価格も機能も最高峰のフラッグシップAVノート――「VAIO type A」を試すSanta Rosa×BD×WUXGA液晶(3/4 ページ)

» 2007年08月31日 17時45分 公開
[都築航一,ITmedia]

VAIO type R master譲りの高度なハイビジョン編集機能も魅力

 一方、HDVやAVCHDといったハイビジョン対応ビデオカメラで撮影した映像の編集や作品としての保存は、アドビシステムズのビデオ編集ソフト「Adobe Premiere Elements 3.0」を中心に、ソニーオリジナルのユーティリティで機能を補完する。長らくこの方式での編集ワークフローを提供してきたVAIOシリーズらしく、完成度の高さが光る。

 ただ、HDV/DVカメラからのキャプチャとビデオカメラへの書き戻し、別形式に変換しての保存については、今回から「DVgate」の代わりに「VAIO Content Importer」および「VAIO Content Exporter」で行なう仕様に改められた。これにより、ビデオカメラの種類によって利用するユーティリティが異なっていた従来の状態から、どの方式のビデオカメラで撮影した映像でも、基本的には同じ手順で編集作業を行なえるようになった。キャプチャしたデータをBD-AV形式でディスクに保存する場合や、AVCHD形式へのファイル変換を行なうだけなら、Premiere Elementsを使わずにVAIO Content Exporterで作業を完結できる。

「VAIO Content Importer」では、HDVおよびDVカメラからのキャプチャのほか、DVDビデオカメラやAVCHDビデオカメラで記録したディスクメディアなどのデータをPCに取り込むこともできる(写真=左)。「VAIO Content Exporter」は、PC上の動画ファイルを変換して出力したり、テープやディスクに保存するためのユーティリティで、簡単なカット編集にも対応する(写真=中央、右)

BD-MV形式でのメニュー作成に対応した「Click to DVD BD Ver.3.0」

 編集した作品をBlu-ray Discに保存する際は、前述の通り、バージョンアップしたオリジナルのオーサリングソフト「Click to DVD BD Ver.3.0」が使える。Premiere Elementsでの編集が完了した後は、Click to DVD BDへスムーズに作業を移行できるよう、映像データとClick to DVD BDのプロジェクトファイルを同時に出力することが可能だ。前モデルではインタービデオジャパンのオーサリングソフトの制約でBD-AV形式でのディスク保存しかできなかったのに対し、BD-MV形式でのオーサリングもできるようになったのは大きい。

 Click to DVD BDの詳細については先のレビューに譲るが、BD-AVやDVD-VRでのディスク保存に加え、BD-MVおよびDVD-Video形式でのオーサリング、さらにPC再生専用になるものの、HDV形式のデータをそのままデータディスクとして保存するといった機能が用意される。Premiere Elementsでの編集が必要なければ、わずかな手順でビデオカメラの映像をディスクへ保存できる「おまかせ作成」の機能を使うのがいいだろう。

 加えてClick to DVD BDでは、AVCHDビデオカメラで撮影した映像をBlu-ray Discにオーサリングする場合、元のコーデックであるMPEG-4 AVC/H.264がそのまま使われるため、MPEG-2などに変換して保存する必要がなくなり、使い勝手も大きく高められた。なお蛇足ながら、HDVカメラで撮影したデータをオーサリングする場合も、やはり元のコーデックであるMPEG-2が使われるが、HDVとAVCHDの素材が混在するときは、全編がMPEG-2で統一される。

 このほか、独自のPremiere用プラグイン「VAIO Edit Components」が、大きな負荷のかかるHDVやAVCHDのデータでも快適な編集が行なえる「プロキシ編集」の仕組みと、Premiere Elements用のビデオエフェクトやトランジションを提供している点も見逃せない。VAIO Edit Componentsは、「Adobe Premiere Pro CS3」に対応したVer.6.3にアップデートされている。なお、プロキシ編集については、「VAIO type Rのレビュー」で詳説しているが、今回VGN-AR73DBで試した限りでは、HDV、AVCHDともに実時間の2倍程度でプロキシを作成することができた。

「Adobe Premiere Elements 3.0」では、プロキシ編集によって快適な作業が行なえるだけでなく、ソニー独自のトランジションやビデオエフェクトにより、表現の幅が広げられる(写真=左)。ここに掲げた編集画面は独自のビデオエフェクトの1つ「3Dパーティクルメーカー」で画面に雪が降るような効果を設定しているところ。Premiere Elements上でのプロキシ編集を実現するため、バックグラウンドでプロキシの作成と管理を行なっている「VAIO Edit Components」(写真=中央、右)。Premiere ElementsのビンウィンドウでHDVやAVCHDのデータを読み込むと、自動でプロキシファイルマネージャと呼ばれる管理画面が起動し、プロキシの作成が行なわれる

 これらのソニー製ユーティリティは、すべて原則としてソニー製ビデオカメラと組み合わせて使うことが前提になっており、手持ちのHDVカメラやAVCHDカメラが他社製品である場合は、一部の機能が利用できないので、注意が必要だ。

 例えば、VAIO Content Importer/Exporterは、他社製のHDVカメラを認識しないため、ソニー製ビデオカメラを持っていなければ、HDVのテープはそもそもキャプチャが行なえない(ビデオカメラをDVモードに切り替えれば、他社製カメラでも利用できるが、当然ながら解像度が落ちる)。HDV形式以外でも、日本ビクターの「GZ-HD7」で撮影した最高画質モードのデータや、松下電器産業の「HDC-SD3」で撮影したデータなどは、プロキシの作成に対応していないため、編集時の快適さが損なわれる。

 ただし、Premiere Elements自体が持つ機能を利用すれば、他社製HDVカメラを使う場合でも映像のキャプチャ自体は行なえるほか、今回VAIO Edit ComponentsをVer.6.3にアップデートして試した限りでは、先に挙げたような、これまでプロキシ作成が行なえなかった他社製ビデオカメラのデータでも、プロキシ編集を行なうことができた。

 当然ながらサポート対象外の行為であるため、どんなデータでも必ず利用できるとは限らないが、VAIO Edit ComponentsがVer.6.3にバージョンアップされたのに伴い、他社製カメラと組み合わせた際の制限が緩和されたのではないかと推測される。ということは、こうした制限の緩和は、VAIO type A以外のVAIOでも同様と考えられるので、すでにVAIO+PremiereでHD編集を行なっているユーザーは要チェックだ。

オーディオ面のこだわりはVAIOならでは

 VGN-AR73DBは、Intel HD Audioに準拠した独自のオーディオチップ「Sound Reality」を実装しているのも特徴の1つ。レコーディングソフトの「SonicStage Mastering Studio」を使うことで、カセットテープやレコードといったアナログ音源を、リニアPCMではなく、スーパーオーディオCDと同じDSD形式で録音できるほか、音楽CDやMP3といった音楽ファイルからDSD方式のファイルを生成する「DSD Direct Ver.2.0」や、音楽CDを含むリニアPCMのデータを、リアルタイムでDSD形式に変換しながら再生する「DSD Direct Player」といったソフトも利用可能だ。

 DSD Directでは、DVDメディアにDSD形式のファイルを収録するDSDディスクの作成機能も備えている。DSDディスクを再生可能な機器は、プレイステーション 3(バージョン1.60以上)程度とごく限られているが、VAIO type Aに付属のデコードソフトを導入すれば、DSD再生に対応していないPCでも簡易再生が可能になる。

 さらに、HDVカメラの映像に含まれる音声にも対応した音楽編集ソフト「DigiOnSound5 L.E. for VAIO」もバンドルされるなど、オーディオ機能の充実ぶりも注目できる。なお、DSD Direct Playerによる音楽再生は、マシンにかかる負荷が非常に大きいため、VAIO type Aでは2.0GHz以上のCPUを搭載したモデルにのみバンドルされ、VGN-AR53DBや、2.0GHzを下回るCPUを選択したVAIOオーナーメードモデルには付属しない。

MP3やWAVといったファイルをDSD形式に変換する「DSD Direct Ver.2.0」(写真=左)。通常の音楽CDやリニアPCMのWAVファイルをリアルタイムでDSD形式に変換しながら再生する「DSD Direct Player」(写真=右)

 なお、当然ながらAV関連以外の機能を利用することも可能で、店頭モデルには「Microsoft Office Personal 2007」がプリインストール済みだ。VAIOオーナーメードモデルでは、PowerPoint 2007を追加したパックや、Office 2007 Professionalも選択肢として提供される。

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