Netbookも爆速に──費用対効果に優れたSanDiskの新しいストレージ技術

» 2008年04月25日 10時30分 公開
[石井英男,ITmedia]

 SanDiskは、SDメモリーカードやSSDといったフラッシュメモリを利用したストレージデバイスのメーカーとして知られている。そのSanDiskが開発した新しいコンセプトの技術が「Vaulter Disk」だ。2008年1月に開催された2008 International CESのマスコミ向けプレビュー「CES Unveiled」で、「ベスト・オブ・イノベーション2008」を受賞するなど、注目を集めている。

 先日、Vaulter Diskの担当者であるドリー・オレン氏(米SanDiskコンピューティングソリューションズディビジョン プロダクトマーケティング・ディレクター)にインタビューする機会を得たので、この新しい技術の仕組みや利点などについて紹介していきたい。

キャッシュでもHDDレスでもない「OS Drive」という新たなコンセプト

2008 International CESのCES Unveiledで展示されていた「Vaulter Disk」(写真中央)

 最新のPCを使っていても、OSやアプリケーションの起動が遅いと感じることは多い。その原因の1つが、HDDからのファイルの読み込みにかかる時間だ。HDDは、回転するディスクにデータを記録するデバイスであり、CPUやメモリなどに比べると、動作速度が遅い。特に、ランダムアクセスは苦手とする。

 Vaulter Diskは、フラッシュメモリを利用して、OSやアプリケーションの起動を高速化するための技術といわれている。フラッシュメモリを利用して、OSやアプリケーションの起動を高速化する技術には、これまで大きく分けて2種類の方法があった。1つは、フラッシュメモリをHDDのキャッシュとして利用する方法で、Windows Vistaの新機能である「ReadyBoost」や「ReadyDrive」、インテルの「Intel Turbo Memory」などがその代表になる。もう1つの方法が、フラッシュメモリをHDDの代わりとして使うSSDだ。

 フラッシュメモリをキャッシュとして使う方法ではコストは抑えられるが、キャッシングされていないデータにアクセスする場合は効果がないため、すべての局面で高速化されるわけではない。SSDは、機械的に動作する部分がないため、HDDに比べてランダムアクセスが高速であり、OSやアプリケーションの起動時間などの短縮に大きな効果を発揮する。しかし、SSDは、容量当たりの単価がHDDよりも高く、容量にも制限がある(現時点では64〜128Gバイト程度が主流)。

 Vaulter Diskは、キャッシュでもHDDレスでもない、「OS Drive」という新たなコンセプトに基づく製品であり、HDDと併用することが前提となっている。「OS専用のSSD」と表現してもいいだろう。Vaulter Diskの容量は、8/12/16Gバイトの3種類が用意されるが、16Gバイト、または12Gバイトあれば、Windows Vistaのシステムファイルをほぼ格納できる。

SanDiskがイメージするVaulter Diskの位置づけ。単体で使うのではなくHDDを補完し、時間のかかるOSやアプリケーションの起動時間の短縮に貢献する
Vaulter Diskは、Mini PCI Expressモジュールとして提供される。Intel Turbo Memoryと異なり、インテル以外のチップセットを搭載したノートPCでも利用可能だ

非力なノートPCでも体感性能を「安価」に向上

 OSの起動時には、数多くのDLLファイルが読み込まれるため、ランダムアクセスが遅いHDDからの起動には時間がかかるが、ランダムアクセスが高速なVaulter Diskから起動すれば、より短時間で起動できる。Vaulter Diskは、あくまでOS専用ドライブであり、アプリケーションやユーザーデータなどは、容量が大きなHDDに保存することになる(スワップファイルもHDD上に作成される)。

 「Vaulter DiskとHDDの組み合わせは、HDDの大容量とSSDの高速性を両立させることが可能であり、いわばHDDとSSDの“いいとこ取り”を実現するソリューションです」とオレン氏は説明する。OSだけでなく、アプリケーションの起動時にも必要なDLLファイルが読み込まれるため、Vaulter Diskによって高速化が可能だ。SanDiskの資料によると、Vaulter Diskを搭載することで、Windows Vistaの起動速度が44秒から29秒へ短縮されたほか、SYSmark2007のスコア(User Scenario)も74から93に向上したという。

 Vaulter Diskは、Mini PCI Expressモジュールとして提供され、Serial ATA経由で接続されるHDDとはインタフェースが異なる。そのため、HDDとの並行動作が可能であり、ファイルアクセスのスループットを向上できるという。ただし、Vaulter Diskの利用には、BIOS側での対応やOSイメージのカスタマイズなどが必要であり、ユーザーが後から自分でノートPCにVaulter Diskを追加することはできない(パーツショップなどでVaulter Diskモジュールが販売される予定もない)。

Vaulter Diskはコンシューマー製品に最適なソリューション

 SSDとの棲み分けについて、オレン氏は「Vaulter Diskはコンシューマー製品に最適なソリューションであり、SSDは当面、企業とハイエンド製品向けに提供されます」という考えを示した。Vaulter DiskとHDDを組み合わせたシステムより、SSDを搭載したシステムがパフォーマンス的には有利だが、価格もかなり上がってしまう。また、容量もVaulter Disk+HDDのほうがより多く確保できるため、写真や動画などのサイズの大きなデータを保存するには向いている。一方、企業ユーザーは、利用するアプリケーションも限定されており、大容量ストレージは不要なことが多い。

 Vaulter Diskは、2008年前半に量産出荷が開始される予定であり、現在PCメーカーとの商談を進めている最中とのことだ。価格も公表されていないが、現在のフラッシュメモリの価格から考えると、16Gバイトのモジュールでもそう高価にはならないだろう。Vaulter Diskは、SSDのコストが下がり、広く普及するまでの過渡的な技術という見方もあるが、低コストでシステムのボトルネックを解消することが可能なソリューションとしては、現実的で優れている。Vaulter Disk搭載ノートPCが各社から登場することを期待したい。

,,米SanDiskコンピューティングソリューションズディビジョン プロダクトマーケティング・ディレクターのドリー・オレン氏。Vaulter DiskやSSDなどのマーケティングを担当する

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