日本ヒューレット・パッカード(HP)が発表した「HP TouchSmart PC」は、タッチパネル付き液晶ディスプレイを備えた一体型(All in One)のPCだ。日本ではデジタルTVチューナー内蔵モデルを中心に、液晶一体型のPCが普及しているが、このTouchSmart PCは現時点においてTVチューナーを内蔵していない。TouchSmart PCは、TVチューナーを内蔵した既存の「テレパソ」とは異なる方向性を持った製品だと言えそうだが、その狙いはどのあたりにあるのか? HPアジアパシフィック・パーソナルシステムズグループでコンシューマ・デスクトップ・ビジネスユニットのマーケティング・ディレクターをつとめるセレナ・ヤン(Serena Yong)氏にうかがった。
まずTouchSmart PCそのものについてだが、同社はこのTouchSmart PCを、HPが全世界に展開するコンシューマー向けデスクトップPCの中核となるものに位置付けているという。現在、コンシューマー向けデスクトップPCの用途としては、Webサイトのブラウズや検索を中心としたインターネット、音楽や映画、TV鑑賞といったエンターテインメントが大半を占める。このTouchSmart PCは、これらの基本部分を押さえながらも、さらにコミュニケーションツールとして販売していきたいとしている。
エンターテインメントという観点からすると、他社の液晶一体型PCが必ずといって用意しているデジタルTVチューナーを搭載していない点が目立つ。すでにTouchSmart PCが先行して販売されている地域(米国やシンガポールなど)では、本機にもデジタルTVチューナーが内蔵されており、日本での非搭載がどうにも気になってしまう。ヤン氏によると、日本向けのデジタルTVチューナーは現在、開発と検証を行っており、次のモデルには間に合わせたいとしている。本機の液晶ディスプレイは19インチワイドで、TVチューナーを持たない一体型PCとしては比較的大きめだが、その理由の1つは将来的にTVチューナーを内蔵する予定があるためだという。あまり小さい画面にしてしまうと、TV番組の視聴にふさわしくないからだ。
となると、デジタルTVチューナーの開発が完了するまで本機のリリースを待つこともできたのではないか。TVチューナーを持たないまま発売に踏み切った理由は何なのだろうか。
ヤン氏は、このTouchSmart PCを、一般的なPCではなく、コミュニケーションツールとして販売したいと述べた。一般的なコンシューマーPCの用途を否定するわけではないが、まずその前にコミュニケーションツールとして消費者にアピールしたいという。そのフックとなるのがタッチパネル液晶の採用だという。
本機の大きな特徴は、HPが自社開発した「HP SmartCenter」と呼ばれるアプリケーションソフトウェアにある。タッチスクリーン(タッチパネル)に直接触れることで操作可能で、付せんタイプのメモ帳、録音・録画した音声や動画によるメッセージ、さらには家族のスケジュール管理を行う「HP SmartCalendar」が標準で用意されている。つまり、子供が寝てしまった後に帰ってきたお父さんが、本機にアクセスすることで、子供たちからのメッセージをさまざまな形で受け取ることができるというものだ。
また本機の背部には、別売となる同社の小型フォトプリンタ「HP Photosmart A628」を設置するためのスペースが用意されているが、TouchSmart PCにはこの組合せをサポートした「HP PhotoSmart Touch」と呼ばれるソフトウェアがプリインストール済みだ。指1本で操作可能なこのアプリケーションを用いることで、家族の思い出を手軽にプリントすることができる。
TouchSmart PCは、こうした操作を誰もが――子供やPCの操作に慣熟していないお母さんでも可能なように、タッチスクリーンと大型のディスプレイを採用した。タッチ式の入力は、アップルのiPhoneやiPod touchにも採用されているように直感的だが、小さく高精細なディスプレイでは操作ミスに対するマージンが小さく、手書き文字の入力も窮屈になってしまい子供向きではない。
こういった用途を想定した本機が第一のターゲットとするのは、子供、それも5〜10歳の子供がいる家庭だという。そのような家庭の中心に据えられ、家族全員が活用できることが開発目標の1つだとしている。そのためにも、本機が採用するデュアルコアCPU(本機の場合はAMD Turion 64 X2)のパワーは不可欠。活用の中心となるHP SmartCenterが快適に利用できることがまず必要だとの判断である。
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