IntelとAMDの両陣営からデュアルコアCPUが登場して以来、自作市場ではIntel製CPUよりもAMD製CPUに人気が集まっていた。もっとも今回登場したCore 2シリーズによってその勢力図が逆転すると予想するショップは多い。しかし、今週のアキバを見るとAthlon 64 X2シリーズが飛ぶように売れている状況だ。
既報のとおり、Core 2シリーズの登場に先立って、今週からPentium DとAthlon 64 X2の価格改定が行われた(参考記事:IntelがCPUの価格表を更新――Pentium Dなどを最大61%値下げ、AMDがCPUを値下げ――Athlon 64 X2は最大で半額以下に)。特にAthlon 64 X2の上位クラスは半額以上も値下げしており値頃感が非常に高い。Athlon 64 X2 3800+が2万円前後で、4600+も3万円強が平均となっている。また、最上位モデルの5000+も、市場に出回る前に半月前の予価から60%近く下がり、約4万円の値段が付けられている。
高速電脳は「Core 2 Extreme X6800よりも、Athlon 64 X2の在庫が確保できなくて困っています。価格改定後はすべてのラインアップが飛ぶように売れていますね。特にSocket 939タイプは入手が難しい状況です」という。
複数のショップで在庫状況を確認したところ、同じプロセッサナンバでもSocket 939タイプのほうが圧倒的に不足していることが分かった。某ショップは「AMDとしてはこれを機にSocket AM2プラットフォームを普及させたいので、旧来のSocket 939タイプの数を意図的に減らしているのでしょう」と考える。
しかし、アキバの現状を見ると従来のリソースが生かしやすいSocket 939タイプを求めるユーザーのほうが圧倒的に多い。Socket AM2対応マザーの売れ行きは伸びてはいるものの、今回の価格改定が新プラットフォームへの移行を加速させるまでには至っていないようだ。
一方、Pentium Dも上位モデルを中心に大幅な値下げが行われた。最上位のPentium D 960が約4万円で販売されており、ちょうどAthlon 64 X2 5000+と拮抗する価格帯に落ち着いている。ただし、こちらはどこのショップでも動きは鈍い。
「ハイエンド志向のユーザーは、一週間後のCore 2 Duoを購入するでしょう。Pentium Dは発熱量でも性能でも劣るので、いくら安くても手を出す人は少ない」(某ショップ)とのことで、今後のPentium Dの入荷数を大幅にカットする店舗は少なくないようだ。
「IntelにとってPentium Dは、Socket 423と同じくらいの失敗だったと思います。Core 2 Duoの人気と相まって、一瞬のうちに姿を消す可能性がありますね」と語るショップさえあった。しかしこのことを逆にとらえれば、「“なかったことにしたい”Pentium D」(某ショップ)のおかげで一気に次世代CPUへの脱却が成功する可能性はある。
Core 2 Duo登場前の前哨戦として行われた値下げ競争を制したのはAthlon 64 X2。しかしSocket 939からAM2への移行が順調に進まなければ、次に打つ手のないAMDはいずれ劣勢に立たされることになる。パソコンショップ・アークは「Athlon 64 X2がCore 2 Duoにシェアで勝つのは難しい」と予想する。「活路を見出すなら、HT対応Pentium 4と競っていたAthlon XPシリーズのような“安くて高性能なCPU”という位置付けでしょう」(同ショップ)。この読み通りに進めば、AMDは挑戦者としての足場を確保しつつ、チャンピオンのスキを狙っていくことになりそうだ。
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