音質の改善が著しいHDMI対応機器(前編)(1/2 ページ)

» 2008年06月19日 03時19分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 次世代DVDの規格分裂状態が解消されて以来、爆発的ではないもののBlu-ray Disc関連機器は徐々に普及の兆しを見せている。まだ普及にはほど遠いという意見もあるようだが、DVDスタート時に比べると、それでもまだペースは早い。

photo Blu-ray Disc対応のユニバーサルプレーヤーとしても注目されているプレイステーション 3(写真はCECHH00シリーズ)

 このBlu-ray Disc。周知の通り、DVDよりもはるかに高音質な音声トラックを収録可能だ。大容量を生かしてリニアPCMで収録されているタイトルも非常に多いが、ここにきて「プレイステーション 3」(以下PS3)でのデコード再生が可能なドルビーTrueHD対応タイトルも増えつつある。さらに、PS3がDTS-HD Master Audioに対応したことで、こちらも採用タイトルが増加するだろう。これらのコーデックはロスレス圧縮形式であるため、デコード後の音声データはリニアPCM(非圧縮)と同一だ。

 映画の場合、もともとのサウンドトラックが48kHz/24ビットもしくは20ビットで編集されていることが多いため、96KHz収録のものは今のところ見たことがないが、音楽ソフトならば96kHz/24ビットという高品質フォーマットで収録されているものもある。

 しかし、リニアPCM、TrueHD、DTS-HD MAは、いずれもHDMIからしか音声を出力できない。したがってプレーヤー側でデコードしてアナログで接続する場合を除くと、従来の同軸あるいは光デジタル端子による接続に制限される(もっとも、それぞれの規格上限値、ドルビーは640Kbps、DTSは1.5Mbpsとなるため、DVDよりも音は良い)。

 このあたりはHDMI基礎知識として何度も紹介されていることだが、DVDに慣れた人たちには分かりにくい点なので繰り返し述べておきたい。

 さてBDソフトを最高の音質で楽しむ場合、現在はアナログ接続か、HDMIの2つしか選択肢がないことになるが、“HDMIの音はあまり良くない”というのが定説になっている。この件は2年ほど前から筆者もさまざまな媒体で指摘してきたが、この状況もこの2年で変化してきた。この春の製品に至っては、(音の質感はほかの端子とは異なるものの)トータルの音質でほかのデジタル端子と甲乙付けがたいレベルにまで進歩してきている。

photo デノンが2004年11月に発売した「AVC-A1XV」。2年後にはHDMIの1080p入出力対応などの有償アップデートが提供された

 ここではその背景について紹介しつつ、最新機種のHDMI音質の傾向について述べていくことにしたい。なお、HDMIの音がなぜ悪かったか? といった話については、2006年にソニーのAVアンプ開発部隊にインタビューした記事があるので、そちらを参照してほしい(関連記事:ソニー「TA-DA3200ES」がアナログアンプに立ち返った理由)。

 HDMIの音が悪いといわれ始めたころ、HDMIの音は本当に悪かった。とくに最初期に登場したパイオニアのAVアンプ「VSA-AX4AVi」は、S/PDIFやアナログの音は良く仕上がっていたが、HDMI音声は音場感が削がれ、音数も少なく奥行き感のない、薄っぺらい音になっていたのだ。当時、HDMIの音質について各種製品に点数を付けた時、100点満点で50点を付けたことがある。

photo 2005年夏に登場したヤマハの「DSP-AX4600」。HDMI(当時はVer.1.1)を2系統搭載していた

 とはいえ、同様の問題は多かれ少なかれ、ほかの製品も抱えていた。当時の製品の中でも、デノン製のハイエンドAVアンプ「AVC-A1XV」は、とてもしっかりした低音が出て音数もさほど減らずに“普通の”音として聴けた。中級機ではヤマハの「DSP-AX4600」が優秀だったと記憶している。なお、パイオニアも「VSA-AX4ASi」という後継機で、HDMIの音質をかなり改善した。

 こうしたはざまの時期は、対応する音楽ソフトがなかったり、あるいはノウハウそのものが蓄積されていなかったりで、音質がなかなか整いにくい。とはいえ、業界内でHDMIの音質問題が徐々に認知され、各社はどうやってHDMIの音を良くするか? に腐心するようになった。

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