ハイビジョン対応のビデオカメラでいつも困るのは、撮影した映像をどうやって保存するかだ。HDVカメラは約25Mbps、AVCHDカメラでも約15Mbpsという高いビットレートで映像を記録するため、大容量のHDDに映像をバックアップしてもすぐに容量不足になってしまう。かといって、DVD-Video形式でDVDに記録すると、せっかくのハイビジョン映像がSD画質に変換されてしまうため、実にもったいない。ハイビジョン対応のビデオカメラをきちんと活用するなら、Blu-ray Discドライブの導入を検討すべきだろう。
そこでチェックしたいのがBlu-ray Discドライブを搭載したPCだ。すでにBlu-ray Discドライブ搭載のPCは複数のメーカーから発売されているが、この夏ちょっとした話題を呼びそうなのが、液晶ディスプレイ一体型デスクトップPCの新モデル「VAIO type L VGC-LA83DB」だ。“ボードPC”を標榜する薄型ボディが個性的なVAIO type Lのハイエンドモデルで、実売価格は40万円前後と高価だが、春モデルに続いてBlu-ray Discドライブを搭載しているうえ、新たにDVDオーサリングソフトの「Click to DVD」がBlu-ray Disc対応版の「Click to DVD BD」へと進化している。
Click to DVD BDのプリインストールにより、HDVカメラやAVCHDカメラで撮影したハイビジョン映像をハイビジョンのまま、ほぼワンクリックでBlu-ray Discディスクに書き込めるようになった点は特筆したい。春モデルの「VAIO type L VGC-LA82DB」では、Blu-ray Disc用(BDAV形式)の「Ulead BD DiscRecorder for VAIO」とDVD用(DVD-Video形式)の「Click to DVD」を使い分ける必要があったが、夏モデルのVGC-LA83DBではClick to DVD BDだけでBlu-ray DiscもDVDもオーサリングできるようになったのだ。
さらに、Click to DVD BDは個人向けのBlu-ray Discオーサリングソフトとしてはおそらく初めてBDMV形式のオーサリングに対応した。Blu-ray Discの映像用フォーマットはDVD-Videoに相当するBDMVとDVD-VRに相当するBDAVがあるが、Ulead BD DiscRecorder for VAIOはBDAVしかサポートしていなかったため、DVD-Videoオーサリングソフトのような凝ったモーションメニューなどが作成できなかった。Click to DVD BDはBDMVに対応したことで、表現力豊かなモーションメニュー付きのBlu-ray Discを作成できるようになったわけだ。BDMVは本来BD-ROMメディア用の規格だが、昨年末にBD-ROM以外にBDMVを使うことが解禁された。
現状でClick to DVD BDは、DVD-Videoより高度なメニュー作成やネットワーク対応などのインタラクティブ機能を実現するBlu-ray Disc独自のBlu-ray Java(BD-J)には対応していないものの、DVD-Videoオーサリング並の環境がBlu-ray Discでもようやく整ったという点では、大きな前進と言えるだろう。
今回Click to DVD BDを利用して、HDVカメラで撮影した1080iの映像をBlu-ray Discに保存したところ、DVD-Videoを作るような感覚でBlu-ray Discを簡単にオーサリングできた。Click to DVDは以前から初心者でも手軽に使えるDVDオーサリングソフトとして定評があったが、Blu-ray Discでもその使い勝手は変わらない印象だ。
それでは、Click to DVD BDでHDVカメラの映像をBlu-ray Discに書き込むまでの手順を見ていこう。操作は基本的にウィザード形式で行われる。起動後のメニューでは、3つのモードがある「おまかせ作成」か、凝った編集が可能な「編集コース」から、目的に応じて作成方法を選べばよい。
HDVカメラで撮影した映像をメニュー画面付きのBlu-ray Discに保存するには、「おまかせ作成」メニューの「ビデオモード」を選択してから、「作成開始」ボタンをクリックするだけでよい。ビデオカメラの設定を「HDV」にし、「i.LINK DV変換」を「切」にしておけば、ハイビジョン画質で映像の取り込みからディスクへの書き込みまでをすべて自動で行なってくれる。テープの巻き戻しから行なう「テープの先頭から取り込む」のオプションがあるおかげで、文字通りおまかせで作成できる。
ただし、ディスク作成にかかる時間は長い。25Gバイトの1層BD-REメディアに1時間分のHDV映像を取り込んで記録したところ、作成までに約4時間20分かかった。処理時間の半分以上はBDMV形式への変換に必要な時間だ。ディスクを作成するときは、時間をたっぷりとっておく必要があるだろう。また、オーサリング時には使用する映像の容量とは別に、その3倍程度のハードディスク空き容量が必要になる点は覚えておきたい。
なお、作成されたBDMV形式のディスクは、Click to DVD BD搭載のVAIOやプレイステーション 3(ファームウェア1.6以上)で再生できる。ただし、現状でソニーのBDレコーダー「BDZ-V9/V7」では再生できないので注意が必要だ。
一方、おまかせ作成メニューの「シンプルメニューモード」を選択すれば、作品名を入力するだけでBDAV形式のディスクを作成できる。BDAV形式なのでモーションメニューなどは作成できないが、ハイビジョン映像を保存したBlu-ray Discを手っ取り早く作成したい場合、こちらを選ぶとよいだろう。シンプルメニューモードで作成したBDAV形式のディスクは、Click to DVD BD搭載のVAIO、プレイステーション 3、BDZ-V9/V7で再生できる。
PC上でしか再生しない、あるいは編集用の素材としてバックアップしておきたいという場合は、「おすすめ作成」の「HDディスクモード」がおすすめだ。このモードでは、HDVカメラの映像を生データのままディスクにデータとして記録できるので、作成時間が短くてすむ。シーンごとに分割した状態で記録し、インデックス用のHTMLも自動的に作成される仕組みだ。
ただし、HDディスクモードは、新しい映像を追記できない点は要注意だ。HDVカメラの場合、miniDVテープ1本分の映像しか記録できないので、Blu-ray Discの大容量(25Gバイトの1層メディアで2時間のHDV映像が記録可能)が無駄になりがちなのは残念だ。HDディスクモードでは、複数枚のDVDメディアに分割してハイビジョン映像を保存できるので、短い映像はDVDメディアに保存するのも手だ。4.7Gバイトの片面1層DVDに約20分のHDV映像が記録できる。
なお、Click to DVD BDではAVCHDカメラの映像もHDV形式へ変換せずに記録できるようになった(HDディスクモードは非対応)。AVCHDカメラの映像でBlu-ray Discを作成する場合、最初に別ソフトの「VAIO Content Importer」で映像を取り込むため、HDVカメラより手間がかかるものの、従来はAVCHD形式から一度HDV形式に変換する必要があり、画質劣化や膨大な変換時間が発生していたことを考えれば、使い勝手は着実に向上したと言える。
Blu-ray Discに記録したハイビジョン映像の画質に文句はない。プリインストールされている再生ソフト「WinDVD BD for VAIO」で再生したところ、撮影したままの高精細な映像が表示された。これを体験してしまうと、ハイビジョンの映像をDVD-Videoにダウンコンバートして保存していたことが、いかに画質劣化をともなうものだったか分かるだろう。また、チャプターメニューも用意されており、モーション付きのサムネイルから目的のシーンをすばやく探せるのが便利だ。
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