手のひらにレーザー光線を(2/2 ページ)

» 2004年09月02日 21時50分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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より軽く、持ちやすく、動きもよし

 さて現物のMX-1000だが、筆者自身が所有している「MX-700」と比較して、あらゆる部分が改善されている。正直に言えば、従来のMXエンジンでも十分な性能を発揮しているというのに、本当にMX-Laserセンサーが必要なのか? と疑問を感じつつ試用してみたが、MX-700に感じていた不満がことごとく解決されている。

 MX-700は消費電力がやや大きめで、2本の単三ニッケル水素電池を用いる仕様になっていた。しかしMX-1000はリチウムポリマー電池に変更。171グラムに軽量化されたほか、満充電時には約21日間利用可能となっている。使おうと思った時に電池がなくなっている場合でも、10分間の急速充電で1日中使えるという(底面に電源スイッチもあるため長期間使わない場合はオフにして節電も可能)。

MX-1000の底面。センサー周りには「MX Laser 20x」とプリントされている

 バッテリー持続時間はともかく、軽量になった点は大きい。またリチウムポリマー電池を採用することでバッテリー位置の自由度が高まり、重量の前後バランスが大きく改善されている点も見逃せない。僕はマウスを持ち上げて移動させる操作をよく行うクセがあるのだが、重量バランスがよいこともあって重さがほとんど気にならなくなった。軽すぎるマウスも使いにくいものだが、僕には“ちょうどいい感じ”に収まっている。

 また、マイクロソフトの初代「Wireless Mouse Explorer」によく似たフォルムになったMX-1000だが、従来機よりも背が高く、手のひら全体をサポートするデザインとなっている。ボタン類の配置も変更され、[進む][戻る]ボタンとクルーズボタン(ホイール前後にあるロジクール独自のボタン。ページアップ/ダウンがデフォルトで割り当てられている)はいずれもシーソー式でサイズも大きく、特にクルーズボタンの操作性が改善されている。アプリケーションボタンも親指部分に移動した。

ホイール前後にあるクルーズボタン
アプリケーションボタンは親指部分に

 さらにマイクロソフトが最初に導入した横スクロール用のチルトホイールも、新機種では採用(ロジクール製品では既に「Click!シリーズ」に対応機種が追加されていた)。ホイール回転は従来と同じクリック感のあるもので、横方向のチルト、すべてのボタン類など、あらゆる接点はカッチリしたフィーリングのマイクロスイッチが使われている。

 マイクロソフトの場合、チルトするまではよかったものの、機構部のスペースに問題があったのか、マイクロスイッチではなく、より小型のタクティールスイッチが使われており、やや鈍いクリック感が残念だったがMX-1000ではそのような心配は無用のようだ。

 肝心の動きだが、LEDを使ったセンサーでも読み取れる素材上で使う場合でも、体感しない程度にスリップ(読み取りイメージ比較時の誤認など)しているのか、並べて使ってみなくても、腕の動きに対する追従性、ダイレクト感が異なることはわかる。前述したようにMX-1000とMX-700の無線区間は同じ技術を使っているので、この違いは純粋にセンサー部の違いだろう。

さて、次はあるのだろうか?

 ロジクールのMXエンジンや、それよりもやや劣るものの十分な品質を持つ現行のマイクロソフトマウス用光学センサーを使った時、“あぁ、これでもう十分じゃないか”と思ったものだ。いや、それよりも以前、光学センサーが毎秒1500スキャンから3000スキャンに向上した頃にも同じようなことを思った事がある。

 しかし、実際にMX-1000を使ってみると、非常によくできた機械式マウスのような動き出しのダイレクト感を違いとして感じる。あまりにダイレクト過ぎて、使い始めはやや困惑するほどだが、これに慣れてくるとMX-700を用いたときの動きがもたついて感じる。人間の感覚とは、なんと微妙なものだろう。結局、センサーのフィーリングは今後も高級なマウスの商品性を高める上で、重要な要素として存在し続けそうだ。

 ちなみにMX-1000の動きに対する分解能は800dpiで、これはしばらく前から変化していない。ディスプレイが高解像化しているとはいえ、せいぜいWUXGA(1920×1200ドット)程度。マルチディスプレイにしても知れたものだ。当面、800dpiで十分な精度かもしれない。

 しかしLonghorn(WinFSが先送りになったことで、2006年の登場が現実味を帯びてきた)では、OSの側から高精細ディスプレイへの対応を行うため、DOSからWindowsに変わって高解像化が進んだように、ディスプレイの超高精細化が一気に進む可能性がある。そうなってくると、800dpiよりも高い精度がマウスに要求されるようになるだろう。それまでの間、MX-1000のセンサーに不満は感じそうにない。

 MX-1000の価格はロジクールのダイレクト販売サイトで9980円。これはMX-700の発売直後と同じ設定だ。マイクロソフトもフラッグシップモデルは似たような値付けを行っている。今後も高級マウスは、1万円を切る価格帯で性能の向上を続けるだろう。

 “マウスにそんなにお金をかけなくても”という声が聞こえてきそうだが、一度使い始めると止められない。素晴らしく気持ちのよいキーボードと同じように、少々、麻薬的な魅力がMX-1000にある、というと言い過ぎだろうか?

 もっとも全く不満がないかと言えば、なきにしもあらず。LEDとは異なり、可視光線外の光で動作するMX-1000は、光っているところを見ることは出来ない。このことを、少し残念に思うのは僕だけじゃないだろう。“手のひらにレーザー光線を”ってな感じで、マウスを持ち上げてみても、同僚にビームを浴びせることは不可能だ。

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