ここで取り上げる日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の「HP Pavilion Desktop PC m9380jp/CT」は、同社のコンシューマー向けデスクトップPC「HP Pavilion Desktop PC」シリーズに追加されたミニタワー型モデルだ。同シリーズの最上位に位置付けられるハイエンドモデルで、高い性能と拡張性を備えている。同社の直販サイトの「HP Directplus」でのカスタマイズに対応しており、幅広い選択肢から好みの構成を選んで注文ができる。
新採用のミニタワー型ボディは、ベイカバーなどを含めた前面を光沢のあるピアノブラック、中央のシルバー部分には、同社のノートPCでおなじみの「HP Imprint」によるグラフィックパターンがプリントされている。パターンの転写を成型過程で行うため、キズがつきにくく繊細なパターンでも消えにくいのが特徴だ。電源オン時には天面右手前にある電源ボタンが淡い青色に、前面中央のHPロゴが淡い白色にそれぞれ光る。
ボディのサイズは、178(幅)×422(奥行き)×394(高さ)ミリ、重量は約13.5キロと、microATXフォームファクタ対応ケースとしては標準的なサイズだが、同社が「ストレージタンク」とアピールするように拡張性は高い。5インチサイズの光学ドライブと3.5インチHDDを2基ずつ搭載できるほか、SDメモリーカードやメモリースティックなど15種類のメモリカードの読み書きに対応した「15in1メディアスロット」を標準で装備。さらにHPオリジナルの拡張ベイとして、「ポケット・メディア・ドライブベイ」、そして、下部右側のカバー内には「パーソナル・メディア・ドライブベイ」も備える。これらはそれぞれ2.5インチHDDを内蔵した「ポケット・メディア・ドライブ」と、3.5インチHDDを内蔵した「パーソナル・メディア・ドライブ」ユニット(ともに別売)を収納できる着脱式ベイで、内部的な接続はいずれもUSB 2.0だ。通常の3.5インチシャドウベイ(2基)とあわせて4基のHDDベイが用意されており、最大で3.25TバイトまでのHDDを搭載可能だ。下部左側のカバー内には前面からアクセスできるインタフェースがあり、下部中央にはワンプッシュでバックアップソフトウェアを起動する「イージーバックアップ」ボタンを備える。
ちなみに、2.5インチサイズの「ポケットメディア・ドライブ」、3.5インチサイズの「パーソナル・メディア・ドライブ」はいずれも本機のベイに収納して使えるほか、一般的なUSB接続の外付けドライブとしても扱える。CTOでの追加価格は、250Gバイト/160Gバイトのポケット・メディア・ドライブでそれぞれ1万4700円/7980円、1Tバイト/500Gバイトのパーソナル・メディア・ドライブで3万9900円/1万6800円となっている。
内部はマザーボードを下向きに装着する構造で、通常とは反対の側にあたる、向かって右側のサイドカバーは背面のネジ1本で固定されており、ケース内部へは簡単にアクセスできる。5インチベイは板バネ式のアタッチメントの操作だけで着脱を行えるが、独自拡張ベイとその配線などで内部はごちゃついており、メモリスロットにはなんとか手が届くものの、3.5インチベイへのアクセスはネジ留めされているパーソナル・メディア・ドライブベイを取り外す必要がある。
スペックは注文時に柔軟に選べるが、本機は最上位モデルだけにパーツの選択肢はハイエンド寄りで、CPUのメニューはすべてクアッドコアのCore 2 Quadとなっている。現在、一般的なCPUはコア(計算する部分)を2つ内蔵するデュアルコアCPUだが、クアッドコアCPUではその2倍の4つを内蔵する。単純にコアの数によってすべての性能が2倍になるというわけにはいかないが、最適化されたソフトウェアではそれに近い性能が発揮できる。特に動画エンコードやビデオ編集、RAW現像などのクリエイティブ系には最適化されたソフトウェアが多く、圧倒的な性能を発揮する。
また、クアッドコアCPUは、複数のプログラムが同時に走るマルチタスク環境でも強い。特にWindows Vistaではスパイウェアやウイルスの侵入を防止する「Windows Defender」、サイドバーのミニアプリなど、何も操作していないような時でもプログラムがいくつも走っており、デュアルコアCPUでも余裕があるとはいえない。日常的な操作でも「デュアルコアよりもさらに2つぶんの余裕」を実感できる場面は少なくないだろう。
Core 2 Quadの選択肢としては、45ナノメートル製造プロセスルールのQ9450(2.66GHz)/Q9300(2.53GHz)と、65ナノメートルのQ6700(2.66GHz)/Q6600(2.4GHz)が用意されている。45ナノメートル世代では、システムバスが1066MHzから1333MHzに拡張されて実質的にメモリアクセスが高速化されているほか、浮動小数点演算機能改善、SSE系命令の実効性能改善、SSE4.1命令のサポートなどといった強化がされている。また、TDPこそ95ワットで変わらないが、45ナノメートルプロセスルールにはHigh-K絶縁膜やメタルゲートといった省電力に有利な技術も導入されているので、実質的な消費電力も減っている。数少ないSSE4.1対応ソフトウェアを使わない限り性能は大きく変わらないので、現時点でのコストパフォーマンス優先なら65ナノメートル世代でもいいが、将来性や省電力も考慮するなら新しい45ナノメートル世代のほうがおすすめといえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.