先週お伝えしたとおり、マイクロソフトの家庭向けサーバOS「Windows Home Server 日本語版」(DSP版/PP1適用)が8月30日に発売される。新OSの販売解禁といえば深夜販売がつきものだが、今回は比較的ニッチなサーバOSということもあり、深夜イベントに踏み切るショップはなかった……というのが先週までの話。
クレバリー2号店は8月28日に、同社の公式ブログで深夜販売の決行を発表。系列店舗にも同様のPOPを張り出した。8月30日0時から15分だけ開店し、新OSとFDDのセットを販売するという。価格は2万2978円で、先着10名には160Gバイトのウェスタンデジタル製3.5インチHDDをオマケにつける。
クレバリー2号店の決定を受けて賛同ショップが現れるのを期待したが、「やるみたいですねぇー。すごいですねぇー」「今回はクマ(クレバリーのこと。公式キャラクターから)に頑張ってもらおう」「マジですか!? なんで……罰ゲーム?」(いずれも近隣ショップ)と、2店目の名乗りは最後まで聞かれなかった。
とはいえ、8月20日からスタートした予約販売は、約半分のショップで好調との声を聞いている。すでに予約分を売り切ったBLESS秋葉原本店は「英語版に比べて、かなり評判がいいですね。PP1を適用していることに加え、今はAtomマザーというサーバにうってつけのパーツがありますから、試してみたいという人が多いようです」と語った。
また、ソフマップ リユース総合館も「当店の場合、予約分を差し引くと、店頭に並ぶ数はわずかとなってしまいます。家にある複数のPCをクライアントにして、Home Serverで自動バックアップをとるといった使い方を想定している人が多いみたいです」と、新OSのヒットに期待していた。
しかし、そんな好材料も、秋葉原の深夜イベント史上最悪の天候が吹き飛ばしてしまうのだった……。
日が暮れると、秋葉原の天候は次第に悪化していき、21時過ぎには激しい雷をともなう豪雨となった。雨脚は強く、となりのショップのひさしに移るだけでビショ濡れになるほどの勢いで、JRの各線では遅れが発生。昼間でさえ客足に影響が出ること必至の状態が、2時間以上続く。
23時50分。シャッターを開いて電灯を点けたクレバリー2号店には、30人近くの人だかりができていた。しかし、このうち約20人は記者を含む関係者で、純粋に新OSを購入しにきたユーザーは9人。関係者のほうが余裕で多い。スタッフに誘導されて店内で列を作る購入希望者を、多数派の関係者が見守る。
そして、時報が0時0分0秒を告げたとき、スタッフの「はい。お待たせしました」を合図に、Windows Home Server 日本語版の販売が解禁となった。カウンターでは、新OSとFDD、ショップ特典のソフトウェア、先着10名限定のHDDが次々に詰め込まれていく。解禁時の演出などはなく、すでに小降りとなった雨の音がよく聞こえた。
行列の先頭に立っていた男性は「深夜販売に始めて参加しました。22時半くらいに並んだのですが、とにかく雷が怖かったですね。PCのバックアップなどに使ってみたいと思います」と話してくれた。
最初の9人以外に購入希望者がいないこと確認し、せっかくなので筆者も列の最後に並ぶ。幸運なことに先着10名に入ることができたため、ウェスタンデジタルの「WD1600AAJS」も入手できた。レジで店員さんに感想を聞くと、「もう雷がひどくて、何度も心が折れましたよ。でも、2人くらいしか来てくれないと思っていたので、先着10名のプレゼントがすべて渡せてうれしいです」と照れくさそうに語った。
0時15分。シャッターを閉めにかかる店長に、今回の深夜販売の意図を聞いた。「社内では8月25日に深夜販売が決定したんです。天気予報でも荒れ模様となっていたので、正直迷っていたんですが、今回のOSはサーバといってもコンシューマー向けのものなので、せっかくだからやろうということになりました。深夜販売は秋葉原電気街の伝統でもあるので、やはり、絶やすわけにはいかないんですよ。まあ、本音では、ほかのショップさんもやってくれたら幸せでしたけど……」。
そう、クレバリーの英断により、「秋葉原電気街では、コンシューマー向けOSの発売日には、必ず深夜販売をやる」という文化が守られたのだ。本当にお疲れさまでした。
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