皆さん、突然だが、Androidスマートフォンで「おサイフケータイ」を使っているだろうか? 私は今後も使いたくない。
最も大きな理由はこれだ。一部の機種において本体をリセットしてもおサイフケータイのデータは残るという、その不便極まりない仕様があるためだ。
おサイフケータイは、一度でもサービスを利用すると、端末内の「FeliCa」チップが埋め込まれたICカード領域に利用履歴や会員情報などのデータが直接書き込まれる。厄介なのは、この領域に記録された情報が、スマートフォンのシステム設定から実行する通常の「工場出荷状態にリセット」や「すべてのデータを消去」という操作では一切消去されない点だ。端末本体がどれほどきれいにリセットされて見えても、ICカード領域にはデータが残り続ける。
売却しようとして初めて、本体を初期化してもデータが消えていないという厳しい現実に直面する。この仕様によって何度も苦い思いをした経験がある。
「ソフマップ」が運営する「ラクウル」や、「ゲオ」といった中古買い取り店では、おサイフケータイのメモリが「未利用」かつ使用ブロック数が「0」の状態でなければ買い取ってもらえない。前利用者のデータが残っている端末は、次の購入者が利用できるメモリ領域を制限するだけでなく、個人情報が復元されるリスクを伴うためだ。
さらにマイナンバーカードの「スマホ用電子証明書」を登録していると厄介だ。この電子証明書は、おサイフケータイアプリのメモリ使用状況画面からは利用状況を一切確認できない。マイナアプリが入っていれば失効から48時間以内にネットに接続することで自動削除されるが、既にアプリを消していたりオフラインだったりするとデータが残ってしまう。そのため確認漏れが発生しやすく、売却前に「マイナポータル」アプリから自ら失効と消去の手続きを行わなければならない。
こうした仕様がユーザーの売却行動をちゅうちょさせるわけだ。
実際にデータを完全に消去しようとすると、その手順はサービスごとに驚くほど細分化されている。モバイルSuica、モバイルPASMO、モバイルICOCAなどの交通系ICカードは、おサイフケータイアプリを「Google」アカウントとひも付けた上で、預け入れ操作を行わなければならない。一方で、「iD」や「楽天Edy」「nanaco」「WAON」、dポイントといった各サービスは、それぞれの専用アプリを個別に起動して個々に削除手続きを進める必要がある。
しかも、古い仕組みのチップを採用した機種や一部のアプリは、手元の操作だけで消去することすらできない。
例えば、「QUICPayモバイル」アプリで登録したカードを削除し忘れた場合、手元の操作では消去不可能となり、ショップへの持ち込みや修理拠点への送付を強いられる。ドコモの契約者であれば、ドコモショップに設置された専用機器の「DOCOPY」を利用して消去を実行できる。しかし、auやソフトバンクにはこのような専用機器がないため、店舗スタッフに対面で消去を依頼しなければならず、多大な待ち時間と手間を強いられる。
キャリア端末ではない、いわゆる国内版SIMフリー端末を購入したユーザーの負担はさらに多い。
メーカーや機種によっては、おサイフケータイのデータを完全初期化するためだけに、各メーカーのサポートセンターに端末を配送して手続きを依頼するしかない。データの初期化手続きのためだけに費用と日数を費やすのは、ユーザーにとって極めて理不尽な負担だ。
データ消去や移行の複雑さに拍車を掛けているのが、不親切なサポート体制だ。特に、技術やインフラを提供するフェリカネットワークスのサポート情報は、基本的に事前の大々的な告知を行わずに情報を更新する「サイレント公開」という形で提供される。ユーザーが情報の変更や削除方法に自発的に気付くことは難しく、常に置き去りにされている感覚を抱く。
情報のありかが公式Webサイトの奥深くに隠されているため、いざ調べようとしても公式Webサイトの隅の隅まで探してアクセスできずに困る場面がある。
おサイフケータイ関連のトラブルや仕様変更に関するアナウンスも、企業のニュースリリースや公式サイトの奥深くにひっそりと掲載されることが多い。情報の更新頻度や発信のタイミングが分かりにくいため、一般のユーザーがトラブルを未然に防ぐための知識をタイムリーに得ることは困難だ。このような不透明な情報発信の姿勢が不安を根強くさせている。この不便さはユーザーに自衛を強いる大きな要因となっている。
近年追加された一括消去機能の存在すら、ひっそりと更新された対応機種一覧に載っただけだった。
ここまでお伝えした複合的な障壁が存在するからこそ、私はAndroidでおサイフケータイを今後も利用したくない。
その代わりに、現在の私の手元ではAppleの「iPhone Air」がおサイフケータイ端末として稼働している。AppleはFeliCaを用いたサービスを厳密にはおサイフケータイとは呼ばず、交通系ICカードやクレジットカードなどを管理・使用するための「Apple Pay」と呼んでいる。
私のiPhone Airはボディーの軽さも相まって、モバイルSuicaなどの決済機能だけを動かす決済専用スマホになりつつある。iPhoneのSuicaをはじめとするApple Payの決済サービスは、Androidのようにサービスごとにチマチマと履歴を削除したり、専用機器で削除を依頼したりする手間が一切ない。
基本的には端末設定の初期化だけで、FeliCa領域の情報も含めて安全かつ完全にリセットが完了する。
買い取り査定時に買い取り拒否や減額を恐れてキャリアショップへ駆け込んだり、メーカーのサポートセンターへ有料で端末を送付したりする不条理な作業から、iPhoneはユーザーを完全に解放してくれる。端末売却の際にも一切のストレスがなく、初期化ボタンを1つ押すだけで次のステップへ進める手軽さこそが、Androidのおサイフケータイを敬遠する私が行き着いた結論だ。
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