802.11nドラフト2.0無線LANルータの本命か!?――「AtermWR8500N」実力診断(前編)アンテナ内蔵で設置性アップ(1/2 ページ)

» 2008年01月21日 11時30分 公開
[織田薫,ITmedia]

スタイリッシュなアンテナ内蔵型の無線LANルータ

「AtermWR8500N」

 “スタイリッシュなIEEE802.11n対応無線LANルータが発売されたな”というのが、NECアクセステクニカの「AtermWR8500N」を最初に見たときの感想だ。

 MIMO技術を採用しているIEEE802.11nドラフト準拠の無線LANルータは3本のアンテナが必要になるため、本体が無骨で大きいものが多い。ボディ自体は小さくても、大きなアンテナが3本も飛び出していると、アンテナがじゃまになって望みの場所に設置できない場合もある。実際、筆者は「WZR-AMPG300NH」のユーザーだが、大きなアンテナに安心感を覚える半面、置き場所には少し困っている。

 その点、AtermWR8500Nは3本のアンテナが本体に内蔵されているため、非常にコンパクトで見た目にも洗練されている。実際に設置してみると分かるが、アンテナという突起物があるのとないのでは、設置の自由度がまったく違う。ボディ自体も35(幅)×128(奥行き)×160(高さ)ミリと小型化されており、アンテナを3本装備している同社の「AtermWR8400N」と比較した場合、容積比は約50%となっている。

 また、WAN/LANインタフェースにギガビットイーサネット(1000BASE-T)を採用しているのも特徴の1つだ。AtermWR8400NはLANインタフェースが100BASE-TXだったため、伝送速度で比較すると、無線LANよりも有線LANの方が遅いというアンバランスなイメージがあったが、AtermWR8500Nではこの問題が解消されている。

 家庭内LANでギガビットイーサネットを利用するために、無線LANルータのほかにハブを導入している人も少なくないと思うが、AtermWR8500Nを利用すればギガビットイーサネットのネットワークを手軽に構築できるだろう。

AtermWR8500Nの本体サイズは、突起物を含まない状態で約35(幅)×128(奥行き)×160(高さ)ミリで、AtermWR8400Nの41(幅)×197(奥行き)×174(高さ)ミリと比較すると、約50%も小さい。アンテナが内蔵されているため、設置時にかさばらない

 省スペース性と有線LANの伝送速度を強化したAtermWR8500Nだが、アンテナを内蔵したことにより、無線LANの性能に問題が生じていないかどうかが気になるところだ。今回は前後編に分けて、AtermWR8500Nの性能をチェックするために、同レベルの製品と比較検証していく。比較対象としては、同社の一世代前の製品であるAtermWR8400NとバッファローのWZR-AMPG300NHを選択した。いずれもIEEE802.11nのドラフト2.0に準拠しており、40MHzの帯域幅を利用して最大通信速度300Mbpsを実現する製品だ。

 なお、IEEE802.11nの概要などについては、以前のレビュー記事「我が家の無線が100Mbpsを超える日――802.11nドラフト2.0の無線LANルータ2機種を試す」を参照してほしい。

IEEE802.11nドラフト2.0、ギガビットイーサネットに対応

 今回取り上げる「AtermWR8500Nワイヤレスカードセット」は、IEEE802.11nのドラフト2.0に準拠した製品で、無線ブロードバンドルータのAtermWR8500Nと、CardBus用無線子機「AtermWL300NC」のセットだ。もちろん、CardBus用無線子機がセットになっていない単体モデルも用意されており、5000円ほど安い価格で販売されている。ワイヤレスカードセットのCardBus用無線子機は、従来製品の「AtermWR8400Nワイヤレスカードセット」と変わらない。

 価格はオープンだが、量販店での実売価格はAtermWR8500Nワイヤレスカードセットが2万8000円前後、比較対象製品の無線子機セットモデルであるAtermWR8400Nワイヤレスカードセットが2万3000円前後、「WZR-AMPG300NH/P」が3万3000円前後となっている。機能比較は後編で行うが、ほとんど同じ機能を備えたWZR-AMPG300NH/Pより安く、価格競争力は十分にある。

 ちなみに、以前のレビュー記事を掲載したときの価格は、WZR-AMPG300NH/Pが3万7000円前後、AtermWR8400Nワイヤレスカードセットが3万円前後だった。IEEE802.11nドラフト2.0に準拠した無線LANルータの価格が全体的に下がってきていることが伺える。

左から、本体の前面、側面、背面。インジケータの下に「らくらくスタート」ボタンを備えている。4つのLANポートとWANポートは、いずれも1000BASE-Tに対応した

 ネットワーク機能は、デュアルチャネルに対応したIEEE802.11nドラフト2.0準拠の無線LAN(送信3×受信3の2ストリーム)と、ギガビットイーサネットに対応したWAN/LANインタフェースを搭載しており、現在家庭用の無線LANルータに搭載可能な機能をほとんど網羅しているといってよいだろう。

 無線LAN機能は、2.4GHz帯でも5GHz帯でも300Mbpsの通信速度を実現できる。5GHz帯の通信はAtermWR8400Nと同様に、屋内利用に制限されたW52/W53だけでなく、屋外利用も可能なW56に対応しているが、デュアルチャネルが使えるのはW52に限られる。もちろん、IEEE802.11a/g/bにも対応しているので、従来のノートPCやAV機器も無線LANで接続可能だ。ただし、2.4GHzと5GHzの同時利用はできず、切り替え式となる。

 実効スループットの公称値は、無線LANが181Mbps、有線LANが767Mbpsと高速だ。比較対象として用意したAtermWR8400Nは無線LANが90Mbps、有線LANが92Mbps、WZR-AMPG300NHは無線LANが153Mbpsとなっている。公称値ではAtermWR8500Nが一番速いが、電波干渉や距離による速度低下のない環境における計測値なので、実環境における速度は後編のベンチマークテストで検証する。

ボディは横置きでの設置も可能だ(写真=左)。無線LANカードの「AtermWL300NC」は、外形寸法が54(幅)×121(奥行き)×12(高さ)ミリ、重量が約50グラムだ(写真=中央)。ACアダプタは左がAtermWR8400Nのもので、右がAtermWR8500Nのもの(写真=右)。大型化したが、電源ケーブルが伸びるタイプになったため、空きコンセントをじゃましない

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