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ブラザーが放つ新ブランド“JUSTIO”の実力は!?――最上位機「MFC-9640CW」を試す全部入りA4カラーレーザー複合機(3/3 ページ)

» 2007年12月07日 16時50分 公開
[小川夏樹,ITmedia]
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プリンタとスキャナのドライバもおなじみの構成

 プリンタドライバは、ブラザー製品でおなじみのユーザーインタフェースを採用する。カラー印刷の設定項目が追加されたことを除けば、大きな変更点はない。タブとボタンの組み合わせによって各種設定項目を呼び出す仕組みだ。

 機能面では、カラートナーがなくなってもBkトナーの残量がある場合は「基本設定」タブから「モノクロ」に指定することで、モノクロモードで印刷できるなど、カラープリンタ向けの印刷機能が追加されている。印刷解像度を細かく指定することはできず、印刷品位は「きれい(2400dpi相当)」か「標準(600×600dpi)」からの選択となるが、カラー印刷時では明るさ、コントラスト、赤、緑、青、彩度を個別に調整可能だ。

 そのほか、拡大や縮小、ウォーターマーク印刷などの機能を持つ。「セキュリティ印刷」機能もサポートしており、他人に見せたくない文書や重要機密文書の出力の可否をユーザーごとにパスワードで管理できるなど、ビジネス利用を考慮した項目が用意される。

プリンタドライバの「基本設定」タブから、用紙サイズや部数などを設定する(写真=左)。「拡張機能」タブでは、印刷品位やセキュリティ印刷など、さまざまな設定が行える(写真=中央、右)

 スキャナ用のドライバもLAN経由での運用に対応している。ドライバのセットアップ時にネットワークスキャンを設定すると、本体でスキャンしたデータをそのままネットワーク経由で送ることが可能だ。TWAIN対応アプリケーションからネットワーク経由でスキャナ機能を使うこともできる。

 TWAINドライバの画面はビジネス利用に特化して必要最小限の設定項目だけが用意されている。設定項目が少ないため、操作は分かりやすいが、せっかくのCCDスキャナの性能を完全に引き出せるほどの設定項目が用意されていないのは少々残念だ。今後は、ドライバ画面のサイズ変更やスキャン枠の自動設定、原稿傾斜の自動判別に傾き補正などの機能を追加してほしい。

 なお、WIAを利用した場合は、Windows XP/VistaともOSに標準で用意されているスキャナとカメラウィザードを用いたスキャン操作になる。

スキャナドライバのセットアップ時にネットワークスキャンの設定が行える(写真=左)。TWAINドライバはシンプルな作りで、設定できる機能は少ない(写真=右)

その高速性は本物か? ベンチマークで検証する

 それでは、9640CWのパフォーマンスを検証していこう。印刷速度はモノクロ/カラー20ppm、コピー速度はモノクロ/カラー16cpmをうたっているが、実際に標準的な原稿のサンプルを用いて、プリントとコピーの速度をテストしてみた。

ベンチマークテストの結果(すべてA4印刷)
モノクロ出力(JEITA J1)
ファーストプリント 12.69秒
ファーストコピー(原稿台) 12.53秒
ファーストコピー(ADF) 13.93秒
20部プリント 66.24秒
20部プリント(ファーストプリント含めず) 59.47秒
16部コピー(原稿台) 69.05秒
16部コピー(ADF、ファーストコピー含めず) 57.52秒
カラー出力(JEITA J9)
ファーストプリント 16.49秒
ファーストコピー(原稿台) 15.46秒
ファーストコピー(ADF) 16.48秒
20部プリント 75.49秒
20部プリント(ファーストプリント含めず) 59.59秒
16部コピー(原稿台) 67.21秒
16部コピー(ADF、ファーストコピー含めず) 57.94秒
テストに使用したPCのスペック CPU:Athlon 64 3200+(2.0GHz)、メインメモリ:2Gバイト、HDD:Seagate Barracuda 7200.7(ST3160021A/160Gバイト)、OS:Windows Vista Ultimate

 プリントのテストは、Word 2007からJEITA JI(モノクロ)およびJ9(カラー)の電子協標準パターンを印刷し、その速度をストップウォッチで計測するというものだ。Word 2007の印刷画面で「OK」をクリックした瞬間から最後の用紙が排出されるまでの時間を5回計測し、その中間値を採用している。Word 2007の印刷処理にかかる時間を含めた出力となるため、PCの性能次第では差が出るだろう。プリンタドライバの印刷設定は「標準」の状態だ。

 コピーのテストは、プリントテストで出力したJEITA JI(モノクロ)およびJ9(カラー)の電子協標準パターンを原稿台またはADFにセットし、本体のコピーボタンを押した瞬間から最後の用紙が排出されるまでの時間を5回計測した。こちらも5回計測した中間値を採用している。

 結果は表を見てもらえば分かるが、ファーストプリントおよびファーストコピーを含めない速度では、公称値よりも高速な結果となった。特にコピー速度では16ppmを超える17ppmともいえる速度が出ており、その高速性に偽りはない。

 この検証で唯一気になったのがウォームアップの時間だ。例えば、長時間出力せず定着器などが常温程度に冷めてしまった場合には、12〜14秒ほど出力に時間が取られてしまう。スリープモードへの移行設定の間隔を短くしていると、復帰後に自己診断機能が働いてからウォームアップ処理となるため、出力速度が遅れる点には注意したい。

 スリープ時の消費電力は37ワット、通常待機時では100ワットと差が大きいため、利用状況に応じて設定を変更するなど工夫するのがよいだろう。

意外と安価なランニングコスト、買って損はないと思える完成度

 9640CWのテキスト印刷は、同社製のモノクロ機と同様、細かな文字も判別できる品質だ。ただしカラーに関しては、ドライバの設定で明度を10〜20%程度下げて出力したほうがメリハリの効いた画像になりそうだと感じた。また、今後の製品ではトナーの定着具合を微調整できるようにしてほしい(ファームウェアで改善できるならば、対応を求めたい)。

 もっとも、これだけのクオリティがあれば、一般的なビジネスには十分実用に耐えるカラー品質といえる。カラー出力でフォトプリンタのように高いクオリティを求めないのであれば、十分に満足できるだろう。

普通紙に「標準(600×600dpi)」設定で印刷したテキストを600dpiでスキャンしたもの。同社製のモノクロ機による出力品質と同様に満足できる。300万画素のデジタルカメラで撮影したデータを画像ソフト側で600dpi、A4サイズに設定し、普通紙に「標準(600×600dpi)」設定で出力したものを600dpiで取り込んだサンプル。トナーの乗りに若干のバラツキが見られるが、一般的なビジネス用途では困らないだけの品質は備えている

 最後にオプション類とランニングコストにも触れておこう。用意されるオプションは、増設記録紙トレイ「LT-100CL」にジャスティオ専用プリンタ台「PS-100W」程度と少ない。それだけ標準で搭載している機能が豊富ということにもなるが、消耗品では、カラー/モノクロで大容量トナーが用意されている。C/M/Yのカラートナーは標準(各7980円)で1500枚、Bkトナーは標準(6930円)で2500枚の印刷が可能になっている。

 一方、大容量トナー(カラーは各色1万6800円、Bkは1万500円)ではカラートナーが約4000枚、Bkトナーが約5000枚の出力が可能だ。特にBkトナーは印刷可能な枚数が倍になるにもかかわらず、ランニングコストをモノクロ2.7円/枚から2.1円/枚へと下げることができる。

 カラー出力時のランニングコストについても、標準トナー利用時は20.58円/枚(モノクロ標準トナー利用含む)、大容量トナー利用時には15.2円/枚(モノクロ大容量トナー利用含む)と安価になるので、大容量トナーをおすすめしたい。


 9640CWは、ブラザー工業のカラー対応モデル投入初期という段階にありながら、その完成度は高い。現在、SOHOや店舗などでFAX付きのA4カラーレーザー複合機を探しているならば、おすすめできる製品だ。

 それにしても、FAXとカラー印刷機能を搭載し、モノクロ/カラー20ppmのプリントエンジン、モノクロ/カラー16cpmのコピーエンジンを持つ複合機が10万円程度で購入できるとは、「よい時代になった」と思う。9640CWは、そう思わせるに値する製品で、今後の展開次第では、同社が狙う“カラーのブラザー”というイメージを十分浸透させられるだろう。

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