ATOK 2005は、同じ読みの動詞を変換し分ける「文脈処理機能」の搭載がまず1つめのポイントとなる。これは、変換する動詞の前行、前段に入力された語句内容を判別し、複数存在する同読みの動詞を適切に変換できる機能だ。
例えば、「きる」という動詞を含む文章を入力する2つの文章があるとする。
例1 | 例2 | |
前行の内容 | 料理教室で初めて包丁を使いました。 | 結婚式で初めて和服を着ました。 |
次行の内容 | きれいに切るのは難しいですよね。 | きれいに着るのは難しいですよね。 |
例1では「料理教室」と「包丁」から“切る”を、例2では「結婚式」と「和服」から“着る”を判別し、変換第1候補として表示される。
文章を考えながら入力していくとき、誤変換で作業性そして思考を妨げられることが多々あるが、この機能により自己文字校正を行う思考を働かさなくて済む。これは、いままであった不便なことがなくなるだけなので、目に見えてすごい、とはもしかしたら感じないかもしれない。でもそれを感じさせないことが当たり前なのであり、実は従来のIMEより進化したすごい点なのである。
また、とくに間違えやすい「尊敬語」と「謙譲語」の混同を判別し、その指摘と訂正候補の表示そして解説を表示してくれる。
解説はキー操作で表示され、指摘された正しい候補をそのまま採用するなら、リターンキーで確定させるだけ。頭語や結語などの慣用語は省略する傾向にあり、そのためか内容そのものもくだけた表現になりやすい電子メール文書に慣れたユーザーは尊敬語と謙譲語も混同しやすいことだろう。
公用文書はもちろん、営業相手へのビジネス文書などの場合はとくに、誤った表現は相手を不快にさせる恐れがあり、ビジネス上においてはことさら重要だ。この部分からも、海外発のOSに標準装備されるIMEとは異なる、正しい日本語表記を初期のバージョンから標榜していた同社のこだわりが感られる。
もう1つのポイントは、入力ミスしたときの「訂正学習機能」である。これは、ユーザーの入力癖を学習し、同じタイプミスをした時には「正しくはこうでないですか?」と表示してくれるものだ。
タイプミスしたときには、「BackSpace」キーなどで消去・修正し、新たに正しい入力を行うわけだが、訂正学習機能によりその一連の動作・作業を学習し、次回に同じミスがなされた時には、その正しいと予測される変換候補も表示される。ひらがな入力で「ゃゅょ」などがShiftキーの操作誤りで大文字の「やゆよ」になった場合にもこの機能が働き、再入力の必要がなくなる。ここでも思考を妨げない工夫が享受できる。
最後に「ジャンプ機能」や「町名住所変換辞書」も便利なポイントだ。ジャンプ機能は、例えば、語句の意味を調べたい時、変換候補の表示と同時に意味や用例を表示するといったように辞書的に使える機能になっている。説明文中にある用例や類語のリンクをクリックすれば、類似する単語や用例などを参照することも可能となっている。
町名住所変換辞書は、町名(町域名)から県や市、郵便番号を補完した表記へ変換することができ、宛名記入を行うビジネス業務時はもちろん、例えばネット通販や懸賞サイト利用時などにも便利。もちろん市町村合併や区域変更などを指摘・訂正する「名称変更アシスト」データの更新などで入力サポートの強化も図られている。
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