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我が家の無線が100Mbpsを超える日――802.11nドラフト2.0の無線LANルータ2機種を試す人気モデル2台をじっくり攻略(1/6 ページ)

» 2007年09月11日 17時50分 公開
[織田薫,ITmedia]

法改正により最大300Mbpsの無線LANルータが登場

バッファロー「WZR-AMPG300NH」(写真=左)とNECアクセステクニカ「AtermWR8400N」(写真=右)

 日本では、無線LAN用の周波数帯域幅が法律で制限されているため、海外に比べて、IEEE802.11n対応機器の通信速度が低速(最大130〜144Mbps程度)だった。しかし、総務省が2007年6月28日に実施した電波法施行規則などの一部改正により、状況は大きく変わる。無線通信では1チャネルあたり20MHz幅の周波数帯を用いていたが、これが2チャネルに拡張され、デュアルチャネルでの通信が可能になったのだ。

 無線LANの周波数帯域幅を2倍使えるということは、単純に考えると通信速度を2倍にできるということ。実際、この夏は40MHzの帯域幅に対応した製品が発売されたが、すべて最大300Mbpsの通信速度(理論値)をうたっている。これは驚異的な数字だ。

 そこで今回はIEEE802.11nのドラフト版に準拠し、40MHzの帯域幅を利用したデュアルチャネル通信が可能な無線LANルータとして、バッファロー「WZR-AMPG300NH」とNECアクセステクニカ「AtermWR8400N」の2機種を入手して実際に使ってみた。

 周知の通り、無線LANの場合は理論値としての通信速度に比べて実際のスループットがかなり劣るわけだが、この2製品は100BASE-TXの有線LANをも上回る高速通信を実現できるポテンシャルを秘めている。

IEEE802.11nの正式承認は2008年以降に持ち越し

「Wi-Fi CERTIFIED 802.11n Draft 2.0」のロゴ

 各製品の紹介に入る前に、IEEE802.11nについて少しおさらいしておこう。IEEE802.11nは、次世代無線LANの規格だ。その特徴は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術やMIMOに対応した物理層の変調方式を採用し、帯域幅を拡大するなどの工夫により、最大300Mbpsの通信速度を実現したことにある。IEEE802.11nでは理論上600MHzの通信速度が得られるが、技術的な問題もあり、現在の製品では300Mbpsが上限となっている。利用する周波数帯は、2.4GHz帯および5GHz帯だ。2.4GHz帯を使うIEEE802.11g/bと、5GHz帯を使うIEEE802.11aとの後方互換性も確保されている。

 IEEE802.11nは、IEEE(米国電気電子学会)によって策定作業が進められており、ドラフト1.0が2006年1月に、ドラフト2.0が2007年3月に承認されている。ドラフト版ではない正式な承認は当初の計画から随分と遅れており、2008年〜2009年にずれ込む模様だ。しかし、市場にはすでにIEEE802.11nドラフト準拠をうたう製品が多数発売され、それらの相互接続性が不明であるなど、ユーザーの混乱を招くような事態になっている。

 そこで無線LANの業界団体であるWi-Fiアライアンスは、2007年6月25日からドラフト2.0に基づいた製品の認証作業を開始した。ドラフト2.0の認証機器には「Wi-Fi CERTIFIED 802.11n Draft 2.0」のロゴが付与され、同認証ロゴを取得した製品間での相互接続性が保証される。まだまだドラフト2.0準拠の製品は少ないが、今後は同認定ロゴの有無がユーザーにとって相互接続性を見極めるポイントになるだろう。

 なお、IEEE802.11nはドラフト2.0で基本的な仕様が定まったという。そのため、無線LANチップセットや無線LAN機器のベンダーは「IEEE802.11nのドラフト2.0製品なら、ファームウェアのアップグレードで正式版に適合できるだろう」と述べている。とはいえ、ドラフト2.0ベースの製品がIEEE802.11nの正式版に対応できるかどうかは確定していない。この点は覚えておく必要がある。

大型のボディに高機能を満載したWZR-AMPG300NH

 それでは、バッファローのWZR-AMPG300NHから見ていこう。今回は無線LANルータ単体ではなく、CardBus用(PCカード型)無線子機「WLI-CB-AMG300N」がセットになったモデル「WZR-AMPG300NH/P」を用意した。300Mbpsで通信を行うためには、無線LANルータだけでなくクライアント側も同一の規格をサポートしている必要があるため、今すぐ300Mbpsの無線LANを使いたいという人はセットモデルを選ぶことになる。

 標準価格は、セットのWZR-AMPG300NH/Pが4万2210円、ルータのWZR-AMPG300NHが3万3285円、カードのWLI-CB-AMG300Nが1万2075円(いずれも税込み)。量販店での実売価格は、WZR-AMPG300NH/Pが3万7000円前後、WZR-AMPG300NHが3万円前後だ。同社のハイエンドモデルだけあって価格は高いが、それに見合った高機能を備えている。ルータにしては大型の本体と巨大な着脱式アンテナは、他製品にない存在感だ。

WZR-AMPG300NHの外形寸法は、アンテナを含まない状態で50(幅)×175(奥行き)×210(高さ)ミリと、一般的な無線LANルータに比べて大きいため、購入前に置き場所を考えておいたほうがよい。巨大な3本のアンテナはケーブルで接続されており、本体と別々に設置するか、本体に装着して利用するかが選べる(写真=左、中央)。本体は縦置き、横置きの両方が可能だ。電源は小型のACアダプタで供給する(写真=右)

無線LANカードのWLI-CB-AMG300Nは、11a/g/bの無線LAN規格にも対応する。外形寸法は54(幅)×123(奥行き)×5〜9.3(高さ)ミリ、重量は約42グラムで、一般的な無線LANカードに比べてカードスロットからはみ出す部分が多い

 前述の通り、WZR-AMPG300NH最大の特徴は、40MHzの帯域幅を利用した最大300Mbpsの通信速度だ。従来のIEEE802.11nドラフト製品は、2.4GHz帯しかサポートしていないものが多かったが、WZR-AMPG300NHは2.4GHz帯と5GHz帯の両方が利用でき、しかも同時通信が行える。パフォーマンスを優先するなら、2.4GHz帯に比べて利用できるチャネル数に余裕があり、ほかの通信の干渉を避けやすい5GHz帯を使ったほうがよいだろう。

 ただし、5GHz帯については屋内で利用できるW52(5.2GHz帯)とW53(5.3GHz帯)のみの対応で、屋内外で利用できるW56(5.6GHz帯)には非対応だ。W56は2007年1月に新たに開放されたばかりの帯域で、5GHz帯の中でもとくにすいているため、これを利用できないのは惜しまれる。

 実効スループットは公称153Mbpsをうたっているが、実際の通信速度については後述のベンチマークテストで検証していく。WZR-AMPG300NHはIEEE802.11nドラフトに準拠した製品だが、IEEE802.11a/g/bの同時接続が可能だ。MIMO技術を採用して3本のアンテナを搭載しているため、従来規格の無線LANクライアントを利用している場合でも安定した通信が行える。3本のアンテナは、データ送信時に2本を使い、データ受信時に3本を同時に使う仕組みだ。

 もう1つ、WZR-AMPG300NHの大きな特徴として、WAN/LAN側のイーサネットインタフェースがギガビットイーサネット(1000BASE-T)に対応している点は見逃せない。ギガビットイーサネットを利用するために、無線LANルータのほかにハブを導入している人も少なくないと思うが、本製品を利用すればギガビットイーサネットのネットワークを簡単に構築できる。

正面にAOSSボタンと各種インジケータを配置している(写真=左)。WAN/LAN側のポートはギガビットイーサネットに準拠(写真=右)

 ちなみに、WZR-AMPG300NHは発売時に802.11nドラフト2.0準拠をうたっていなかった(単にドラフト準拠としていた)が、7月12日に「Wi-Fi CERTIFIED 802.11n Draft 2.0」の認定を国内で初めて取得したと告知。近日公開される予定のファームウェアアップデートによって、正式にWi-Fi CERTIFIEDとなる。

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