ITmediaの読者ならば、ペーパーメディアの“メリット”と“デメリット”を熟知しているだろう。
紙は「誰でも読める」という汎用性を持ち、閲覧に特別な機器が必要ない扱いやすさを併せ持つ。さらに数枚程度ならば持ち歩くのも苦にならない。
一方で、紙は1枚当たりの情報量が限られるので、量が増えれば保管スペースが必要になる。整理に手間がかかり、きちんと管理しなければ検索性が悪い。紛失・消失に備えたバックアップ(コピー)は面倒で、さらなる保管スペースが必要になる。
また、セキュリティという観点では、書類を鍵付き書庫や金庫にしまうといった物理的手段しかない。人をとりまく情報量が増える中で、紙というメディアのデメリットや限界が目立つようになったのは事実だ。
デジタル世界に目を向けると、紙と同等か、それ以上の可能性を持つメディアフォーマットが存在する。Adobe Systemsの「PDF(Portable Document Format)」である。
1993年、John Warnockによって発表されたPDFは、Windows、Macintosh、UNIXなど様々なプロラットフォームに対応する汎用性と、紙に近いイメージ的な表現特性、デジタルならではの検索性や拡張性、セキュリティを兼ね備え、この10年でデジタル文書のデファクトスタンダードになった。最近では携帯電話のPDF対応も始まり、デジタル格差の問題も急速に解消されつつある。
しかし、世の中の大半の情報が、今も紙として流通している。遠い未来はともかく、現在そして近未来においては、紙からPDFへの「橋渡し役」が必要だ。
前置きが長くなってしまったが、今回、紹介するPFUのScanSnap「fi-5110EOX3」は、この紙からPDFへのデジタル化を行う小型両面カラードキュメントスキャナとして、人気・実績ともに高いシリーズの最新モデルだ。
ScanSnapは一般的なスキャナと異なり、紙文書のPDF化を目的とした専用機であり、それゆえに使いやすさ・機能が熟成されている。
コンパクトな本体にあるのはスキャン用のボタンのみ。書類のPDF化については、「ワンプッシュ」ときわめて簡単・明快な操作で実現している。一方で、アドビ システムズの「Adobe Acrobat 7.0 Standard日本語版」が標準添付され、「ScanSnap Organizer」をはじめとする専用ソフトウェア群によって、PDF化された文書の編集・整理・検索を容易にしている。
基本ソフトウェア群の紹介は先々代・先代のレビュー記事に譲るが、紙とPDFの垣根を取り払うというScanSnapシリーズのコンセプト(シンプル・スピーディー・コンパクト)と完成度は、まさに熟成の極みに達していると断言できる。
まず結論から言えば、fi-5110EOX3のハードウェア仕様は、先代から大きく変わっていない。毎分15枚、最大50枚/1回で読み取れる高速スキャン、カラー両面読み取りというハードウェア性能は、オフィスユースでも十分なスペックだ。一般的なA4サイズの読み取りはもちろん、名刺のスキャン、付属のA3キャリアシートの利用で、A3サイズまでの原稿の読み取りにも対応する。
ソフトウェア側も、基本的な機能は先代と同じだが、ScanSnap OrganizerはV2.0になり、PDFファイルをダイレクトにOCR認識する機能が搭載された。読み取り時の自動認識も可能であり、これをONにしておくと、PDF内部の文字列を使った検索ができる。
しかし、OCR認識の宿命で、100%の認識率というわけではない。参考用のインデックス付けと考え、階層管理する「キャビネット」機能できちんと整理整頓しておいた方が検索性はよい。
では、最新モデルで何が変わったのか。
それが今年4月1日に施行された「e-文書法」への対応である。
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