「いまがフツーなんだと思う」――閉店したPCショップ元店長が語るアキバの未来5年後のアキバを歩く 第5回(1/2 ページ)

» 2007年05月31日 17時00分 公開
[古田雄介,ITmedia]
U&J Mac's plus店長 芳野瞳太(よしの とうた)氏

 閉店した店舗のスタッフが、アキバで別のショップに移るのはめずらしくない。2007年2月に実店舗を閉めたワンネスの2階で、ユニークなジャンク品や中古品を販売していた「じゃんく屋わんねす」の店長・芳野氏も、現在はU&J Mac's plusの店長として店を切り盛りしている。

 10代の頃から10年以上もアキバでPC関連事業に携わってきた芳野氏は、自作PCブームが起きたころから現在までの街の変化を肌で感じている。「小さなショップでも1日1000万円以上売れた」バブリーな時代を経験しながら、「1日100万円売り上げれば御の字」というPCパーツ市場の現状に、それでもなお“暗くはない”将来像を描いているという。複数の店舗を渡り歩いたベテランスタッフとして、自作PC市場の変遷と未来について語ってもらった。

サンコーレアモノショップ2号店やi.CONなどの店舗が立ち並ぶ通りに店を構えるU&J Mac's plus。Macintosh関連製品を扱う「U&J Mac's」とは異なり、こちらはWindows関連製品を中心にそろえている

2003年から04年が電気街の底だった

 PCパーツショップの閉店が相次ぐなかで、中古やアウトレット製品を扱うショップの新規参入は現在も多い。今後のアキバを担うのは、中古PC事業なのだろうか?

芳野 たしかに、新品のパーツを含めて、この業界の景気は2005年ごろから回復していますね。ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaつくばエクスプレス(TX)の存在が大きい。ヨドバシがオープンする際、既存のPCパーツショップはみなつぶれてしまうと戦々恐々としましたが、フタを開けてみると、小規模な店舗にとってプラスの影響しかなかったんです。

 とにかく街に来る人が増えた。ヨドバシで買い物したあとに、どうぜアキバに来たのだからと、ほかのショップに足を伸ばす人が多いんです。こちらには、ヨドバシに売っていない製品があるので、共存関係が築かれました。

 しかし、だからといって2001年から02年にかけて起こったアウトレットブームのような盛り上がりはありませんし、今後も期待できないでしょう。1997年から98年にかけては、新品のパーツやPC本体が飛ぶように売れました。そこで、PCを高価だと感じていた層が、アウトレットに流れてブームを起こしたわけですが、2003年になると、市場は急激に冷え込んでしまいます。正直、この産業はここで終わると思った。街の再開発事業により、状況が改善された現在でも、その流れは続いています。なので、中古ショップが街の顔になることはないでしょうね。

――タイミングとしては、Windows XPが行き渡ったためにブームが去った?

芳野 いや、世間でいうほどOSの影響は大きくないです。急激に伸びた業界なんで、急激に冷えたように感じるだけ。単にブームが去っただけで、いまが普通なんだと思います。これでも利率をある程度確保すればやっていける。ただ、無茶なショップはやっぱりあって、価格競争が起きてしまう。だいぶ良くはなりましたけど……。

――新品のパーツが安売りされる影響が中古ショップにも現れているのでしょうか?

芳野 そういうわけではないです。中古ショップに、安売りを仕掛けるお店がいくつかあったということ。新品パーツは代理店から仕入れますが、中古はスタッフが法人などから買い取るのが主流です。仕入れルートが異なるので、影響しあうことは少ないですね。個人を対象にした店頭買い取りでは、そういった影響があるかもしれませんが。

既存のPCパーツショップに不安視されたヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの開店(2005年9月)だが、大規模なショップを除けば、プラスの影響だけを与える好材料となっているようだ(写真=左/中央)。芳野氏は、つくばエクスプレス(TX)の開通などの再開発事業によって、閉塞気味だったアキバが再び活気を取り戻したと考える(写真=右)

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