コラム
» 2004年03月24日 18時43分 公開

XIIIの秘密〜プログラマブルシェーダを使わなくてもできる効果的な表現(中編) (2/2)

[トライゼット西川善司,ITmedia]
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XIIIのセルシェーディング手法は「重いけど軽い?」

 XIIIのセルシェーディングは互換性が高く、特殊処理系の大部分をCPUで処理できるのでGPU性能に依存しない。だからこそプログラマブルシェーダを持たない旧式GPUでもXIIIが動作できてしまうのだ。

 だが、これが逆に欠点と言うこともできる。 例えば、ジオメトリが膨大なシーンにおいて、XIIIの手法ではGPUによるアクセラレーションができないために、処理が重くなってきてしまうはずなのだ。具体的に言えば、陰影処理では陰影の付き方に応じてポリゴンが増加し、輪郭描画においては、取り扱うポリゴン数が常に2倍になってしまう。

 ところが、こうした問題点に対する対処も、XIIIではかなり大胆な発想で行っている。

 まず、XIIIではセルシェーディングの対象とする3Dオブジェクトを「動くキャラクター」に限定してしまっている。具体的にいうと、XIIIでは敵キャラにはセルシェーディングを施すが、背景や小道具、大道具オブジェクトにはセルシェーディングを適用していない。

 そして、セルシェーディングが適用される3Dキャラクターの構成ポリゴン数は、わずか1000ポリゴン前後と、少なめに抑えられている。これなら、輪郭描画処理を配慮しても2000ポリゴン前後ということになる。あの「トゥームレイダー-美しき逃亡者」のララ・クロフトが約5000ポリゴンというから、XIIIの少なさがいかほどか実感できるだろう。

 こうした工夫によって、GPUにかかる処理負荷はそれほどでもなく、最近の3Dゲームにしては「異様なまでに」軽く仕上がっているのだ。

 セルシェーディングされたキャラクターと、普通に陰影処理された背景グラフィックスとの質感の違いは、やはりプレーヤーに分かってしまう。しかし、それが逆にFPSというゲームシステムの中で「敵を狙いやすい、見つけやすい」ことにつながるため、プレーヤーに有利に働いている。

 その技術背景から考えると、狙ってこのようなシステムにしたとは思えないが、とにかく、こうしたビジュアル処理の不均一さがゲームプレイにおいてマイナスイメージになっていないのはお見事……というか、ラッキーだったといえよう。

XIIIの背景はセルシェーディングで描かれていない。そういえばテレビアニメや漫画でも、「キャラクタは簡略化されたタッチだが、背景は写実タッチ」といったものが少なくない。ある意味、この種の表現手法に則ったともいえなくはない

技術上の弱点を補うために。漫画らしく見せるために

 さて、先ほど解説した輪郭線描画の負荷以外に、実はかなり重大な問題をXIIIでは抱えている。それは、この方法では描画されない輪郭線が多々あるということだ。

 例えば、サイコロや段ボール箱のような立方体を3面が見える俯瞰視点で見てみよう。本来ならば、3面を区切る内側の3本の線分にも輪郭線が現れないと「それっぽく」ない。しかし、XIIIの手法でこの立方体を描画すると、最外殻にしか輪郭線が現れないのだ。

 もちろん、こうした弱点を克服している他手法も存在するのだが、互換性を重視したXIIIでは、ここでも大胆な対策で弱点を目立たなくしている。

 それは、3Dモデルに貼り付ける画像テクスチャに対し、あらかじめ、それっぽい輪郭線を描き込んでおくといった、えらく単純な解決策だったりする。

 下の図は、XIIIに登場する、あるキャラクターのテクスチャを示したものだ。服のシワ、顔の凹凸、指の切れ目など、面の陰影や輪郭線などが細かく描き込まれている。これらの表現はリアルタイム3D処理された陰影ではないので、物理的な光学現象としては間違いだらけなのだが、最終的な映像を見る限りは、それほど大きな不自然さを感じさせない。

 なお冒頭で触れたように、XIIIIはアニメではなく漫画らしいビジュアルを目指している。そこで、このテクスチャのデザインに当たっては、あえて紙に印刷したような色ばかりを選定し、色数の使用も限定的にしている。

 モレト氏によれば「キャラクターによっては最近のゲームではあり得ない、たった16色しか使っていないものもある」とのことだ。

(次回は、プログラマブルシェーダを使わない特殊描画処理について解説する予定だ)

XIIIのセルシェーディングの輪郭描画にはこのような弱点がある
XIIIのセルシェーディングは原理的に多くの表現上の弱点を孕んでいる。テクスチャのデザインでは、この技術的弱点を補うことを配慮している。かなり多くの陰影や輪郭線があらかじめ描き込まれていることが見て取れる。
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