ソニー発“ネット世代の写真立て”――Canvas Online「CP1」を試す眠った写真をフル活用(3/3 ページ)

» 2008年05月09日 11時15分 公開
[田中拓也,ITmedia]
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CP1を使ってみて、いろいろと気になったこと

 デジタルフォトフレームというと、やはり気になるのは液晶ディスプレイの視認性だ。試しに、作業机の上に置いてPCを使いながらスライドショーを流したり、場所をリビングに移して少し離れた場所から見るなど、いろいろな設置環境で使ってみたが、視野角が広いため、どこに置いても不自由を感じることはほとんどなかった。

 また、インフォメーションの文字も2〜3メートル離れた場所からはっきり見ることができた。800×480ドット表示の7インチワイド液晶パネルは画面サイズと解像度のバランスもよく精細さがある表示で、1677万色表示の対応によりグラデーションなどの再現性もなかなかのものだ。多機能なデジタルフォトフレームとして、表示品質に不満はない。

ファイルサイズが大きいと、サムネイルが表示されるまでに時間がかかる

 一方、使ってみてストレスを感じたのは操作のレスポンスだ。メニューの動作全般がのんびりしているうえ、昨今の1000万画素クラスのデジカメで撮影した大量の写真データをメモリカードやネットワーク経由で表示させようとすると、かなりの時間待たされることが多い。CP1のCPUはi.MX31(ARM11 400MHz)を採用しており、高解像度の画像データをサクサク処理するには力不足の感がある。また、動画ファイルの再生に対応していないのも評価が分かれるところだろう。

 とはいえ、CP1の基本はあくまで“写真立て”なので、PCやメディアプレーヤーほどユーザーが能動的に操作することはなく、写真はずっと表示したままユーザーは本体にあまり手を触れないというのが想定される利用スタイルだ。CP1は多機能なだけに、もっと速く動作してほしいという願望はあるが、現状のデジタルフォトフレームにそこまでの高性能を求めるのは少々酷かもしれない。

 使い勝手に関しては、本体を離れた場所から操作できるリモコンの付属がありがたかった。ただ、価格を考えると仕方ないのだが、CP1に搭載された機能やメニューのデザインを考えると、タッチパネルはぜひ搭載してほしかったところだ。

ソフトキーボードをリモコンで操作するのは楽ではない

 例えば、RSSを登録するのにURLやキーワードを画面上のソフトキーボードで入力しなければならないが、リモコンでいちいち操作するのは非常に骨が折れる。またネットワークの設定にしろ、写真表示やブラウザの操作など、あらゆる場面でリモコンよりもタッチパネルのほうが、より直感的に操作できたろうと感じることが多かった。液晶ディスプレイをタッチパネル式にすると、表示品質が損なわれるなどの問題はあるが、後継機では検討してほしい。

 細かいところでは、個人的な好みだが、「フォト+インフォ」フレームで表示されるアナログ時計のデザインがあまりにもシンプルすぎて、好きになれなかった。もう1ついわせてもらうなら、本体をバッテリーパックで駆動できると、CP1の無線LANによるネットワーク機能やWebブラウズ機能がより生きてくるのではないだろうか。標準搭載とはいわないまでも、オプションでバッテリー駆動という選択肢も用意してほしいところだ。

CP1とS-Frame、選ぶならどっち?

 厳しい意見も述べたが、デジタルフォトフレームの本分である表示品質は十分納得のいくものであるし、本体のデザインはなかなか洗練されており、無線LANを利用したネットワーク機能は活躍の幅を広げてくれるなど、見どころは多い。VAIO関連機器として初めての製品ジャンルということで荒削りな部分はあるが、単にメモリカード内の写真を順番に表示するだけのデジタルフォトフレームとは一線を画す。

 さて、本製品のライバルとなるのは、付加機能に乏しい低価格帯のデジタルフォトフレームではなく、発売時期も価格帯も近い同社の「DPF-V700」(S-Frameのミドルレンジモデル)あたりになるだろう。しかし、CP1とDPF-V700はまったく別の製品で、対象となるユーザー層も異なっている。

 DPF-V700はパワフルな画像処理エンジンをフル活用し、デジカメで撮影した写真をそのまま表示して楽しめるようにRAWデータを表示する機能や、写真の補正機能、HDMI出力端子などを持っているが、CP1にそのような装備はない。DPF-V700は製品だけで完結して操作できることから、簡単な操作を好むファミリー層をターゲットとしているのに対し、CP1がターゲットにしているのは、よりITリテラシーが高く、ほかの機器などに保存してある写真データを有効活用したいと考えている層だ。

 CP1は、PCやホームサーバ、あるいはインターネット上の写真共有サービスにため込んだ大量の写真を手軽に表示して楽しんだり、リビングや離れた場所にいる家族などと写真を共有したいという目的がある人にぴったりフィットする製品といえる。DPF-V700はオプションにUSB接続型のBluetoothアダプタを用意しており、Bluetooth対応の携帯電話やPCからワイヤレスで写真を転送できるが、CP1は標準でそれを大きく上回るネットワーク機能を備えているのが持ち味だ。ネットワーク機能に魅力を感じるならば、CP1を選ぶのが正解だろう。

ソニーのデジタルフォトフレーム機能比較
製品 Canvas Online CP1 S-Frame
型名 VGF-CP1 DPF-V900 DPF-V700 DPF-V700
実売価格 3万円前後 3万5000円前後 2万5000円前後 2万円前後
画面サイズ 7インチ(800×480) 9インチ(800×480) 7インチ(800×480)
対応画像 JPEG、BMP、PNG、GIF JPEG、BMP、TIFF、RAW JPEG、RAW
写真共有サービス対応
RSSリーダー
PC内画像再生
無線LAN
Bluetooth オプション
メモリカード SDメモリーカード(SDHC対応)、メモリースティック/デュオ(PRO対応)、CF SDメモリーカード(SDHC対応)/MMC、メモリースティック/デュオ(PRO/PRO-HG対応)、xDピクチャーカード、CF、マイクロドライブ
写真用の内蔵メモリ 85Mバイト 512Mバイト 256Mバイト
USB Aタイプ×1 Aタイプ×1、miniBタイプ×1 miniBタイプ×1
HDMI出力
スピーカー
対応音声 MP3、WAV

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