「DSC-V3」(以下、V3)が出た。それもV2を飛ばしての登場である。さらに2003年秋に出た「DSC-V1」(以下、V1)とは色も大きさも形状もテイストも一新してのフルモデルチェンジだ。それがソニーのV3である。
シルバーでコンパクトで四角くてギュッという感じだったV1に比べて、V3は黒くて少し大ぶりで曲面を多用して凹凸がはっきりしていてグリップも深い。テイストとしては、2003年末に登場した広角系8倍ズームのハイエンド機「DSC-F828」(以下、F828)のボディ部分を設計し直して少しコンパクトにし、4倍ズームレンズを付けた感じだ。
ちなみに、V1のデザインテイストを受け継いだ製品として「DSC-W1」が登場しているので、V3がF828の甥のようなハイエンドっぽいデザインになったのもラインナップ全体のバランスを考えると悪くないだろう。特にグリップが深くなり、そこにシャッターボタンが斜めについていることで、シャッターを押しやすくぶれにくくなった。これは大事なことだ。
V3を一言でいうなら、マニュアル系ハイエンドコンパクト。レンズは34-136ミリ相当の扱いやすいレンジの4倍ズームで、明るさはF2.8-4.0。ワイド端でF2.8は普通だが、テレ端を4.0におさえてくれたのはうれしい。合焦範囲も標準では50センチからだが、マクロモードにするとワイド端で10センチからテレ端で40センチから合う。マクロ時も無限遠まで対応してくれるので、常時マクロモードにしてもあまり問題はない。
さらにオプションで0.7×のワイドコンバージョンレンズ(24ミリ相当になる)、1.7×のテレコンバージョンレンズ(231ミリ相当になる)、33センチまで寄れるクローズアップレンズも用意されている。
CCDは1/1.8インチの720万画素。2004年から登場し始めた多画素なCCDで、一足早く登場した「DSC-P150」と同じタイプ。写りもDSC-P150と似ており、画面上でピクセル等倍でチェックするとディテールのざらつきは見られるが、このクラスのデジカメとしては悪くない。
色はソニーらしい鮮やかだけどやや爽やか系で記憶色誇張があまりないもの。輝度ノイズを減らす「クリアルミナンスNR」や色ノイズを減らす「クリアカラーNR」処理が効いているのだろう。ISO感度は100が最低だが、他社のハイエンド機同様、50や60といった低感度をフォローしてさらにノイズが少ない絵を提供してくれてもよかった気はする。
そのISO感度も800まで増感できるので(もちろんノイズは増えるが)暗いところでも何とか撮影できるのはうれしいことだ。ソニーのハイエンド機に欠かせない、暗所でのピント合わせを助けるホログラフィックAFや、赤外線カットフィルタをオフにして赤外線撮影を行うナイトショット機能も装備し、暗所でも強いデジカメとなっている。
起動は実測で約3秒と最近のモデルとしてはあまり速くないのが残念だ。それ以外は全般に高速でキビキビ動作して気持ちよく使える。
気になるAFも高速で、機能的にも充実。液晶モニタ左上に「FOCUS」と「FRAME」の2つのボタンが独立してついており、FOCUSボタンを押すとAFとマニュアルフォーカスが切り替わり、FRAMEボタンではAFフレームを中央重点、5カ所のマルチポイントAF、さらに構図上の任意の位置にAFフレームを設置できるフレキシブルスポットAFを切り替えることができる。特にAFフレームを即座に変更できるのは便利だ。
マニュアルフォーカス時はフォーカスプリセット値を利用した撮影になる。0.1mから∞まで14段階のプリセット値があり、距離を合わせて撮影するというCyber-shotならではの方式だ。微調整はできないが、液晶モニタで本格的なマニュアルフォーカスは難しい(細かいピントの山を見つけづらい)こともあり、現実的には悪くない解といっていいだろう。
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