生活に根付くキャッシュレス決済だが、交通系電子マネーでより高額な支払いをしたいという需要が高まっている。現在は単なる移動手段という枠組みを超え、日常の買い物など多様な場面で利用されている。
1月にも「Suicaがないと死ぬ」との声が反響を呼びネット上で話題になった。日常に欠かせなくなったSuicaだが、家電量販店で数万円もする商品を一括で購入しようとしたり、家族での外食などでまとまった金額の支払いを済ませようとしたりする際に大きな制約があることから、一部の利用者の間で「不便だ」との声が広がっている。
利用者の前に立ちはだかる大きな制約とは、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)が提供する「Suica」の入金上限額が常に2万円に制限されているという仕様だ。専用アプリを使って登録済みのクレジットカードから入金する場合でも、1回の入金は一定の単位で指定できるが、最終的な残高の合計が2万円を超える入金処理はシステム上受け付けられない。駅窓口や自動券売機等を利用した現金での入金手続きにおいても全く同じ制限がかかる仕組みだ。
利用者が事前に指定した金額を下回った際に自動で入金するオートチャージ機能を使ってもこの制限は回避できない。JR東日本広報によると、この機能はあくまで残高が一定金額以下になった際に2万円の範囲内で残高を積み増す。そのため2万円を超える高額な商品を一度に購入しようとしても、決済と同時に不足分が入金されて支払いが完了するといった処理は行われず決済は成立しない仕様だ。
この仕様により、利用者は少額な買い物を超える高額な支払いを行う場面において、別の決済手段を併用する必要に迫られている。同じ店舗内でも少額の買い物には交通系電子マネーを使い、高額な商品を買う際にはクレジットカードなどを取り出すという使い分けが生じている。決済手段を1つにまとめてスムーズに会計を済ませたいという利用者の強い希望に対して、現状のシステムは完全には応えられていない。
なぜこれほど普及した決済手段に2万円という低い上限が設定されているのか? この疑問についてJR東日本広報は、サービスを開始した当時の社会環境が大きく影響していると説明した。JR東日本広報によると、サービス開始当初の社会は現在よりも現金による支払いが圧倒的に主流で、当時はクレジットカードを高額な買い物に使うものとして捉える風潮が根強くキャッシュレス決済は現在ほど身近ではなかったという。
このような時代背景の中で電子マネーを普及させるため、JR東日本は明確な目標を定めて事業を展開した。JR東日本広報によると、利用者が現金で支払う際の硬貨を取り出して数えたりお釣りを受け取ったりする不便さを解消することに焦点を絞ったという。さらに駅構内や周辺店舗が大量の硬貨を扱う際にかかる管理の手間や手数料といった費用を削減することに狙いを定め、特定の課題解決に向けた決済の仕組みを構築した。
利用者と店舗双方の現金の取り扱いに関する課題を解決するため、JR東日本はあえて少額決済を中心に利用拡大を進める戦略をとった。高額決済に対応する複雑な仕組みを導入するよりも、日常的に発生する少額の支払いを素早く処理することに特化させた。この戦略が功を奏し、駅の改札を素早く通過するだけでなく駅周辺での手軽な買い物を実現させ、交通系電子マネーとしての確固たる地位を社会に確立するに至った。
しかしサービス開始から時間が経過し、決済手段の多様化やキャッシュレス化が進展したことで社会状況は激変した。JR東日本広報は少額決済に特化するこれまでの当たり前を見直し、利用者がより便利に高額決済を含めたさまざまな場面で利用できるように刷新すると語った。この環境変化と利用者の要望に対応するため、JR東日本は高額支払いにも対応できる新たな決済サービスの導入に向けたシステムの開発を本格化させた。
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