GIGABYTE EAGLESについて、GIGABYTEのPCシステムビジネスユニット事業部長であるホン・ウェン チー氏(以下、ホン氏)と、同プロダクトマネージャーのリー・ジュー ロン氏(以下、リー氏)、そしてマスタードギガの代表取締役社長リン・ホン ユー氏(以下、リン氏)の3人に話を聞いた。
――記者説明会で、GIGABYTE EAGLESをまず日本市場に投入し、その後、中国と韓国に進出すると発表していましたが、なぜ最初が日本で、なぜパートナーに九十九電機を選んだのでしょうか。
ホン氏 どうして日本なのか、という点については、日本のユーザーが新しい技術に非常に敏感で、ハイエンドのシステムを受け入れやすいと考えたからです。この製品の発売をどこから始めるかを社内で検討したときに、日本以外にないというのが答えでした。
販売チャネルとして九十九電機を選択したのは、eMachinesとGateway製品の取り扱いや、ハイエンドシステムの販売ですでに実績があったからです。もちろん、いままでのパートナーシップも理由の1つです。
――日本でいち早くリリースした理由は分かりました。でも、昨年11月に九十九電機が発売したG-Style(台湾GIGABYTEの子会社)の製品は、ほかの国々と比べて日本市場への投入がだいぶ遅かったようです。
リン氏 これは私からお答えしたほうがいいですね。かつてノートPCに関しては日本市場への参入が難しい状況でした。新しく入るためには、ハイエンドなもの、ユニークなものでなければ受け入れられなかった。そこでまずヨーロッパなどに供給していたのですが、確かに2、3年くらい遅れて、その時点で我々の製品がよくなっていたので、日本での販売に踏み切りました、それが昨年の11月です。先に2モデルを投入して最近1モデルを追加していますが、これらのモデルの重要なポイントは、底面から各コンポーネントにすぐにアクセスできる、BTOに最適化した製品だということです。
――目標の販売台数は達成できましたか? 月間で1000台だったと記憶しています。
リン氏 目標には少し足りませんでしたが、成果はあったと思います。
――今回の販売目標はシリーズで年間1万台を掲げていますね。ラインアップに並ぶ3モデルのうち、どのモデルがどのくらいの比率になると想定していますか?
リン氏 正直なところ、最上位は5%くらいだろうと思います。ミドルレンジが最も多くて50〜60%、一番下はその残り、という感じでしょうか。
――少なくとも日本にそれくらいは、高額なPCを買うゲームユーザーがいると考えている?
ホン氏 勘違いしてほしくないのは、GIGABYTE EAGLESがゲームのためだけに開発したモデルではないということです。その性能を体感できるものとして負荷の高いゲームは当然挙げられますが、そのゲーム自体を制作する企業や、グラフィックス系クリエイターなどの需要が日本市場にはあると見込んでいます。
――日本で発売するということに関して、九十九電機側から企画提案や仕様の要請はあったのでしょうか。プレスリリースの中に「共同開発」とありますが、具体的には?
ホン氏 技術的な部分に関するものではありませんが、例えばケースのデザインですね。日本市場で受け入れられるケースを検討するときには、我々では分かりませんので、九十九電機側の協力がありました。また、オーバークロック仕様という点についてもそうです。我々は最も高性能なPCを作ることは考えていましたが、それをオーバークロックによって実現するというアイデアは九十九電機側から出たものです。
――そのオーバークロックですが、似たようなコンセプトの製品としてデルを連想します。XPSを意識していますか?
ホン氏 いえ、我々が持つ技術をベースにしたものに比べて、彼らが達成できるパフォーマンスは低いのでそれはありません。もちろん“先輩”として参考にした部分はありますが。
――今日は「最高の」「最強の」という言葉を何度か耳にしました。これを文字通り受け取って、現時点でGIGABYTE EAGLESを超えるマシンは地球上に存在しないと思っていいのでしょうか。
ホン氏 コンシューマー向けのデスクトップPCの中では、というように、いくつかの限定は必要になりますが、そう考えていいと思います。
――なるほど。GIGABYTE EAGLESが現時点で“最強”だとしましょう。それで、それはいつまで続くのですか?
ホン氏 “いつまで続けたいか”“最高性能を追い続ける計画”という意味で回答すれば、当然、我々の製品に対して競合してくるメーカーはあると思いますが、今回採用したのとは違う別の技術も持っているので、常に優位でいられるように努力していきたいと思います。
――AMDプラットフォームを採用したモデルを投入する可能性もあるということですか?
ホン氏 そうですね、AMDと協議しています。すでにその計画はあります。
――GIGABYTEは日本でDIYユーザーによく知られています。PCを自分で作る人たちの中には、御社のマザーボードやグラフィックスカードを使用している人がいるでしょう。一方で今回の製品を見ると、「本当にハイエンドのマシンは自作では実現できない」というメッセージを感じました。
ホン氏 これが正しい例えになるかどうかは分かりませんが、(GIGABYTE EAGLESは)ベンツにとってのAMGの関係に似ているかもしれません。GIGABYTE EAGLESは、我々が最高の性能を追求してここまで実現できるのだ、ということをPCマニアの人に提示するものです。ベンツという素材を使ってさらに性能を追求するAMGは、すべての人にすすめられるわけではなく、やはりベンツが売れるのです。1つの考え方として、我々の技術がどこまで到達できるのかを示すという意味があります。
――次に、技術面について少しお聞かせください。GIGABYTE EAGLESの特徴の1つであるTurbo Keyですが、ほかのオーバークロック手段と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
リー氏 Turbo Keyはソフトウェア的にはBIOSのいくつかの部分を読み取る機能を持ちますが、最も重要なのはハードウェア的な部分で、これは単純にプロファイルを保存するものではなく、内部に組み込まれた電子回路によってCPUなどの電圧を強制的に、今回は120%の性能を発揮できるように、調節する点です。ソフトウェア的なアプローチでは複雑な設定を何度も繰り返す必要がありますが、Turbo Keyによって、GIGABYTEのテストチームが検証した最適な設定を、ユーザーは安定した形で利用できるわけです。
さらに重要なのは、Turbo Keyは一見するとただ1つのキーですが、ほかのパーツとの組み合わせ、つまりシステム全体の設計に関わってくるという点です。これは我々が品質を保証したパーツに付与する「G Logo」のスピリットに象徴されていますが、CPUだけでなく、メモリやHDDなどの各コンポーネント、そして放熱設計までも含めたうえで、120%の性能を保証するTurbo Keyがあるということです。
――液冷システムの採用もこれに関係しているわけですね。
リー氏 そうです。水冷自体は2001年から提唱されていますが、キーとなる技術が成熟していなかったために、一般のユーザーにとってはまだ不慣れな技術と言えます。例えばCPU接触点の液漏れなどクリアしていくべき問題があった。しかしいまは品質も高くなり、今後システムに多くのコアが搭載され、チップセットの熱も増大していくことを考えると、静音性の面でも水冷が最適だと考えました。
GIGABYTE EAGLESではCPUだけでなくノースブリッジまでカバーしています。また、自動車でも利用されているEPDMチューブや水冷液、安定して冷却液を循環させるピストン式のポンプなど、高品質な材料を使っています。
――話を少し戻します。Turbo Keyを着脱式にしたのはなぜですか?
リー氏 1つは、オーバークロック仕様のモデルであることを、見て分かりやすくしたかったからです。これはマーケティング的な意味合いもあるかもしれません。もう1つの大きな理由は、製品の出荷時に何度か(求めた性能が得られるかどうか)検証作業が入るので、再調整が必要になる場合があるこということです。着脱式によってTurbo Keyだけをチューニングできるのがメリットです。
――着脱式にすることで、Turbo Key自体に汎用性を持たせるという考えはあったのでしょうか。例えば今回は3.6GHzにオーバークロックしていますが、仮に“4GHzまでいける”となったときに、4GHz用のTurbo Keyを単体で販売するとか……。
リー氏 はっはっは。面白いアイデアをありがとうございます(笑)
――それでは最後に、GIGABYTE EAGLESに注目しているユーザーへ、メッセージをお願いします。
ホン氏 ユーザーのみなさんには、今回の製品でGIGABYTEがこれだけ高性能なシステムを作る技術を持っているのだということを是非知ってほしいですね。我々はこれからも全力を上げて高性能な製品をリリースしていきたいと考えています。
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