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Apple「W1」チップの真価とは? 「Beats Studio3 Wireless」の進化と深化(2/2 ページ)

» 2017年10月12日 21時13分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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適用範囲が広がったノイズキャンセリング

 ノイズキャンセリング機能自体も進化している。BeatsのANCは「適応型アクティブノイズキャンセリング」と呼ばれるもので、ハウジング上にあるマイクで外部ノイズを拾い、瞬時に逆位相の波形を作り出して打ち消す。この基本は変わっていないが、従来機が主に航空機での使用を想定した80〜300Hzという低い周波数帯のノイズを狙い撃ちしていたのに対し、新しい「Pure ANC」では、周囲のノイズに応じてANCを適用する周波数レンジを柔軟に変更するようになった。効果を発揮する場面が増えたという意味だ。

 Pure ANCの特徴の1つに「漏えい評価」と呼ばれる機能がある。ヘッドフォンの場合、使う人の耳の形状や髪形などでも音響特性が変化してしまうものだが、Pure ANCではハウジング内にあるフィードバック用のマイクが音楽以外の音が入っていないかを常時チェック。外部ノイズを検知するとノイズキャンセリングの強度を適切な値に設定し直す。

 「音質評価」という機能は、ハウジング内の再生音と音源の音声信号を常時比較し、異なる場合にはノイズキャンセリングの周波数帯をあえて狭くするなどして音質劣化を最小限に抑える仕組みだ。Beats Studio3 Wirelessの中では、こうしたオーディオキャリブレーションプロセスが毎秒5万回も繰り返されていて、環境が変化して約5秒が経過するとノイズキャンセリングやデジタルフィルターの設定を変更するという。

 実際に装着していると、音の変化がよく分かる。例えば地下鉄の駅に入ったとき。例えば扇風機を付けたとき。5秒ほど経過すると周囲のノイズが徐々に減り、音楽が良く聞こえるようになる。普段から効果を実感できるのは面白い。

 Beats by Dr.Dreは、2006年にDr.DreとJimmy Iovine氏が立ち上げたオーディオブランドで、2014年7月にApple傘下となった。現在は一部開発リソースを共有するなど、ほぼ1つの会社として機能しており、W1チップの実装にあたっても、例えば同じ技術者がAppleとBeatsの製品を両方チェックするなど共同作業に近い形で作業を進めてきた。1年という“熟成期間”を経たBeats Studio3 Wirelessは、BeatsとApple、双方が満を持して送り出す自信作といえそうだ。

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