
モバイル回線については、日本キャリアの国際ローミングなら問題ないが、データ通信にのみ対応している現地のSIMやeSIMでは、海外を経由して通信をするものだと海外支払いモードが利用できない場合があるとのこと。
決済金額の上限や決済回数などについては、「国内とは変わらない条件を設定している」(柳瀬氏)そうで、詳細は後日発表するとのこと。PayPayのオンライン決済を海外で導入する計画は現時点ではなく、まずはオフライン決済の拡充を目指す。
海外でPayPayを利用可能にする狙いについて、柳瀬氏は韓国渡航歴のあるPayPayユーザーのうち90%が海外でPayPayを利用したい意向があるというアンケート結果を挙げる。PayPayを海外で使いたい理由の上位には「円換算の金額が分かる」「外貨両替所に行く手間が省ける」「スピーディーに支払える」ことが挙がった。
PayPayの海外利用国の第1弾を韓国とした理由について、柳瀬氏は「韓国は日本人が一番渡航している国」であることを挙げる。利用国の拡大も検討しており、「日本人の観光客がよく行く先として、台湾、ハワイ、中国」などを候補に挙げる。ただし、「単に(決済サービスを)接続すればいいというわけではなく、マーケティング、UI・UX、使えるお店や種類を確保する準備を整えて事業を拡大していきたい」とする。
韓国ではクレジットカードが普及しているが、「クレジットカードを持てない人、使いたくない人もいる」(柳瀬氏)ことや、屋台などクレジットカードを使えない場所もあることから、PayPay導入の意義があると判断した。また、クレジットカードの場合、不正にカードを読み取られるスキミングのリスクがあるが、コード決済ならそのリスクはない。
もちろん、クレジットカードも利便性は高い。PayPayはクレジットカードとして「PayPayカード」「PayPayカード ゴールド」を提供しているため、PayPayカードの利用も訴求する。韓国はキャッシュレス比率が94%に達するほどのキャッシュレス大国であり、「PayPayを使えない場所ではPayPayカードを、クレジットカードを使えない屋台でもPayPayを使ってほしい」と柳瀬氏はアピールする。
海外渡航する日本ユーザーに対して、通貨を換算する際に発生する為替手数料は、PayPayとPayPayカードともに税別で3.5%。「国内で両替するよりは安く、観光地に行って変えるよりはちょっと高いイメージ」(柳瀬氏)とのこと。この手数料は為替レートの中に組み込まれている。
今回のサービスは、PayPayが韓国に進出して韓国人向けに決済サービスを提供するといったものではなく、日本人が韓国でPayPayを使えるようにして、海外での決済の利便性を上げるための取り組みとなる。
なお、海外で利用できる日本のコード決済として、LINE Payが台湾で利用できたが、現在LINE Payはサービス終了しているため、2025年9月時点で、海外で利用できる日本のコード決済はPayPayのみとなる(PayPay調べ)。
これまで、インバウンド向けの決済サービスを先んじて取り組んできたのは、コロナ禍の入国制限が緩和され、訪日外国人の数が急激に伸びてきたことが大きい。2024年は、2019年の約3200万人を超える約3700万人が日本を訪れている。一方、アウトバウンドについてはインバウンドほど渡航者数が回復しておらず、2024年の日本人出国者は1300万人ほどにとどまる(いずれも日本政府観光局調べ)。柳瀬氏は「アウトバウンドの需要の回復が遅れている」ことを指摘する。
また柳瀬氏は、日本人向けのサービスでは「セキュリティの担保が重要」であることにも触れる。本人確認の必須化や個人情報を連携しない取り組みなど、インバウンドよりも厳重なセキュリティ対策を行っていることから、決済サービス連携のハードルは高いようだ。「国によって守らなければならない法律やポリシーがある。日本の方が安全に対して厳しい観点もあり、準備を整えてリリースしたかった」(柳瀬氏)
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