プロ写真家が“EPSONプリンタ”を選ぶ理由(2/3 ページ)

» 2004年03月24日 14時52分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 自らの作品をリトグラフのように通し番号を入れ、ファインアートとして販売しているテネソン氏。そのレタッチや出力を担当しているスタッフは興味深い話をしてくれた。

 「写真データを直接印刷したからといって、理想的な絵作りになるわけではない。これは銀塩でも同じことで、“そのまま”の状態は出発点であって、望んだ出力するためにノウハウを蓄積すること。ノウハウを活かしやすいこと。これらを達成するために、もっとも扱いやすかったのがエプソンだった。現在、幸運にもエプソンのサポートは受けているが、それ以前から大量のエプソン製顔料インクジェットプリンタを使ってきた」

photo テネソン氏は作品をファインアートとして販売。出力担当アシスタントは、絵作りをコントロールできるプリンタがベストと話す

“絵作り”は誰が成すべきか

 写真家全員のコメントを紹介する必要もないほど明らかなことがある。プロ写真家が好む、作品を出力するためのインクジェットプリンタには、余分な“絵作り”は邪魔な存在ということだ。可能な限り素直で、思い通りの出力へと追い込みやすい方がいい。

 たとえばダブラー氏がアドバイスしたというPM-4000PX。このプリンタは現在の基準からすると、ドットサイズも、速度も劣る製品だが、いまだに評価は落ちていない。筆者自身も最新プリンタを所有しながら、この製品を手放すことができない。理由はやはり、写真家たちが語ったものと同じだ。

 もっとも、単にデジタルカメラの画像を出力しただけならば、最新のコンシューマ向けA4インクジェットプリンタの方がきれいに見える事が多いだろう。“写真のような仕上がり”という点でも、PM-4000PXは理想的なプリンタではない。

 このあたりはエプソンも心得ているのか、PM-G800以下の染料インクを用いた写真画質プリンタはもちろん、顔料系のPX-G900もPM-4000PXなどプロ向け製品とは全く異なる味付けになっている(だからというわけではないが、個人的にはG900はベターな製品だがベストだとは思わない。よりコンシューマよりならG800、よりプロフェッショナル指向ならPM-4000PXの方が満足できる)

photo 大判からA3ノビまでインクジェットプリンタが並び、作品のテストプリントを繰り返しているジェイ・メイゼル氏のオフィス
photo ジェイ・メイゼル氏

 エプソンに限らず、コンシューマ向けに写真出力のためのインクジェットプリンタを売ろうと思うなら、そのままデジタルカメラのデータを流し込むだけで見栄えのいい写真になって出力されなければならない。一般ユーザーにとって重要なことは、撮影した写真が何もしなくてもきれいに出てくることだからだ。

 たとえばフィルムカメラの場合、ネガという素材を渡せばDPEショップが(実際にはDPEプリント装置のソフトウェアとそのオペレータが)程良い見栄えの写真として出力してくれる。ユーザーにとって、そのプリントこそが唯一の結果である。どこにも“絵作り”を意識するフェーズは存在しない。

 自分で絵作りをしようと思うと、現像所や暗室とオフィスの間を行き来しながら、理想の絵を求めて格闘をしなければならない。テネソン氏は最初の写真集を発刊する時、この作業のために1冊分の写真を仕上げるのに7年の歳月を擁したそうだ。デジタル化したことでそれが1年になったというのだから、急速にプロの間でデジタルデータを用いてインクジェットプリンタ出力を自ら(もしくは自ら擁するスタッフ)行うワークフローが定着した理由もよくわかる。

 では、デジタル写真を出力する課程で、“絵作り”は誰が行っているのだろうか?出力時に自分で行うか、それを放棄するか。要素はそれだけではない。

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