「自作PCの未来は、明るい」5年後のアキバを歩く 第4回(2/2 ページ)

» 2007年05月29日 11時30分 公開
[古田雄介,ITmedia]
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「敷居は低いが、奥が深い」をめざす

 安売りの効力が期待できなくなった現状で、PCパーツショップのトレンドはどのように変わったのだろう。ツートップ秋葉原本店は、店の雰囲気と商品の見せ方に重きを置く。この方針に成功の実感を得ているからこそ、明るい将来像を抱いているという。

柿田 安売りだけで通用しなくなったのは、街に来る人が変わってきたというのも大きいです。特に2005年ごろから、自作にあまり詳しくない人もたくさん来店するようになりました。

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaができて、電車男ブームが到来し、アキバが観光地化したというのは間違いないです。潜在的に興味を持っていた人が気軽に来やすくなったというのが、最近の景気にもつながっていますね。

――限られたコアな層から裾野が広がった。

柿田 ええ。それに、いままでは仕事で使うためにマシンを組む人が多かったのですが、趣味の人が増えた実感があります。趣味で自作PCを始めた人は、街のリピーターになってくれる場合が多い。現在は仕事:趣味の人が5:5くらい。Windows 98のころは、7:3という印象でした。

――そういった状況の中で、いま1番ユーザーに求められているのは何でしょう?

柿田 敷居の低さだと思います。これから自作PCを始めるビギナー層だと、マニア度全開のお店には入りにくい。女性でも入りやすい店っていうのは重要でしょうね。敷居の低さはサポートの厚さと直結しています。パソコンは機械モノなので、どうしても店員のサポートは重要になってきますし、気軽に質問できる明るく元気な店であり続けることが重要です。

 加えて、品ぞろえの豊富さもカギになります。趣味でマシンを組むのだから、やはりほかの人と違った構成が選べないと。いまよりももっと尖った製品がたくさんあったほうがいいですね。

――従来のコアな層を満足させる工夫は?

柿田 高級なデモ機を置くことなどして、ハイエンドなパーツを積極的に紹介しています。ショップは自作PCのプレゼンテーションの場でもあると考えています。デモ機を見てマシンの構成を決める人も多いので、いまのところ好評を得ているようですね。今後も“敷居は低いが奥が深い”をモットーに店づくりをしていきます。

ツートップ秋葉原本店は、店外にもメーカーごとのディスプレイを設けている(写真=左)。店内では斬新なコンセプトでデモ機をくみ上げるのが店の伝統となっている(写真=右)

PCパーツショップにケータイが並ぶ近未来

――それでは、5年後のアキバの姿をどう想像しますか?

柿田 劇的な変化はないでしょう。2002年から現在までの変化と同じく、緩やかに変わっていくと思います。自作PCはなくなりはしませんが、(インターネット)ブラウザのラインアップとして、ケータイを扱うPCパーツショップが出てくるかもしれません。

――趣味で自作PCを組む人は増えるでしょうか?

柿田 そう思います。仕事:趣味の人が3:7くらいになるかも。もちろん、絶対数も増えるでしょう。安売りブームが終わっても、趣味の人は繰り返し街に訪れてくれます。リピーターを抱えながら、新規に興味を持つ人も取り込んでいける。

 中には途中で飽きる人も出てくるでしょうが、アキバには自作オーディオやラジオなどのショップもあります。自作PCに近い分野を押さえているので、自作PCから一度離れてもアキバから離れないですむ。再び興味を持てばすぐに戻ることができるのです。

――お店の中は、5年後に変わっていますか?

柿田 お客さんに提案する陳列が多くなるでしょうね。個性的なデモ機を並べて、見ているだけで想像力をかき立てられて楽しくなるような。もはやPCはあって当たり前の存在です。それで何ができるかをお店が紹介するようになっていくと思います。


 柿田氏はアキバの将来像を語る時、「街が盛り上がっているうちに、新しい人材が登場することに期待しています」とも話していた。PCパーツショップが電気街の顔としてアキバの一端を担っていくためには、自作PCの黎明期にブームを牽引した経営者たちのような、新しい風を起こす次代のリーダーたちが不可欠だろう。ツートップ秋葉原本店は、少なくとも5年先までの明るい未来を確信していた。その間に新たな人材が育つことを期待したい。

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