電源を入れると約3秒で液晶モニタが点き、撮影スタンバイとなる。AFはマルチタイプであり、背面の「SET」ボタンを押し、十字ボタンの操作でAFフレームを画面内の好きな位置に動かせる。またSETボタンの長押しで、AFフレームを画面中央に戻せる。
従来モデルの弱点だったAFスピードは改善され、一眼レフ機には及ばないとはいえ、ズームのワイド側でもテレ側でも、このクラスとしては比較的スムーズに合焦する。AF作動中に液晶表示がわずかに止まるのが惜しいが、AFモードを通常の「SINGLE」から常時作動の「CONT」に切り替えると表示のフリーズは目立たなくなる。動きのある被写体にはCONTモードを利用するといいだろう。
そのほかの操作面では、十字ボタンの上で露出補正、十字ボタンの下でホワイトバランスのそれぞれの設定画面を素早く呼び出せること、「C1」と「C2」の2つのカスタムモードに自分の好きな設定の組み合わせを登録できること、再生モード時に画像を部分拡大したままコマ送りができることなどが使いやすく感じた。
ただし、操作ボタンの数が多く、それぞれが分散して配置されているので、どこにどの機能があるのか慣れるまでは戸惑うことも多かった。また、ボタンに割り振られた機能についてはダイレクトにアクセスできるが、メニューの階層内にある機能についてはアクセス性がいいとはいえない。カスタムモードだけでなく、ボタンやメニューをカスタマイズする機能が欲しいところだ。
撮影モードは、オート、プログラムAE、絞り優先AE、シャッター優先AE、マニュアル露出、シーンモードなど計12モードがあり、背面のダイヤル操作で選択できる。絞りとシャッター速度は、グリップ部の電子ダイヤルでそれぞれ1/3ステップで調整可能だ。またマニュアル露出モード時は、ダイヤル自体を下に押し込むことで、ダイヤルの操作の働きが絞りとシャッター速度の間で切り替わる。
ユニークな機能としては、従来から受け継がれたNDフィルター機能があり、これをオンにすると明るさを約3段分抑えられる。晴天時に開放F値を使いたい場合や、長時間露光の秒数を長く設定したい場合に役立つ機能だ。また、同社の最近の上位機に共通して採用されているセーフティシフト機能も便利だ。この機能をオンにしておくと、絞り優先AEやシャッター優先AEモード時に、自分で設定した絞りやシャッター速度では露出オーバーやアンダーになる場合に、値を自動的にずらしてくれる。
そのほかには、最短5センチのマクロ、AF補助光、秒間2コマの連写、マニュアルフォーカス、ヒストグラム表示、発色のカスタマイズ、2つまで登録できるマニュアルホワイトバランス、インターバル撮影、付属のリモコン撮影、RAWモードなどの機能がある。またオプションとして、ワイコンやテレコン、クローズアップレンズなどが用意され、外部ストロボやマクロリングライトにも対応する。これら贅沢な機能と拡張性に不満はない。
画質は、同社自慢の処理エンジン「DIGIC」に共通した発色のクリアさとホワイトバランスの安定感を備えている。こってりとした色合いと適度に強調されたシャープネスは、そのままプリントする用途に適している。しかも、最大の記録画素数は3072×2304ピクセルと、A3サイズに印刷しても十分な精細感がある。
バッテリー、メディア、外部ストロボは、同社のデジタル一眼レフ機「EOS Kiss Digital」や「EOS 10D/20D」と共用できるので、それらのサブ機として利用するのもいいだろう。また、明るいレンズや可動式モニタの利点を生かし、デジタル一眼レフ機とは違った撮影をめざすのもいい。
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