多様化するMVNOのサービス――料金や販売形態の最新トレンドをチェック:はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第15回
MVNOが提供する通信サービスの料金プランは、めまぐるしく変更している。最近はスマホとセットで販売するMVNOも増えている。連載の最終回では、格安SIMの料金や販売形態などのトレンドを紹介したい。
MVNOの料金プランは、こまめに改定されている。本連載第2回で取り上げた代表的な料金プランも、今では金額やデータ量が異なっており、半年もたてばデータが古くなってしまうのが現状だ。また、相互接続の形で提供するMVNOは、当初はドコモだけだったが、連載を続けているうちにKDDIの回線を用いた「mineo」も登場した。音声通話に対応したSIMカードやスマートフォンがセットになった販売形態も、徐々に一般的になりつつある。最終回となる今回は、ここ半年で大きく変化したMVNOの最新トレンドをチェックしていこう。
徐々に変わりつつある“1Gバイトあたり”の相場
連載開始当初の1月は、ビッグローブが2013年12月に1Gバイト、933円の「エントリープラン」を打ち出したばかり。他社もその価格に追随を始めており、税込で1Gバイトが約1000円という“相場”が形成されていた。ところが、そのビッグローブは半年もたたずに料金を改定。消費増税に合わせる形で、1Gバイトの料金を33円値下げし、4月1日から900円とした。3月には、ドコモがMVNOに回線を貸し出す際の基準となる接続料を発表しており、これが大幅にダウンしていたこともMVNO各社の値下げを後押しした。
料金 | データ量 | 4月1日の改定 | |
---|---|---|---|
エントリープラン | 900円 | 1Gバイト | 33円の値下げ |
ライトSプラン | 1505円 | 2Gバイト | 変更なし |
ライトMプラン | 2838円 | 3Gバイト | 変更なし |
スタンダードプラン | 3790円 | 7Gバイト | 変更なし |
わずかな違いではあるが、「税込で1Gバイト、1000円」から、「税別で1Gバイト、900円」に値下ったわけだ。同時期に大手MVNOも、こうした動きに歩調を合わせ、容量を上げたり、料金を下げたりといった施策を打ち出している。例えば、MVNO最大手のNTTコミュニケーションズ(OCN)は、「モバイルONE」の「30Mバイト/日コース」を「50Mバイト/日コース」に改めた上で、料金を934円(税別、以下同)から900円に値下げした。これが4月1日のこと。「60Mバイト/日コース」も「80Mバイト/日コース」になり、1410円から1380円になっている。そのほか、NTTコミュニケーションズは、「1Gバイト/月コース」「2Gバイト/月コース」「500Kbpsコース」も、それぞれ4月1日から値下げに踏み切っている。
料金 | データ量 | 4月1日の改定 | |
---|---|---|---|
50Mバイト/日コース | 900円 | 1日、50Mバイト | 34円値下げ+20Mバイト増量 |
80Mバイト/日コース | 1380円 | 1日、80Mバイト | 30円値下げ+20Mバイト増量 |
1Gバイト/月コース | 1110円 | 1カ月、1Gバイト | 100円の値下げ(容量据え置き) |
2Gバイト/月コース | 1450円 | 1カ月、2Gバイト | 55円の値下げ(容量据え置き) |
500Kbpsコース | 1800円 | 無制限 | 86円の値下げ(速度据え置き) |
IIJも、4月1日にバンドルクーポンの容量を改定した。バンドルクーポンとは、オンにしたときだけ最高速度が出る仕組みのこと。高速通信が必要なときだけデータ量を消費できるため、ここぞというときだけオンにすれば節約につながる。もともとは「ミニマムスタートプラン」が500Mバイト、「ファミリーシェアプラン」が2Gバイトだったところを、それぞれ1Gバイト、3Gバイトに増量。2Gバイトのバンドルクーポンが付く「ライトスタートプラン」は据え置き、料金も増税に合わせた変更はなかったが、バンドルクーポン容量によって、他社にひけを取らないようになった。
料金 | データ量 | 4月1日の改定 | |
---|---|---|---|
ミニマムスタートプラン | 900円 | 1Gバイト(クーポン制) | バンドルクーポンを500Mバイト増量 |
ライトスタートプラン | 1520円 | 2Gバイト(クーポン制) | 変更なし |
ファミリーシェアプラン | 1110円 | 3Gバイト | バンドルクーポンを1Gバイト増量 |
NTTコミュニケーションズ、IIJ、ビッグローブというMVNO大手3社の料金プランをコピーした「b-mobile X SIM」を展開中の日本通信も、これら改定に合わせ、料金を値下げしたり、データ量を増やしたりしている。4月25日から、月額900円の「プランI」のデータ通信量を600Mバイトから1.01Gバイトに増量。これは、IIJのミニマムスタープランに合わせたものだ。OCNのプランをコピーした「プランN」については、1日のデータ量を40Mバイトから51Mバイトに上げ、料金を934円から900円に変更した。ただし、ビッグローブ風の「プランB」については、もともとがなぜか2Gバイトの「ライトSプラン」に追随していたため、料金やデータ量に変更はなかった。
料金 | データ量 | 4月25日の改定 | |
---|---|---|---|
プランI | 900円 | 1カ月、1Gバイト | 401Mバイトの増量 |
プランN | 900円 | 1日、51Mバイト | 34円の値下げと11Mバイトの増量 |
プランB | 1505円 | 1カ月、2Gバイト | 変更なし |
このように、ここ半年でMVNOの料金やデータ量が細かく見直されてきている。また、システム的には、IIJのクーポン制にOCNがキャッチアップしており、「ターボ機能」と呼ばれるものを6月25日にリリースしている。同社のプランは1日単位でデータ量が決められているため、データ量の少ないプランだとすぐに使い切ってしまうことがあったが、このシステムがあれば最高速度が出る状態を細かく制御できる。
約半年のトレンドという点では、音声通話への対応も挙げられる。携帯電話では当たり前の音声通話も、MVNOでは一般的ではなかった。どちらかと言えば、今でもデータ通信専用のSIMカードが主流だ。とはいえ、それだとメインで使う電話番号を移せず、IP電話だけでは緊急通話もできない。こうした状況を受け、もともと音声通話を提供していた日本通信やSo-netに加え、IIJとビッグローブが音声通話サービスを開始した。
KDDIの回線を使い、人気を集めるmineo
MVNOには大きく2つの種類がある。1つは、回線を貸し出すキャリアに自らの設備をつなぎ、料金もルールに基づいてMバイトps単位で決められている「接続」だ。もう1つが「卸」で、こちらの料金は貸し手と借り手の交渉によって決まり、貸し出すキャリアの端末もそのままの再販に近いケースも多々あった。こうした種類の違いは第1回の連載で解説したとおりだが、前者については、ほぼすべてのMVNOがドコモから回線を借りているという状況。これは、今も変わっていない。
一方で、初めてKDDIから回線を借りるMVNOも登場した。それが、関西に拠点を持つ電力系通信事業者のケイ・オプティコムだ。同社の「mineo」は、au回線を借りたサービスで、KDDIが800MHz帯で構築した広いLTEエリアを売りにしている。その上で、料金もデータ通信のみなら1Gバイト、980円(音声通話つきは1Gバイト、1590円)とドコモ系MVNOと大きな差はない。KDDIとの違いは、データ通信はLTEのみで、3Gは音声通話にしか使わないという点だ。
当初は月1Gバイトの料金プランだけで始まったmineoだが、8月には2Gバイトで1580円、3Gバイトで2330円という料金プランも追加された。音声通話つきの場合は、それぞれ2190円、2940円となる。データ量を使い切った場合は、100Mバイトあたり150円で追加することもできたが、最初から2Gバイト、3Gバイト使うことが分かっているときは、最初からその容量のプランを契約した方が安くつく。プランの幅が広がったことで、これまでデータ量が少ないという理由で敬遠していたユーザーにも対応でき、普及に弾みがつきそうだ。
料金 | データ量 | 8月5日の変更点 | |
---|---|---|---|
1ギガバイトプラン | 980円 | 1Gバイト | 変更なし |
2ギガバイトプラン | 1580円 | 2Gバイト | 新設 |
3ギガバイトプラン | 2330円 | 3Gバイト | 新設 |
mineoはSIMカード単体で契約することもできるが、それと同時に端末とのセットプランも用意している。現時点ではmineoブランドで販売される機種は2つで、1つが「DIGNO M」、もう1つが「AQUOS SERIE」となる。後者はキャリアアグリゲーションやWiMAX 2+に対応するなど、高いスペックが特徴だ。KDDIは第3世代の通信方式に、他社とは異なるCDMA2000 1xを採用している。そのため、ドコモ系のMVNOより端末は概して手に入りにくい。SIMフリーの端末も多くがドコモやソフトバンクの採用するW-CDMAである。そのため、mineoで端末も一緒に買えるのは安心感がある。
格安なSIMフリー端末とのセット販売も増加、割賦販売も
mineoと同様、端末をセットで提供するMVNOも徐々に増えている。やはり端末と回線を別々に買い、自分でセットアップして使うというのはハードルが少々高いからだ。MVNOのパイが狭く、こうした知識をしっかり持ったユーザーばかりだったころならいいが、最近では「格安SIM」「格安スマホ」というキーワードが広がり、以前よりもユーザー層に広がりが出てきている。MVNO各社も主婦や高齢者など、必ずしもITに詳しくないユーザーに対してアプローチをしている。回線と端末のセット販売が増えているのには、こうした背景がある。
提供形態は複数あるが、ケイ・オプティコムやビッグローブのように事業者が直接端末を販売するケースもあれば、家電量販店などの販売店が端末とSIMカードをセットにしているケースもある。MVNOのSIMカードとセットになっている場合は、割賦払いが可能なことも多く、1回にまとまった金額を支払う必要がないため気軽に買いやすい。ドコモ、KDDI、ソフトバンクのように、端末の購入に伴う通信費に対する割引は出ないが、同じように毎月の料金と一緒に端末代を払うことはできるというわけだ。
個々の端末については前回紹介したため割愛するが、LTEに対応していながら3万円前後という価格のミッドレンジモデルが徐々に増えている。こうした端末は24回払いだと1カ月1000円〜1500円程度になるため、毎月の負担感もそれほどなく購入でき、MVNOのSIMカードと一緒に買うスマートフォンのボリュームゾーンになるかもしれない。
端末のトレンドとしては、HuaweiやLGエレクトロニクスといった、いわゆる大手メーカーがSIMフリー市場に参入し始めたのもポイントといえるだろう。こうしたメーカーが、以前より値ごろ感のあるミッドレンジの端末を用意しており、ユーザーの選択肢は以前より確実に広がっている。
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