「自作PCの未来は、明るい」5年後のアキバを歩く 第4回(1/2 ページ)

» 2007年05月29日 11時30分 公開
[古田雄介,ITmedia]

 USER'S SIDEの小林氏は、警鐘の意味合いも込めて「自作PCに未来はない」と断じた。業界が終息する原因の1つに「PCパーツショップの安売り戦略」を挙げていたが、それにより多くのユーザーを獲得してきた事実も認めている。この戦略の功罪については、ショップスタッフの間でもさまざまな意見が聞かれるところだ。

 第4回は、自作PCの黎明期に「PCパーツが安いショップ」として名を馳せたツートップ秋葉原本店に話を聞いた。同店は1993年に秋葉原に進出し、それまで高価だったPCパーツの価格を大幅に下げて、自作PCを世に普及させる原動力となった。経営母体は変わったものの、約15年もアキバ電気街で重要な役割を担い続けている。

“安売り”の価値が下がったアキバ

ツートップ秋葉原本店 副店長 柿田 俊介(かきた しゅんすけ)氏

 ツートップが秋葉原に進出した1993年は、Windows 95もまだ登場していない時期。インターネットも普及していない時代で、1台のマシンが100万円近くするのもめずらしくなかった。まもなく同店をはじめとするアキバのショップが低価格でPCパーツを販売し、“街の顔”へと急成長を遂げることになる。自作PCブームの到来だ。

 しかし、その原動力となった「安売り」は、現在の戦略としては優先順位が下がっているという。

柿田 Windows XPが登場してまもなくの2002年ごろから、弊店も含めて、いままでの安売りから方針を変えるショップが増えてきました。“価格競争をしていると先がない”と業界全体で気付いたんでしょうね。

 例えば、少し前までバルクのDVDドライブが1万円強だったのが、いまは6000円程度に下がっています。そうなると、単純に入ってくるお金は半分近くに減ってしまう。お客さんのほうも、いままでなんだったのよ? と思う。メーカーも小売り業者もメリットがなく、お客さんもお得な気分ではなくなります。安売りだけで進めると先が細くなる。業界全体でそれに気付いたのが、2002年ごろでした。

――低価格で有名になったPC-Successは2007年はじめに閉店しましたが、いまのアキバで安売りの戦略を立ててもうまくいかないのでしょうか?

柿田 浮いてしまいますね。少なくとも、後に続くショップはほとんどないでしょう。頑張っているのかなぁと、他人事のように傍観するだけ。ただ、あまり目立つようだと代理店に「どうなってんの?」と聞くことはあると思います。まったく代理店が被らないPCパーツショップはないですから。まあ、特定のショップだけ異常に安く卸す代理店はないでしょうが。

 CPUにしろ、メモリにしろ、売っているものが基本的に同じなので、他店の価格に影響されやすい環境はいまも同じです。無茶をするショップがなくなったのが大きいですね。

――なぜ、無茶な安売りがなくなったのでしょうか?

柿田 お客さんのニーズが少ないからだと思います。以前はネットで調べて最安値のところで買うというのが当たり前でした。アキバを歩きながら、一日かけて最安構成で目的のパーツをそろえるっていうのも、お客さんの楽しみだった。いまでもいるとは思いますが、以前より確実に減りましたね。

 一カ所で買った方がサポート面で安心というのもあるでしょうし、お客さんが昔ほど安さに反応しなくなった。例えば、HDDはどの時代も1万円前後のものが1番売れる。CPUは2万円台。面白いもので、多くのユーザーが基本パーツにかけるお金は、2002年からあまり変わっていないんです。1台PCを組み立てるのに10〜15万円あればOKという相場が何となくできているから、苦しい予算で少しでも安くと考える人が少なくなっているのかもしれません。

Windows Vista発売後に突如閉店したPC-Success(写真=左)。2002年頃の売れ筋CPUはPentium 4 2.40B。当時(2002年秋頃)の価格は2万5000円前後。2007年現在も、2万9000円前後のCore 2 Duo E6600が人気を集めている(写真=右)

――安いショップの価格表を持ち出して、ディスカウントを求める人は、いまでもいますか?

柿田 いますが、以前より少なくなっています。安いに越したことはないのでしょうが、そこまでして安さを求める人は減っていますね。また、値切りに挑戦しても、それほど下がらないことを知っている人も多いでしょう(関連記事:日本橋“オタロード”で“オタクが値切る”は通用するのか)。

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