ユーザーに我慢させないVAIO type Zの“プレミアム”な価値山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」 (2/3 ページ)

» 2008年08月15日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]

単なる数値で判断しないCPUの意義

──―SZシリーズからVAIO type Zはどのように進化したのでしょうか。

ソニー VAIO事業本部 Notebook PC事業部 統括課長の林薫氏

大塚 モビリティを優先させると超低電圧版のCPUを使うのが普通ですが、VAIO type Zでは通常電圧版のCPUに外付けのGPUなど、メインマシンとして使うのに必要なパワーを持たせました。1台ですべてをまかなえるようにしたかったんですね。これを(外に)持っていて本当によかったと思えるような仕様を持たせて、ハイパフォーマンスとモビリティを両立させようとしたわけです。

 SZシリーズは、あの当時ではほかのどのメーカーにもできなかった機能や性能を、ソニーができる最大限の努力をして詰め込みました。そのSZシリーズを2年間にわたって販売してきたわけですが、その2年間で起きたCPUやGPU、省電力に関する進化を見ていると、今ならもっといけると考えるようになったのです。

大塚 超低電圧版、低電圧版のCPUを搭載した他社製ノートPCのモビリティを備えながら、性能面でも十分使えるマシンを作りたかったということです。だから、液晶ディスプレイのサイズなども妥協できませんでした。かといって、液晶ディスプレイが大きすぎると持ち運べなくなってしまいます。その意味で、13.1型ワイドというのはメインマシンとして使えるギリギリのサイズですね。

 SZシリーズで確信したのは、ただスペックを積み上げただけではなく、使えるモノとしてのバランスが上手に取れている製品だからこそユーザーにお金を払って購入してもらえるということです。アルミのパームレストやカーボンの天板など、そこに満足して支払うお金を追加してもらえるんですね。それがモノとしての満足度を高めることにつながります。

 スペックを単純にとらえてしまうと、それはただの数字になってしまいます。でも、CPUの処理能力を、スペックではなくプレミアムと考えてみます。PowerPointの資料を参照したいときに、30秒待てるか、それとも3秒で開いてほしいかということです。そう考えると、高速なCPUは、スペック的なアピールではなくて、やはりプレミアム的な価値となるでしょう。道具としてのよさを追求したときに、なくてもガマンはできるけれど、あれば気分よく仕事ができるというのが、ソニーの考える「プレミアム」なんです。

大塚 コンサルタント会社でSZシリーズを使っている人からそういう意見が多かったですね。

 VAIO type Zが考える「使える使えない」の基準は、「満員電車の中でノートPCを開けられるかどうか」というような、そういうことではないんです。「運転手付きの車の中でノートPCを使う」というイメージかな。もちろん、実際の使われ方としては、そういうことではないだろうとは思いますよ。あくまでも、その「気分」です。

大塚 そういったバランス感覚については、時間をかけて話し合いましたね。アルミのパームレストなんか、本当にこのコストをかけて、それが(売れ行きとユーザーの満足度として)リターンするのかどうか、その答えはなかなか見い出せませんでした。でも、やっぱり、選ばれた人が使うマシンというよりも、選んでもらえるマシンが作りたかったんですね。

最近のVAIOノートで導入されたシリンダーフォルムを取り入れたVAIO type Z。天面と底面はCFRPハウジングを採用して軽量化と堅牢性の両立を実現している
“プレミアム”な付加価値を与えるため、VAIO type Zでは、1枚のアルミニウムから打ち出したキーボードパネルを採り入れた。パームレストの部分まで継ぎ目のない1枚の板として成型されている

──どんなに高価になっても、いいものはいいと。

大塚 自分は商品企画が担当なので、ある程度の価格設定はしていましたが、結果としてVAIO type Zの最高機種で40万円を超えましたね。

 でも、シンプルな構成で高くなりすぎてはいけないですよね。だから、店頭モデルの価格は驚くようなものにはなっていません。でも、シンプルな構成でも飛躍的にレスポンスがいいはずです。そういう店頭モデルの上に、「いいものを選んでくれるユーザー」のための選択肢を用意したということでしょうか。

 携帯性についても、VAIO type GやVAIO type Tは毎日持ち歩くものですが、VAIO type Zはそれとは違うものを目指しました。最高のスタミナ(バッテリー駆動時間)を得るには超低電圧版のCPUが必須です。でも、「デイリーモバイル」ではなく、「ウィークリーモバイル」のようなイメージならそうじゃないと。私は長野の工場に毎週出張するのですが、行った先でPCを使う時間がとても長いんです。だから、どうしてもいつものデスクで使っている環境が長野にも欲しくなります。それを私は「エグゼクティブモバイル」と呼んでいますが、VAIO type Zの携帯性はそこを狙いたかったわけです。そういう携帯性能というものも、使うユーザーを選ぶかもしれませんね。

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