プロ写真家が“EPSONプリンタ”を選ぶ理由(3/3 ページ)

» 2004年03月24日 14時52分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 これがプロ写真家ならば、RAWデータで記録し、現像処理時に好みの色調やトーンカーブ、露出などを調整。ある程度の撮影者の意志を込めたイメージとして取り出し、軽く修正を加えたあとカラーマッチング技術を用いてプリンタに対して“意図した絵”を印刷させることが可能だ。

 ところが一般的なJPEG記録では、その時点で(画面上での見栄えを優先した)カメラベンダーが絵作りした画像が記録される。そのまま、見栄えのする絵作りを目指したプリンタにデータを入れると、さてどんな“絵作り”になるのか?本当に両方が勝手に絵作りをしている状態がいいのだろうか?と疑問に感じることも多い。

 実際には一般に売れ筋のプリンタで出力されることをカメラ開発者は意識しているし、プリンタ開発者は一般に売れ筋のカメラがはき出すJPEGを意識して開発している。だから大きな破綻はないが、最終的な結果を双方が想定できない状況下で、各々が自由に絵作りをしているのが現状である。

 唯一の例外はエプソンの提唱するPIMを用いる場合。PIMが理想的に機能すれば、プリンタからはカメラ開発者の意図した写真が出力される(ことになっている)。ただ、実際にはPIM対応データをPIM対応プリンタで印刷すると、異なる“絵”になることもある。ICCプロファイルを用いたカラーマッチングと同じく、PIMもまた現状では目安にしかなっていないというのが正直な感想だ。

銀塩とデジタル、その違いの一例

 さて、そんな矛盾も銀塩の世界では、まったく問題視されなかった。そもそも、フィルムと印画紙のメーカーによって、色やトーンカーブは異なるものだし、DPEプリント装置が違えば自動補正の結果も違う。元々、“正しい色”などコンシューマ向け写真には存在しないのだ。結果さえ良ければそれで良い。従って、コンシューマ向けプリンタは「積極的な絵作りさえ意識していればいい」ということになるのか?というと、僕は違うと思う。

 銀塩の世界、昔写真に凝ったとか、写真部に在籍していた人の中には、自分でモノクロ写真を焼いていた人も少なくない。それがカラーになって、自ら暗室に入る人がいなくなったのは、カラー現像処理が“アマチュアのお遊び”の領域を越えた厄介な作業だったからだというのも、その一因だったと思う。薬品を取り扱い、暗室を要求するなど、もともと敷居の高いマニアックな世界だったことを考えれば、銀塩写真=DPEの現状は当たり前とも言える。

 しかしデジタル技術は、その敷居を大きく下げてくれる。RAW現像ツールの高速化、高機能化、操作性改善は、“ネガから思い通りのプリントを取り出す行為”を大幅に単純化した。その上、世に溢れるフォトレタッチツールは熟成が進んでいる。“自分で絵作り”するための敷居が劇的に低い。

 コンシューマ向けインクジェットプリンタを開発するベンダーは、この点を強く意識すべきだと思う。PM-A850などデジタル写真指向の複合機が人気を集めるなど、コンシューマフォトプリントユーザーの裾野は広がってるが、そうした層とプロ写真家の中間に存在するハイアマチュア市場は、銀塩よりもずっと大きく、しかもインターネットコミュニティの中で“大きな声”になると思うからである。

 プロフェッショナルとコンシューマの二極集中ではなく、アマチュア写真家がステップアップする場所がいくつか形成されるだろう。銀塩とデジタル、その違いの一例として、そうした考えを個人的に持っている。

たとえ自分のためだけのものであっても

 ちょっとした日常のスナップ写真まで、絵作りを自分で行う必要があるとはもちろん思っていない。コンシューマフォトプリンタの基本線は、DPEの置き換え路線だろう。ただ、その路線と“コントローラブル”なプリンタとの両立は、決して不可能ではない。

 前出のダブラー氏はいう。「広告写真や雑誌から依頼された写真は、依頼主が気に入ったものがベストだ。自分の好みは関係ない。しかし、アートとして表現すべき場合、たとえば作品として直接販売したり、写真展で掲示するといった場合は話が違う。それらは、自分の写真家としての価値を表現するものだ。だから納得いく絵作りに仕上げたい」

 これはダブラー氏が、プロ写真家というアーティストだからなのか?

 いや、たとえ自分だけのための、自己満足の写真であったとしても、写真が好きで自らの作品を印刷物として具現化したいと望むなら、それは立派な自分のためのアート作品ではないだろうか?そうしたアマチュアのサポートは、デジタルイメージングを文化として育てていく上で重要なことだろう。

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