ベンチマークテストの結果は下表の通りで、VGN-AR73DB、VGN-AR53DBともに優れたパフォーマンスを示している。とくに上位モデルのVGN-AR73DBは、Windowsエクスペリエンスインデックスでメモリを除く項目が5.3〜5.9の好成績を獲得するなど、全体的な性能はもちろん、CPU、HDD、グラフィックスといった各パーツの評価も上々だ。
一方、グラフィックスチップであるGeForce 8600M GTの持つ動画再生支援機能が、実際どの程度有効なのかといった、数値に現れない部分にも注目が集まるところだ。そこで、VGN-AR73DBにプリインストールされた再生ソフト「WinDVD BD for VAIO」を使って市販のBlu-ray Discタイトルを再生してみた。
Blu-ray DiscはMPEG-2、VC-1、MPEG-4 AVC/H.264と3種類のコーデックが混在しているが、とくにMPEG-4 AVC/H.264のデータはデコードの負荷が大きく、PCでの再生は高性能なマシンでもハードルが高い。もっとも、今回手元にあった各コーデックのBD-Video映画タイトルを再生してみた限りでは、いずれもスムーズに再生でき、Blu-ray Discプレーヤーとしての利用も十分現実的と感じた。再生したのは、MPEG-2が「Underworld: Evolution」、MPEG-4 AVC/H.264が「南極物語 Eight Below」、VC-1が「フルメタル・ジャケット」だ。また、大画面TVなどでの鑑賞を想定したHDMI出力端子の存在も、ストレスなく再生可能な本製品でこそ生きてくるものといえるだろう。
なお、DSD Directの利用時など、CPUを長時間フルに利用していると冷却ファンの回転数が上がるため、風切り音が聞こえることもあったが、多くの場面で騒音は気にならないレベルに収まっていると感じた。
ここでは上位モデルのVGN-AR73DBを中心に、主にAV関連の機能を見てきたが、VAIO type Aは、17インチのワイド液晶ディスプレイや地上デジタル放送の視聴/録画機能など、他機種では味わえない機能が数多く盛り込まれた、フラッグシップと呼ぶにふさわしいノートPCといえる。そのぶん、とくに上位機種が非常に高価なのは、検討の際にマイナスポイントになるかもしれない。40万円前後という実売価格は、店頭販売されているVAIO type R masterの液晶ディスプレイ付属モデルよりも高価なのだ。
ただし、性能や機能の高さに加えて、使用しない時は簡単に片付けることができる、といったノートPCならではの利点を重視するのであれば、デスクトップ機であるtype R masterは候補に入らないと思われるし、地上デジタル放送の視聴や録画に加え、Blu-ray Discへの保存や市販のHDコンテンツのスムーズな再生、さらにはHD編集のワークフローをすべてこなす能力を備えた本製品は、頼もしい存在であることも確かだ。この意味で、今回ドッキングステーションへの対応が外されたのは残念だが、ソフトウェアを含めたトータルでの使い勝手は確実に向上しており、性能や機能に妥協したくないのであれば、検討の価値がある1台といえる。
選択肢をVAIOノートに絞った場合、Blu-ray Disc関連の機能や、地上デジタル放送の視聴/録画機能をあきらめれば、下位モデルやVAIO type FZという選択肢も浮上するが、両方がそろっていなければ地上デジタル放送のHDメディア保存はかなわないし、これらの製品では、市販のBlu-ray Discタイトルの再生は必ずしも快適とはいいがたい。ここはぜひ、最上位機種のVGN-AR73DB(VAIOオーナーメードモデルなら上位のベースモデル)を狙ってほしい。
とはいえ、例年の製品リリース間隔を考慮すると、そろそろVAIOの秋冬モデルが発表される時期に差しかかっている。Blu-ray Disc関連を含む下位モデルのスペックアップなど、ラインアップがどのように変更されるのか、その動向を確認したうえで、製品選びをするといいだろう。
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