「あらやだ、中国製なのこれ」──上海セレブにみる中国富豪のIT事情:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2007年08月13日 08時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

超格差社会“上海”のハイ・アンド・ロー事情

経済の発展が著しい上海では、昔ながらの低層住宅を超高層高級マンションが威圧する

 当連載で、中国地方のIT事情を紹介し、奥地に行けば行くほどPCが超高額商品になる現実を見てきた。一方、中国で最も豊かな都市と言われる上海のコンシューマーIT事情はどうなのか。

 上海の平均所得は2006年の時点で2500元弱(約4万円、「新華ネット」調べ)だ。この数値は首都の北京だけでなく、中国大陸地域のどの都市よりも高い。とはいえ、上海という街は、スラムと高級高層マンションが隣り合わせであることが当たり前で、大衆食堂で働いてつつましく生活をする人がいるそのすぐ近所に、外資系企業で働く月給5000元(約8万円)以上の人も住んでいるという、貧富の差が“目視”できるほど極端に存在する街でもある。

 たしかに、上海の「雰囲気」を形成しているのは相当数存在する富裕層であるその一方で、裕福でない住民も多い。とはいっても、低所得層の庶民が営む生活環境というのは、中国の地方大都市とそう変わりない。上海の低所得者向けPCショップや、ゲームセンター、ネットカフェの雰囲気は地方都市のそれと同じなのだ。そういう、混沌たる上海のIT事情の「ハイ・アンド・ロー」に今回は迫ってみよう。

上海には小規模な電脳ビルがいたるところに存在する。上海駅の隣「宝山路」駅には庶民の味方“中古PC市場”がある
こちらのネットカフェも上海の一般庶民の味方だ

電脳街で見る上海の豪快な高額商品お買い物

徐家匯の電脳エリア。球体のオブジェが目立つ建物が「美羅城」。その背後に「太平洋電脳I期」「太平洋電脳II期」が並ぶ

 上海の電脳街は、地下鉄1号線の「徐家匯」(発音は「シージャーフイ」)と、俗に言う“オシャレストリート”の「准海路」、それに上海の象徴的ランドマークタワー“東方明珠塔”のある「浦東地区」にある。このなかで最も知られているのが徐家匯だ。北京の代表的な電脳街「中関村」は、電脳街と研究施設が集中するアキバ的な性格を持った街だが、徐家匯は交通のターミナルであり、普通のデパートも軒を連ねる渋谷や池袋的な性格を持った街といえる。

 徐家匯には長らく「美羅城」「太平洋電脳I期」「太平洋電脳II期」という3つの電脳ビル(厳密に言えば美羅城はショッピングセンターの中に、PCショップが集まる「百脳匯」(Buynow)が入っている)が一大電脳街を形成していたが、2006年末に米国の大型家電小売チェーン「Best Buy」(百思買)が参入した。

 従来からある3大電脳ビルが形成する上海電脳街は、中国のほかの地域で見るそれと異なる部分が多々ある。一番目立つ「美羅城」に入ると、ソニー、ThinkPad(中国人は“レノボ”ではなく、あくまでも“IBMが作っていたThinkPad”として認識する)、東芝、ASUS、Acer、Samsung、NEC、富士通、Appleなど外資系メーカーのPC専門店がならぶ。中国メーカーの製品は(とりあえずレノボを例外としても)極端に少ない。全般的に中国の電脳街は1階に外資系メーカーの専門店を配置したがる傾向があるが、美羅城のように、ここまで中国メーカーのPC専門店を排除するのも珍しい。外資系メーカーは中国においてノートPCを中心に出荷しており、中国メーカーはデスクトップPCを中心に出荷する傾向があるため、美羅城の1階はノートPCでほぼ占められている。

 美羅城の次に目立つ太平洋電脳I期の1階も同様に外資系メーカーのノートPCばかりが展示されており、上階に行かないと自作用PCパーツも中国製デスクトップPCも売っていない。最も地味な太平洋電脳II期は、ほかの2つと比べてずいぶんと庶民的な電脳ビルで、中国メーカーのデスクトップPCとPCパーツのオンパレードとなっている。ただし、筆者が上海を最初に訪れたときは存在すら気づかなかったくらい地味なビルなので、観光で訪れた人が探そうとするとかなり苦労するだろう。この夏上海を訪れる予定のIT戦士諸君は、時間に限りがあるならば、まず美羅城と太平洋電脳I期から攻められたい。

 そうそう、食事や休憩をとるときは美羅城の地下1階に行くべし。庶民的中華料理のほか、日本でもなじみのCoCo壱番屋やBurger King、吉野家もあるので、中国初心者でも容易に食事にありつける、はずだ。

美羅城の1階にはThinkPadやソニー、東芝、そしてAcerといった外資系ノートPCが並ぶ。中国メーカーのPCはまず見かけない
太平洋電脳I期の1階。中国メーカーはハイアールとレノボが製品を並べているが、それ以外は外資系のPCばかりだ

 上海でこれだけノートPCが売られているということは、ノートPCを購入できる消費者層が上海にあるということになる。知人に聞いてみると、やはり、高給取りは外資系メーカーのノートPCを好み中国製ノートPCは敬遠するらしい。ただし、上海の高給取りといえど、月給5000元(約8万円)では、ThinkPadやVAIOノートを購入するのに数カ月分の給料が必要だ。このあたりが、高額商品を購入するときに見せる中国人独特の思考で、「PCは給料数カ月分」というのが基本的な相場になるらしい。それが中国におけるPC購入の「分相応」なのだ。

 高額商品が集まる上海の特殊性を典型的に見せてくれるのがPSPの販売状況だ。上海の電脳ビルでは、PCパーツ専門であるにも関わらず、PSPを販売するショップが相当数あり、その一部はWiiなどの据え置きゲーム機も扱っている。中国人にとってPSPは「海賊版ソフトが比較的に導入しやすいゲーム用ハードウェア」として認識されているのに加えて、「ソニー製でかっこいいっ!」という見栄心も満足させてくれるメディアプレーヤーとしても人気がある。ほかの都市では、PCパーツショップでPSPにデザインを似せた中国製MP4プレーヤーが並ぶのが精一杯でPSPの実物にはまずお目にかかれない。PCパーツショップにPSPの実物が並んでいるという事実も、上海に住む人の豊かさを示している。

 ちなみに、上海でPSPを買おうとしても、よほど高給取りでない限り月給がまるまる吹っ飛ぶことになる。それも彼らからすれば「分相応」であるから、その程度の支出はどうってことないのだ。

 なお、さすが国際都市上海の電脳街には海賊版ソフト販売店はない。だからといって、裕福な上海の人は海賊版を使わないんだ、ということではないようで、住宅街に行けば海賊版ソフト販売店がぽつぽつと姿を現す。「所得が少ないからしょうがなく海賊版を利用する」と中国人はよく語るが、金持ちの街上海をしても、「タダに越したことはない」という考えはほかの地域と同じようだ。

上海の中心から離れた住宅地に出没する海賊版ソフト売り
街の一角にある、ごく普通の商店で、野菜や果物と一緒に海賊版ソフトが並んでいたりするあたりに、「生活と密接につながっている」のがうかがえる

関連キーワード

中国 | Best Buy | ノートPC | レノボ | 海賊版 | PSP


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