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ADF搭載フラットベッドスキャナ「GT-D1000」を使い倒すドキュメントスキャンの新機軸(1/3 ページ)

» 2008年10月08日 17時00分 公開
[小川夏樹,ITmedia]

ビジネスを考慮したADF搭載フラットベッドスキャナ

「GT-D1000」

 エプソンの「GT-D1000」は、カラリオスキャナシリーズとしては珍しく標準でADF(オートドキュメントフィーダ)を搭載したA4フラットベッドスキャナだ。フラットベッドスキャナといえば、写真やフィルムなどのデータ化をイメージする人が多いかもしれないが、GT-D1000はドキュメントスキャンの高速化・効率化にこだわっている。今後のフラットベッドスキャナ市場に新たな可能性を与える製品として注目したい。

 コンシューマー向けのスキャナ市場は、デジタルカメラの普及などの要因により縮小傾向にあるが、その一方で盛り上がりつつあるのがビジネス向けのドキュメントスキャナ市場だ。例えば、老舗のPFUやキヤノン、そして日本市場に注力し始めたコダックは、ドキュメント類のデジタル化ソリューションをSOHOやコンシューマーにまで広げようとしている。

 3社ともコンパクトなADF読み取りタイプのA4ドキュメントスキャナを売れ筋モデルとしてラインアップしており、これらは1パスで両面スキャンが可能だ。しかも高速に読み取れるとあって、SOHOや小規模事業所に必須の機器として認知されつつある。

 こうしたドキュメントスキャナは、スキャン速度の高速化や本体の低価格化に加えて、e-文書法への対応や、サイズの異なる原稿を自動的にサイズ調整して取り込むなど、本体のコンパクトさに反して豊富な機能を持っているのが特徴だ。

 しかし、ADFのみを搭載したドキュメントスキャナは、原稿を1枚ずつ狭いすき間に通してスキャンする仕組みなので、厚みのある原稿を読み取れないし、ホチキス止めした文書は、一度ホチキスを取り外してからスキャンする必要がある。雑誌のような書物をスキャンする場合も、ページを切り取るか全体をバラバラにして一部のページだけを抜き取るなどの手間がかかってしまう。また、これらの製品は未使用時こそコンパクトなものが多いが、給紙トレイや排紙トレイを展開すると意外と設置面積が求められる場合もある。

 一方、フラットベッドスキャナは、原稿をカバーで押さえつけて1回ずつスキャンする手間はかかるものの、ホチキス止めの文書や書物を分解せずに読み取ることができる。さらにADFを搭載していれば、文書の連続読み取りも可能だ(ただし、GT-D1000のADFは片面読み取りのみ対応)。設置面積はそれなりにあるが、フラットベッド型でADFを持つGT-D1000は、既存のADFオンリーのドキュメントスキャナが抱えていた不便な部分を解消する対抗馬となり得る。

片面読み取りのADFは、200dpi/速度優先モード時の設定でA4フルカラー毎分12枚、A4モノクロ毎分18枚のスキャン速度をうたう(写真=左)。メンテナンス時は左側にカバーを開く。フラットベッド型のボディは、厚みのある書籍などを手軽にスキャンできる(写真=中央)。スキャナのセンサーはCISではなく、被写界深度が深いCCDなので、原稿台から浮きがちになる冊子のとじ部をしっかり読み取れるのもポイントだ(写真=中央)。電源はACアダプタを用いる(写真=右)

文書の読み取りに最適化したボディデザイン

 GT-D1000はカラリオスキャナシリーズの一員ではあるが、ADFを搭載している関係から、操作ボタン類(ナビボタン)の配置も含めて、ほかのモデルとはボディのデザインが大きく異なる。

 従来のカラリオスキャナシリーズは長方形の短辺側を正面としており、そこに各ナビボタンを配置していた。一方、GT-D1000は長方形のボディの長辺側にナビボタンを配置する。つまり、ナビボタンを配置する部分を本体の正面とすれば、ほかのモデルとは正面の向きが90度異なる。いわば、ADF付き複合機のスキャナ部分だけを取り外したイメージというと分かりやすいだろう。

 そのため、本体サイズの表記は従来モデルと幅・奥行きが逆だ。本体サイズは470(幅)×318(奥行き)×121(高さ)ミリで、重さは約3.9キロとなる。この表記のままでほかのモデルとサイズを比べると、幅が2倍近く異なる点に注意してほしい。A4フラットベッドのボディにADFを増設しているため、コンパクトで軽いというわけにもいかないが、サイドデスクなどに置いたりするのに大きすぎる、というほどでもない。

 ブラックとグレーの2色で構成された本体カラーは、オフィスやSOHOなどにも違和感なく置ける配色だ。原稿台のカバーは厚みのある原稿でもしっかり押さえられるように、ヒンジ部が2センチ程度浮き上がるようになっている。

従来のカラリオスキャナシリーズとは異なり、長方形の長辺部分に操作ボタン類を配置しており、こちらが正面となる(写真=左)。背面にUSBポートとACアダプタ接続用の端子を備えている(写真=中央)。A4フラットベッドスキャナのため、奥行きは318ミリとそれなりにある(写真=右)

光学解像度1200dpi×白色LED光源で高速化

 ここでGT-D1000のスペックをざっと紹介しておこう。センサーはCCD、光学解像度は原稿台使用時が1200dpi、ADF使用時が600dpiだ。CCDセンサーの種類はカラリオスキャナシリーズでおなじみの「α-Hyper CCD II」ではなく「3ラインカラーCCD」を採用する。

 確かに上位モデルに見られるマルチラインを持つα-Hyper CCD IIのスキャンクオリティは高いのだが、ドキュメント類の高速スキャンという面から見ると、むしろオーバークオリティともいえる。もし、より高解像度でハイクオリティなスキャンデータが必要であれば、上位モデルを選べばよいので、この仕様だけを見てスペックダウンと判断するのは早計だろう。光学解像度が1200dpiということも合わせて、ドキュメントの高速読み取りに重点を置いたと考えれば納得がいく。

 GT-D1000が高速スキャンを実現するために搭載した機構には、ADFに加えて、光源として白色LEDを採用していることも挙げられる。白色LEDは電源投入からの立ち上がりが早く、スキャンに必要な光量に達するまでのウォームアップ時間が従来の白色冷陰極蛍光ランプよりはるかに短いという特徴を持つ。

 具体的には1秒以内でスキャン可能な光量まで達するため、電源を入れてスキャンボタンを押すだけで、すぐにドキュメントのスキャンが開始される。もちろん、これはドキュメント類のスキャンだけでなく、別の原稿をスキャンするときにも有用だ。ちなみに白色LED光源を用いたCCDセンサー搭載のカラリオスキャナは、「GT-X770」も販売中だ。

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