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最終章-1 ガンダムも参戦できる「ROBO-ONE」人とロボットの秘密(2/2 ページ)

» 2009年06月09日 16時19分 公開
[堀田純司,ITmedia]
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 出場するロボットは予選の日の午前中、まず予選参加資格審査を受けることになる。これはある一定時間自立するなど、そもそも「ロボットが機能しているかどうか」を審査するもので、ふるい落とすために行われるものではない。残念ながら調整に失敗したようで、締め切り直前までねばりにねばり、再審査を受けても通過できなかったロボと人もいた。その結果には審査を行う人も残念そうだった。

 主にアマチュアのロボットビルダーが集う「ROBO‐ONE」だが、参加ロボのレベルは異様に高い。しかも回を追うごとに、どんどん性能が上がっていくという。予選ではロボット単体によるデモンストレーションが行われるが、それには課題演技があり、筆者が観戦した大会では課題は「うさぎとび」だった。

「ROBO‐ONE」はサンライズのほかにも、玩具メーカーのバンダイ、タカラトミー、ホビーロボットの開発販売を行う近藤科学株式会社、ツクモロボット王国など多くの企業が協賛して開催されるが、参加する人たちだけでなく主催する人たちもロボットが大好きで、このイベントを通してロボット開発の地力が培われることを願う人たちである。なので課題も参加ロボットの「性能向上」の目標となるように高く設定され、大会ごとにどんどん難しくなっていく。「今回はちょっと難しかったかなあ」と感じるときもあるようだが、参加ロボットのレベルアップは目覚ましく、毎回予想以上の動きを見せるそうだ。

 実際、デモンストレーションで展開される演技はとても高度で、片足立ちなどはもちろんのこと、変形要素を取り入れた複雑な動きや、前転、転倒からの復帰など、アマチュアとは思えない精密さを見せ、会場の拍手を浴びていた。

 企業や大学の研究ではない「ROBO‐ONE」で大切にされるのは、娯楽性である。ただ勝つだけではおもしろくない。まず外見も重要で、参戦するロボットはトラッドな巨大ロボットアニメ風のものから、外国のSF映画に出てくるようなロボット、和人形らしい穏やかな外観を持ちながらも鋭い動きで相手を切って落とすロボットや、女性ビルダーによるかわいらしいぬいぐるみのような外見のロボットなど、見た目から楽しい。

 本選での試合は3本勝負。相手からダウンを取れば1本というルールで、トーナメントを戦っていく。ここでも大切なのは娯楽精神で、ただ相手を倒すだけではなく、ロケットパンチのような「必殺技」を搭載したロボットや、浴びせ蹴りや投げ技のような大技で観客を魅せるロボットが次々と登場する。

 お隣の韓国から参加する人も何人かいて、そのロボットは重厚な機体を持ち、強豪ぶりを発揮していた。そういえば韓国でもロボットは人気のようで、オリジナルのロボットアニメもつくられているが、参加者にはテレビ局が同行し取材を行っていた。「やっぱりみんなロボットが好きなんだ」と実感する。

 筆者が観戦した大会は、ゲームでいうと「ガード」の概念が現れはじめた時期で、攻撃を予期すると身を縮めて機体の安定度を増し、ダウンを回避する機能を持ったロボットが出現しはじめていた。だが、優勝を決めたのはこうしたロボットの性能、機能ではなく、操縦者の資質だった。

「ROBO‐ONE」本選に出場するロボットはみな動作の安定度も高く実力は伯仲している。だから勝負では性能以上に操縦者の能力が問われることになる。開発も大切なのだが、操縦の練習も大切なのである。

 優勝したのは親子の参加者だった。お父さんがロボットをつくり息子さんがそのロボットを操縦するという理想的なコンビネーションで、よく考えてみればこの「父がつくったロボットを子が操縦する」という設定は、『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)などロボットアニメのトラッドな設定のわけで、見ていて感慨も深い。

 実戦では、息子さんが優れた適性と習熟度を発揮。あたかも「ニュータイプか」と思うような俊敏な動きで、インファイトとアウトファイトの間合いを自在に操り、優勝を達成していた。やっぱり子どもはこういうのが上手だなあと思う。

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堀田純司

 ノンフィクションライター、編集者。1969年、大阪府大阪市生まれ。大阪桃山学院高校を中退後、上智大学文学部ドイツ文学科入学。在学中よりフリーとして働き始める。

 著書に日本のオタク文化に取材し、その深い掘り下げで注目を集めた「萌え萌えジャパン」(講談社)などがある。近刊は「自分でやってみた男」(同)。自分の好きな作品を自ら“やってみる”というネタ風の本書で“体験型”エンターテインメント紹介という独特の領域に踏み込む。


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