中国で“デュアルコア”なCeleronを探す……はずだった(後編)山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2008年04月28日 11時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 筆者の所有するレノボ製PCを、インテルが中国先行でリリースしたCeleron Dual-Core E1200をベースにアップグレードしようとした。だが、ここはアキバではなく、中国の内陸都市。「そんなものはないよ〜」と店員にいわれただけでなく、「Athlonどうだい?」と売り込まれた。ええぃ、ならば、オーバークロック大好きな中国人に絶大なる支持を受けたAthlon 64 X2 5000+ Black Editionをベースにアップグレードしようかい、と思ったいきさつは、前々回の記事で紹介したとおりだ。

中国のショップブランドPC購入術はひと味違う

 電脳街にあるビル1つだけでも、その中でショップブランドPCを販売する店は多数ある。電脳街全体で正確な数を把握するのは困難を極めるだろう。各店舗を見ると、店内にはガラス製の円卓を囲んで店員と客が時間をかけて交渉している。こういう方法でPCを購入するのでは、電脳街の全部を巡って「最適な店で最適な価格の最適なPC」を購入するのは1日ではすまなくなる。しかもアキバと違って「老舗」「こだわりの店」といった店の評価は“なぜか”伝わってこない。

 筆者は電脳街の全域を踏査して見つけた、店内がAMD一色で、店頭にAthlon 64 X2 5000+ Black Editionの広告を張ってたショップに突撃を敢行した。こういう店の決めかたはあくまで筆者のような「日本人的感覚」だそうで、中国人の感覚とは異なっているのでその点ご了承のほど。

 筆者が飛び込んだ店舗は、店内にAMD製CPUがズラリと並び、Athlonが搭載されたPCのサンプルが4台ほど並んでいた。サンプルのコンロトールパネルからシステムのプロパティをチェックすると、Athlon 64 X2 4200〜5000+ばかりだ。所得水準が低い中国内陸だからか、Phenomを搭載したPCを見かけないのは当然として、あってしかるべき「一般人民のためのCPU」であるSempronを搭載するPCもない。ただ、ショーケースに並べられているCPU単体にはAthlon 64 X2(しかも黒箱の割合が結構高い)に混じって、Phenomが置かれている。

 ちなみにサンプルに導入されていたOSはみなWindows XPだった。レノボなどのメーカー製PCの販売代理店でこそ、売られているのはWindows Vistaであるが、電脳街のショップに展示されているほとんどのPCのOSは依然としてWindows XPだ。

店内にはサンプルPCとパーツが展示されている
AMDの販売代理店らしく、陳列されているCPUはAthlonファミリーで占められていた

海千山千の中華PCショップの店員さんと接触する

 店に近づくと「歓迎光臨!何がほしいのですか?」と店員が声をかけてくる。店員は若い男女の2人だ。筆者はレノボ製PCを彼らの前に置いて「これの中身をAthlon 64 X2 5000+ Black Editionに換えたいのよね。夏でも3.0GHzで常用できるような構成で。というか、ここで換える時点でオーバークロックしてほしいな〜」と、自作PCユーザーの常識である「自己責任」からかけ離れた無茶なお願いをしてみると、「いいよ。没問題」と、「快諾」というより「それが当然」といわんばかりの返事が返ってきた。店員は「まあまあ、とりあえずここに座って」と筆者を座らせた。ああ、いよいよ「円卓ビジネス」が始まるのだ。

 男性の店員は筆者のPCの中身をチェックして、女性店員はその作業を見守る。「電源は……、無理だね。買う必要あるね……、それに、CPUのクーラーにファンが付いていないからこれも必要だ」というと、表に“Yeston”というマザーボードメーカーの広告が描かれたチラシを裏返し、「CPU」、「主板」(マザーボード)、「内存」(メモリ)、「硬盤」(HDD)などなどいろいろ書かれた表に、購入するものとその価格を書き込んでいる。それはまるで病院のカルテのようだ。

 「CPUが黒箱だから、これこれ……っと」とつぶやきながら男性の店員はマザーボードを選んでいる。この店はAMDの販売店であると同時に、Yestonというパーツベンダーの販売店であるようで、問答無用で日本では聞いたこともないマザーボードを選ばざるを得なかった。知らないベンダーのマザーボードに不安を感じた筆者は「いま動いているサンプルでこれと同じマザーを搭載しているものはありますか? オーバークロックはできますか?」と質問すると、男性店員は「もちろん。黒箱に最適化されたマザーボードだと“ベンダーはいっている:”よ」と、サンプルの中身を見せたあと、再起動してBIOS画面を表示してくれた。ああ、なんて親切な店員さん。疑ってごめんよ……と、そこまではよかったが、彼は英語が読めなかった。「えーっと……、どれだっけかな。いやー、実はBIOS触ったことないんだ。はっはっは」と客を一気に不安にさせる回答をしてくれた。

 この連載でも何度か紹介しているように、中国で買い物をするなら「値引き」を忘れてはならない。新春の家電購入を手伝ってくれた現地の知人が今回も同行して店員と交渉してくれた。店員は「これは規定の値段ですから……」となかなか値引きに応じてくれなかったが、あの手この手で説得し、黒箱CPU(1万350円。1元=15円で計算。以下同じ)とCPUクーラー(900円)、Kingstoneの1Gバイトメモリ(2250円)×2、マザーボード(6450円)+電源(3450円)の合わせて2万5650円を2万3700円まで値引きできた。筆者なら交渉途中でくじけてしまうような手ごわい相手だったが、中国人の粘りたるや、たいしたものである。

カルテにパーツとその値段を書き込む店員
筆者が値段交渉をすると(日本で生まれ育ったゆえか)あっという間に妥協してしまう

 筆者は、その傍らで店の売り上げを聞いていた。詳しい内情はさすがに教えてくれなかったが、いま最も売れているCPUはやはりAthlon 64 X2 5000+ Black Editionで、それを搭載したショップブランドPCだけで1日に7、8台は売れているそうだ。ショップPC全体では4000元台(6万〜7万5000円)のものが売れ筋だという。

 いやはや、困難を極めた(そして時間もかかった)_交渉が成立して購入が決まった直後に、女性店員はことなげに言った。

「これからPCを組み立てるために本店に行きましょう」

筆者のPCを本店に持っていく。若い女性に持たせちゃってごめんね!

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