インタビュー
» 2006年03月31日 10時00分 公開

「脱いでも脱がなくてもスゴイんです!」――ThinkPad X60シリーズの開発チームが語るインタビュー(2/2 ページ)

[田中宏昌,ITmedia]
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ITmedia X60sには約1.16キロの最軽量モデルが用意されていますが、このようなアプローチはThinkPadでは珍しいですね。

――これまでのX40シリーズは約1.2キロ台を維持していたため、新しいモデルではそれよりも軽いという印象を持っていただきたかったのです。他社の軽量PCには1キロを切ったモデルもありますが、ThinkPadでもやればここまでできるのだということをX60sで示したかったのです。

 軽量化ゆえHDDは1.8インチで、メモリが256Mバイト、無線LANユニットも省いていますが、こちらの想像した以上に「とにかく軽いThinkPadがほしい」というユーザーが多いことに驚きました。実際、持ったときに1.16キロと1.2キロの違いがわかるのかと思うのですが、カタログ値にこだわる方が思いのほか多く、とにかく軽いのが欲しいという方が多かったのです。製品発表後に1.8インチHDDのバリエーションを増やして欲しい(現状では1.8インチHDDは30Gバイトのみ)というご要望をいただきましたので、今まさに検討しているところです(プロダクトマネージャ:木村香織氏)。

Hoverデザインの採用で強度をさらにアップ

ITmedia もっと軽いThinkPadはできるのでしょうか?

――メカの設計担当としては、単に軽くするだけなら簡単にできますが、それで失うものもあります。今回はThinkPadの品質を維持しながら、ThinkPadなりの限界にチャレンジしました。こだわったのはボディの厚さで、ThinkPadを手に持った感覚を維持したかったので、手前側(パームーレスト側)をX32と同じにしてあります(開発マネージャ:山崎哲氏)。

――CPUに超低電圧版を使えば、冷却機構を簡略化して重量をさらに軽くできますが、低電圧版のCPUでパフォーマンスを維持しながら、どれだけ軽くできるのかが今回の挑戦でした。重量に比べ、ボディの厚さは日本ではそれほど重要視されませんが、米国やヨーロッパでは要求が厳しく、これまでよりも厚くすることは許されません(開発企画:平野幸彦氏)。

――性能面だけでなく機能についても同様です。例えば、暗いところでキーボードを照らすThink Lightを省いて1グラム軽くするよりも、使い勝手を優先してThinkPadらしい使い勝手のよさを維持したほうがよいと判断したわけです。このあたりは内部でもいろいろと議論を重ねました(プロダクトマネージャ:木村香織氏)。

ITmedia X60で新しく導入されたHoverデザインのポイントを教えてください。

――外部からの衝撃を直接マザーボードに伝えないのがポイントです。マザーボードで一番弱いのは、CPUやチップセットといった基板上に実装されたチップです。ここに外圧がかかると、チップのハンダが基板からはがれてしまうからです(開発企画:平野幸彦氏)。

――ネジで固定したのは静的にも力がかかりやすくなります。ThinkPadを手で持ったりカバン入れたときにもショックが伝わりやすく、たとえ0.1ミリのゆがみでもかなりの衝撃になるのです。それらを解消するためにどうするか悩んだのですが、ThinkPad T60やZ60のThinkPad RoollCageのような骨格はスペース的にも重量的にも導入が難しいわけです。その結果が、マザーボードをボディ中央部分で固定するのを極力避けるHoverデザインの採用となりました。マザーボードがボディ内であたかも浮いている(=Hover)ような状態にすることで、日常的なストレスから中のパーツを守っています。社内の実験結果では、デザインの初期段階に比べると、最終的に約1.4倍程度まで強度を高めることができました(開発チーム・リード:阿部直樹氏)。

X60シリーズでは新たにHoverデザインを導入することで、ボディの堅牢性を高めた(左)。実際、マザーボードと底面のユニットはわずか数本のネジで固定されているだけで、中心部は避けられている。右の写真は底面のユニットで左側がX60s、右側がX60で微妙に違うのが見て取れる

一新されたキーボードユニット

ITmedia XシリーズにもWindowsキーが導入されました。

――キーボードについては、X60シリーズからWindowsキーが追加されたほか、右のAltキーなくなってアプリケーションキーになりました。このあたりは、ボディサイズにゆとりがあるT60やZ60シリーズとは異なっています。社内でも相当な議論を行いました。たとえば、Ctrl+Alt+Deleteキーを押すときに不便だという話もありましたが、右のAltキーを多用している方は少ないのではという判断のもと、Windowsキーとともにアプリケーションキーを導入しました。Windowsキーは今後のXシリーズでも継続して採用していく予定です。ほかにも、キートップのアルファベットを読みやすくしたり、キー自体を外れにくくしたり、ホームポジションの突起を大きくしたりといった細かい改良が随所に施されています(プロダクトマネージャ:木村香織氏)。

X60のキーボードは、Z60やT60シリーズと同じようにさまざまな改良が施されている(左)。右は英語キーボードを装着したX60。英語キーボードへの換装サービスは提供されていないものの、従来通りユニット単位の交換で対応が可能だ。英語キーボードには右Altキーが搭載されている。筆者としては、Enterキー周りの縮小ピッチ(日本語キーボードの場合)を何とか解消して欲しいと長年思っているのだが、残念ながらそのような意見は聞いたことがないとのこと

見た目はそのままに世代交代を実現したX60シリーズ

 実際に新モデルのX60やX60sを分解して見ると分かるのだが、可能な限り両モデルで部材を共通化している。1.8インチHDDの採用は、ドライブの内蔵方法やブリッジチップの実装(Serial ATA→Paralell ATA変換)などで多少無理しているのではと感じていた。それもあってインタビューをする前は、X32の後継機がX60、X41の後継機がX60sという切り分けは不要で、すべて2.5インチHDDに統一すればラインアップも理解しやすいのではと思っていたのだが、日本ではメーカーが想定した以上に軽量化への欲求が高いのがわかった。また、液晶ディスプレイや冷却ユニットをはじめとして、細かい部分まで軽量化にこだわったX60sのチャレンジにも納得ができた。半面、話を聞けば聞くほど、もっと軽いThinkPadが欲しくなったのも事実だ。

 今回のモデルチェンジでは、耐久性や操作性、堅牢性といった部分を高いレベルでまとめた、いわゆる「ThinkPadクオリティー」を維持したままでデュアルコアCPUの高いパフォーマンスの獲得に成功したX60シリーズ。X32シリーズよりもボディが小さく軽くなって性能は向上と見どころが多く、従来のX40シリーズでHDDの性能に不満を感じていたユーザーには、まさに待望のモデルと言えそうだ。

ThinkPad X60シリーズ開発チームのみなさん(カッコ内は担当分野)。後列左から阿部直樹氏(開発チーム・リード)、山崎哲氏(開発マネージャ)、平野幸彦氏(開発企画)、清谷佳正氏(LCD開発)、前列左から木村香織氏(プロダクトマネージャ)、山崎記稔氏(電子回路設計)。
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