考えれば常に持ち歩くことを前提に考えられたモバイルPCの本体に、オフィス環境だからといって、周辺機器のケーブルが大量に突き刺さることはおかしな現象だ。本来ならモバイル環境での軽快さと、デスクトップ環境での拡張性を同時に実現するモノが「ドッキングステーション」や「ポートリプリケーター」と呼ばれる集約ハードだったはずだ。ドッキングステーションがその全盛期を迎えていたのは今から数年前だったろう。時代の変化とともに、モバイルPC系の拡張性は、必要性に迫られ明確な意図を持った一部のユーザーを除けば徐々にその必要性を低下させているのだろう。
かつては主役ながらも消滅への道を歩みだしているPCカードスロットや、今はほとんどその姿を消したRS-232Cやパラレルポートがその好例だ。デジカメやデジタルオーディオプレーヤーを代表選手とするデジタルAV機器とPCとのデータのやり取りは、多くの自称標準の世界からUSBとSDカードに集約されつつあり、モバイルPCに多種多様な拡張性を求めない時代もそこまで来ている。今、すべてのメーカーのモバイルPCに共通のインタフェースはUSBだけになりつつあると言っても過言ではないだろう。
筆者はMacBook Airのたった1つの貴重なUSBポートをごく自然に無理することなく使えている。事前に購入した持ち運び用のコンパクトなUSBハブも今のところ出番はない。筆者の環境では、たった1個のUSBポートを競い合う日常的に必要なモノは、デジカメ撮影データの入ったSDカード、携帯電話、iPod Touch、何個も所持しているUSBメモリー、高速のHSDPA USBモデムくらい。これらが先を争ってUSBポートを競い合うシーンは考えにくい。
USBポートを使用する外付けDVDドライブ「MacBook Air Super Drive」もMacBook Airと同時に購入したが、活躍シーンはMacBook AirでDVDムービーを再生する時くらいのもの。リモコンも出番はこの時だけ。アプリケーション導入のためだけならわざわざSuper Driveを利用せずとも、他のPCに内蔵するDVDドライブからワイヤレスLAN経由で問題なくできてしまう。
やはりUSBポートが1個では、USBモデム利用中にUSBメモリーが使えないとか、USBメモリー同士のコピーができないとか、DVDムービーを見ている間には携帯電話のアドレスバックアップやスケジュール同期ができない……などなど、考えればいくらでも不便そうな場面は思いつく。しかし、筆者のようにヒマな毎日を送っていると、あまりクリティカルなシーンは思いつかない。周辺機器の拡張性問題よりも、むしろ使い慣れた(Windowsの)アプリケーションをMacbook Airでどのように処理するかの方が難しそうと考えるのが普通だ。
筆者は国立大学の芸術系学部で年間数科目の授業を持つほか、複数企業のコンサルタントや顧問、そして気のあった友人たちと、自分たちが楽しむための商品企画からプロダクトデザイン、マーケティングまでをやり、その合間をぬって原稿を書いている。それらすべてをスムーズに行うためには、モバイルPCとどこでもインターネットに接続できる環境、そしてオフィス系ソフトはどうしても無視できない存在だ。
ビジネスの世界ではWindows系パソコンを約90%以上のビジネスピープルが使用しており、その多くはマイクロソフトのOfficeを活用している。筆者もメインにはOfficeを使用していたが、ここしばらく4万9800円の超低価格PC「Eee PC」では、PC本体に見合う同じく低価格のKingSoft製のOffice互換ソフト「キングソフトオフィス」を使っている。エクセルマニアではない筆者程度の使い方では、互換性はかなり高く、けい線や一部の見栄え以外ではその差はほとんど感じなかった。
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