「VAIO type A」は、17インチワイド液晶ディプレイを据えた重量級の本体に、現時点で最も高性能なモバイルプラットフォームと、ソニーお得意のAV関連機能を盛り込んだ高級AVノートPCだ。映像や音楽といったリッチメディアの鑑賞から制作までを楽しみたいユーザーをターゲットとする。
今夏のモデルでは、こうした従来モデルの基本的な性格が踏襲されているだけでなく、本体のデザインもほぼそのまま受け継がれており、少なくとも外見上は地味な変更にとどまっている。2モデルが店頭販売されるのに加え、ハード/ソフトウェアともにカスタマイズが可能なVAIOオーナーメードモデルが2種類用意されるラインアップ構成も従来通りだ。なお、現在販売中のVAIOノートの中で、地上デジタル放送対応のTVチューナーを内蔵した製品はVAIO type Aのみである。
モデルチェンジの要点を最初におさらいしておくと、やはり最大の目玉は、先に発売された「VAIO type BX」や「VAIO type F(FZ)」に続き、プラットフォームをインテルの“Santa Rosa”こと新Centrino Duoへと一新したことだろう。ただし、「Intel Turbo Memory」の機能は実装されないほか、ドラフト802.11nの無線LAN機能についてもVAIOオーナーメードモデルで選択した場合のみ搭載可能と、一部の仕様に制限があるのは他機種と変わらない。
このほか、上位モデルの「VGN-AR73DB」では、内蔵Blu-ray Discドライブの書き込み性能が向上し、1層のBD-R/REディスクに2倍速で記録できるようになった(2層ディスクは1倍速)。また、ソフトウェアの面では、Blu-ray Disc対応のオーサリングソフトとして自社開発の「Click to DVD BD Ver.3.0」を採用したのが大きなトピックといえる。
まずは上位モデルのVGN-AR73DBを中心に、基本的なスペックを確認しておこう。核となるチップセットはIntel PM965 Expressで、CPUは2.0GHz動作のCore 2 Duo T7300(FSB 800MHz/L2キャッシュ4Mバイト)を、メインメモリはPC2-5300対応の512MバイトSO-DIMMを2枚搭載する(最大2Gバイト)。ストレージは、RAID-0で接続された2台のドライブによる240GバイトのHDDと、前述した2倍速書き込み対応のBly-ray Discドライブという構成だ。
グラフィックスチップも今回一新され、NVIDIAのGeForce 8600M GTが新たに用意された。ビデオメモリはメインメモリとの併用により、最大511Mバイトまで利用できるが、このチップは描画性能の高さもさることながら、HD映像の再生支援エンジン「PureVideo HD」の第2世代を備えているのがポイントだ。これにより、高ビットレートの映像を収録したBlu-ray DiscもCPU負荷を抑えつつ再生可能としている。
液晶ディスプレイには、1920×1200ドット(WUXGA)の解像度を持つ、クリアブラック液晶「ピュアカラー」と呼ばれる光沢パネルを採用。VAIO type FZに採用された広色域タイプ(NTSC比90%)の「ピュアカラー90」パネルとは異なり、色域はNTSC比で72%になるものの、地上デジタル放送やBlu-ray Discの映像をフル解像度で楽しめるのが魅力だ。
さらに今夏モデルでは「液晶ディスプレイ画質モード」と称する機能が追加された。これはあらかじめ2パターン(標準/あざやか)用意された、ガンマカーブと色温度の設定をワンタッチで切り替えられるというものだ。
一般的な設定値と同様の「標準」モードは、PCのアプリケーション操作に適した設定で、地上デジタル放送やBlu-ray Discの映像などを鑑賞するにはやや平板な印象を受ける。そこで、動画の全画面再生時には、明暗や色の濃淡が強調されるガンマカーブと、高めの色温度に設定された「あざやか」モードに切り替えるといいだろう。
「あざやか」モードは好き嫌いの分かれる画作りかもしれないが、コントラストが高くメリハリのきいた映像を楽しめる。なお、液晶ディスプレイの下部で光るSONYロゴは、動画の全画面再生時には自動で消灯するといった細かい配慮もなされている。
フラッグシップと呼ぶにふさわしい高性能なハードウェアで固められたVGN-AR73DBだが、そのぶん価格も実売40万円前後と、多機種を圧倒している。このため、地上デジタル放送の視聴や録画を中心に、もっと手軽に楽しみたいユーザーのために、実売28万円前後に収めた下位モデル「VGN-AR53DB」も用意される。
VGN-AR53DBは、液晶ディスプレイのサイズこそ上位機と同じ17インチワイドをキープしているものの、解像度は1440×900ドット(WXGA+)どまりで、画質モードの切り替え機能も備えていない。CPU(1.8GHz駆動のCore 2 Duo T7100)やHDD(200Gバイトのドライブが1台)、光学ドライブ(DVDスーパーマルチドライブ)、グラフィックスチップ(NVIDIA GeForce 8400M GT)といった基本スペックでも見劣りする。天面や液晶ベゼル部分の表面仕上げも光沢のあるプレミアムブラックでまとめられた上位モデルに対し、下位モデルは光沢処理の施されていない黒色になっている。
VAIO type A店頭モデルの比較 | ||
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モデル名 | VGN-AR73DB | VGN-AR53DB |
天板カラー | プレミアムブラック(光沢) | ブラック(非光沢) |
CPU | Core 2 Duo T7300(2.0GHz/L2キャッシュ4MB) | Core 2 Duo T7100(1.8GHz/L2キャッシュ2MB) |
チップセット | Intel PM965 Express | |
メモリ | 1GB(512MB×2)/最大2GB | |
グラフィックス | GeForce 8600M GT(511MB) | GeForce 8400M GT(383MB) |
ディスプレイ | 17インチワイド(1920×1200ドット) | 17インチワイド(1440×900ドット) |
HDD | 240GB(120GB×2/5400rpm) | 200GB(4200rpm) |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ワイヤレス通信 | IEEE802.11a/g/b準拠、Bluetooth Ver2.0+EDR | |
TVチューナー | 地上デジタル×1 | |
OS | Windows Vista Home Premium | |
上下どちらのモデルにも過不足を感じる場合は、VAIOオーナーメードモデルを検討したい。店頭販売される2モデルを核とした2種類のベースモデルが用意され、どちらかを選んでから構成をカスタマイズする形だ。液晶ディスプレイの解像度とグラフィックスチップ、それに本体の色はベースモデルごとに固定となる。
どちらのモデルを選んでも、OSにWindows Vista Ultimateを選択できるのがオーナーメードモデルの特徴だ(店頭モデルはともにWindows Vista Home Premium)。また、Core 2 Duo T7700(2.4GHz)や、200Gバイト×2による400GバイトのHDDといった、店頭モデルの上位機種よりもさらに高性能なパーツも用意されており、パーツをチョイスしていく楽しみも味わえる。
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