難波 けっこうSFから派生した部分って多いですよね。
野尻 多いんですよねー今頃になって。
難波 これを国民性っていうふうに政府筋が認識し始めたっていう事態が、結構SF的な事態だなっていう。
杜松 非常にSFですよ。というか、これをSFというならば、よっぽどうまく描かないと荒唐無稽って言われちゃうよっていうくらいの。
難波 ですよねえ。
野尻 ここまでやるかっていうのを先に政府がやっちゃう。経済産業省でよくミクが使われてるんですよねコラボとして。
杜松 ほんとそれこそSFにするにしても、そこまで風呂敷を広げるか、っていうことが本当に起こっていて。SFを書く、作る人はこれから大変だよなっていう気がします
難波 いや大変ですよ。
松尾 大変なお二人がここに。
杜松 書いてくださいよおおおお。
野尻 でも私ミクネタで星雲賞いただきましたんで。こないだの短編部門で。
杜松 ピアピア動画ですね。
野尻 「南極点のピアピア動画」っていうタイトルで。ピアピア動画はニコニコ動画のをもじったタイトルなんですけど、それでまあもらえたんで、じゃあ僕はもうこのままでいいんだとか思って。さぼってればいいんだみたいな。
難波 昔の火浦功さんみたいなことを。
杜松 こうやってキャラクターがすごく強いから、このキャラクターをアクターにしたお話なんかは2次創作でもたくさんあるんですよ。ユリイカなんかが特集したりしてやっぱりその「初音ミク」っていうキャラクターの物語はあったけれども、これを「テーマ」にした物語はなかなかないんですよ。
野尻 ミク現象自体をテーマにするっていうのは……。
杜松 書いてください野尻さん! それが読みたいんです!
野尻 難しい……。
杜松 じゃあ難波さん書いてください。
難波 いやいやいや(笑)。
野尻 そう、難波さんに書いていただきたい。
難波 いやいやいや(笑)。
杜松 VOCALOIDシーンはSFだけでもないし、オタクカルチャーだけでもないし、音楽だけでもないものなので、シーンというか好きな人のゆるい大きなコミュニティーの中には、音楽だけだった人、SFだけだった人、オタクカルチャーだけだった人、それぞれを少しずつ持ってる人、その全員が混ざってるんですよね。だからこのコミュニティーは発見のコミュニティーなんですよ。音楽だけだった人がオタクカルチャーの文脈を知るし、SFだけだった人は音楽のコミュニティーを知る。そういう人のつながりや交流があること自体が面白いです。そもそも野尻さんがプログレを理解しようとしている、っていうのが私すごい面白いことだと思いました。
野尻 難しいですよプログレ。
杜松 だから、野尻さんそれはSF好きを自認してるやつに、「SFってなに?」って聞くようなものですよと。多分聞いても無駄ですよって。
野尻 そうなんですよねえ、なんか聞くごとに違うんですよ、人ごとに、返事が。答え方が。でも、この「PartyTonight」のトップにあるインストの曲。これなんか僕なりにあープログレだなあって思ったんですけどね。
難波 なんか鐘の音みたいのをピアノでやったやつかな。
野尻 ああそうそう、「オーヴァーチュア」っていうやつですね。僕なりに聴いた中ではそんな感じ。
杜松 プログレを通過しないで、VOCALOIDからプログレに入った人は、すごく素直にプログレを聞くんですよ。で、そんな素直にプログレ聞く人なんて、プログレ者にはいないじゃないですか。
難波 (笑)
杜松 だから、新しいリスナーなんですよ。
難波 なるほどねー。
野尻 いやしかし今日は「あっという間にすぎた面白いひとときだったけど、なんだったんだろう、これは……?」みたいな感じでしたね。でも面白いです。音楽界もSF界も、実はいまが一番面白い時なのかも。シンセもSFもこの2010年までにかなりの蓄積があって、咀嚼も消化も進んでいたと思うんですが、それがまた大きく風向きが変わってきているのかもしれませんね。私も来年50歳になっちゃいますが、若い人たちに「君ら、いま黄金時代なんだから曇りのない目でまわりをよーく見て、なんでもやってみろよ」とか言いたくなりましたよ。
(終わり)
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