誤入力許容回数を初期設定の3回で使用した場合、誤ったパスワード入力を行うと、2回目の誤入力で警告文(非表示設定も可能)が出るが、3回間違うとUSBメモリ内の全データは即時消去されてしまうので注意が必要だ。
パスワードそのものは勝手に変更されず有効状態が保持されるので、管理者の持つ「設定変更プログラム」で誤入力許容回数を変更(増加)し、再入力を行うことも可能だ。別の面から見れば、意識的にパスワードを規定回数以上間違うことによってストレージ内を迅速かつ確実に、クリーンアップ可能だ。
機密管理を前提としたUSBメモリの登場は今回が初めてではない。しかし、USBメモリ単体のセキュリティを必要以上に複雑化、強化する方向性ではなく、運用方針や運用の集中管理を実現している例は意外と少ない。「Disk Key Secure」は、クライアントユーザに配布する物理的なUSBメモリの仕組みを複雑化するのでは無く、明確に可視化された運用ポリシーを前面に出した企業ユーザー向けの初めての集中管理型USBメモリだ。
従来から、国内の大手金融機関などでは、データの社外持ち出しを禁止しているケースが一般的だ。本製品の導入を計画している国内の金融機関では、パソコンのハードディスクにデータを入れないかわりに、「Disk Key Secure」によるデータの持ち出しを検討しており、現在、数千個規模での採用を計画中だ。
もちろん、モバイルPCや「Disk Key Secure」の取り扱い規定には、人に対するより詳細な運用規定が設定されていることは、言うまでもない。「Disk Key Secure」には、企業向けの市場開拓に加え、今後、パーソナル市場での積極的展開も期待したい。
機密管理の概念や防備の為のテクノロジーがいくら進歩しても、もっとも難しいのは悪意のある第三者から広義の資産を守ることだ。これは、今回の「Disk Key Secure」を活用しても同様だ。
鉄壁の守りを固めた巨大金融機関のオンラインシステムも、たった1人の貸し付け係のお姉さんには非力であることは長い金融犯罪の歴史が証明している。最もセキュリティに敏感で努力をしているはずの金融機関ですら、起こる犯罪の99%以上はITとは関係の無い人に委譲された権限によって引き起こされるか、ワークフローの矛盾や誤差による防衛不可能な内部犯罪なのだ。
モバイルPCを開発・販売している当事者の会社ですら、モバイルPCの社外持ち出しを制限するという「ひとまずセキュリティ・ファースト狂想曲」の流行る超おかしなIT後進国ニッポンだが、セキュリティポリシーや倫理規定の教育で及ばないのなら、人の心や行動にもCONTROLやLOCKをかけるヘッドギアのような「Heart Key Secure」もいずれ必要になるかもしれないだろう。
製品名 | Disk keySecure (セキュリティ機能付きフラッシュメモリー) |
---|---|
製造 | 十条電子 |
販売 | アナログテックほか |
発売時期 | 3月下旬 |
価格 | 512Mバイト版 6000円前後(1000個ロット時)、1Gバイト版 8000円前後(1000個ロット時) |
竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.