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ADF搭載フラットベッドスキャナ「GT-D1000」を使い倒すドキュメントスキャンの新機軸(3/3 ページ)

» 2008年10月08日 17時00分 公開
[小川夏樹,ITmedia]
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その高速性をベンチマークテストで検証する

 GT-D1000のメインターゲットはSOHOや小規模事業所、窓口業務といったビジネスユースである。こうしたターゲット層にドキュメントスキャナの高速スキャンとフラットベッドの使い勝手の両方を提供するということだ。メーカーの発表によると、200dpi/速度優先モード設定での平均読み取り速度はカラーが毎分12枚、モノクロが毎分18枚となっている。そこで実際にADFによるドキュメントスキャンが高速に行えるのかをベンチマークテストで検証した。

 読み取りに利用した原稿は、JEITAのプリンタ用標準テストパターンを一度プリンタで印刷したものだ。カラー原稿にはJEITA J11(12ページ)、グレースケール原稿にはJEITA J5(18ページ)、モノクロ原稿にはJEITA J1(18ページ)をそれぞれ利用している。読み取りの解像度は300dpi/200dpi/150dpiに設定し、カラー/グレースケール/モノクロの各原稿を読み取る場合はスキャンドライバで指定した。

 計測に使用したのはストップウォッチだ。計測した時間は、ADFにセットした原稿の最初の1枚が動き出す瞬間から最後の1枚が排出される瞬間までだ。これを5回計測し、グラフではその中間値を採用している。

 テストでは本体のスキャンボタンを押してから原稿が動き始めるまでの時間は含めていない。また、PCへのデータ送信とソフトウェアの処理にかかる時間も含めていないので、利用するPCによって処理時間が異なる点は注意してほしい。

ベンチマークテストの結果(すべてA4スキャン)
カラー原稿のPDF化/JEITA J11(12ページ)
解像度 Acrobat利用 本体ボタン利用
300dpi 144.57秒 240.28秒
200dpi 76.55秒 128.21秒
150dpi 59.88秒 52.33秒
グレースケール原稿のPDF化/JEITA J5(18ページ)
解像度 Acrobat利用 本体ボタン利用
300dpi 135.96秒 246.28秒
200dpi 77.32秒 78.31秒
150dpi 76.08秒 74.23秒
モノクロ原稿のPDF化/JEITA J1(18ページ)
解像度 Acrobat利用 本体ボタン利用
300dpi 90.38秒 114.25秒
200dpi 63.15秒 75.92秒
150dpi 60.08秒 62.57秒
テストに使用したPCのスペック CPU:Athlon 64 3200+(2.0GHz)、メインメモリ:2Gバイト、HDD:Seagate Barracuda 7200.7(ST3160021A/160Gバイト)、OS:Windows Vista Ultimate(SP1)

 PCからTWAINドライバ経由で読み取る際にはAdobe Acrobat Professionalを利用した。これはPresto! PageManager 8 Standardを利用した場合に極端に速度が落ちてしまったためだ。GT-D1000はAcrobat StandardやProfessionalを付属していないが、今回のテストではハードウェアの性能を最大限引き出すため、Acrobat Professionalを用いている。また、本体のPDFナビボタンを押すと、EPSON PDF Plug-in経由でPDFが作成できるので、その場合の速度も計測した。

 テスト結果は表の通りだ。Acrobatを用いたモノクロ原稿18枚の200dpi連続スキャンでは約63秒と、公称値の毎分18枚に近い速度となっている。一方、Acrobatを使ったカラー原稿12枚の150dpi連続スキャンは59.88秒と高速だが、200dpi連続スキャンでは76.55秒と公称値の毎分12枚より少し遅れた。

 また、本体のボタンでスキャンを行うよりAcrobatからEPSON Scan経由でスキャンをしたほうが高速であることに注目したい。本体のボタンを使う場合、200dpiのグレースケールで読み取るのが速度と品質的にバランスがよさそうだ。

300dpiでの品質は満足、200dpiで常用レベル

 気になる読み取りの品質だが、一番処理時間のかかる300dpiでは十分過ぎる品質だ。200dpiでPDFに変換した場合、テキストとグラフィックスで十分な視認性が確保されており、スキャン速度を考慮に入れると、実用性に問題はないといえる。150dpiならば高速に読み取れるが、拡大するとブロックノイズが目立ってしまう点と、読み取り可能なPDFを作成できない点で注意が必要だ。

 以下のスキャン画像サンプルは、モノクロ/カラー原稿を150dpi/200dpi/300dpiの各設定で読み取ってPDF化したデータを、Adobe Readerで100%表示にした状態で切り出し、JPEG形式で保存したものだ。

左から、モノクロ原稿(JEITA J1)をドライバ標準設定にして150dpi/200dpi/300dpiで読み取りPDF化したデータ(クリックで、より広い範囲の画像を表示)。150dpiだと文字が崩れ気味になってしまうが、200dpiでは実用できる品質だ。300dpiであれば、十分に高い品質となっている。ただし、300dpiの設定はスキャン時間が極端に遅くなってしまうので、200dpiが常用解像度となるだろう

左から、モノクロ原稿(JEITA J5)をドライバ標準設定にして150dpi/200dpi/300dpiで読み取りPDF化したデータ(クリックで、より広い範囲の画像を表示)。グラフィックスの品質を含めて200dpiが読み取り速度と品質のバランスが取れている。300dpiではさすがに文句のない品質ではあるが、スキャン時間が2分オーバーとかなり違う点を考えると、やはり200dpiがベターだ

左から、カラー原稿(JEITA J11)をドライバ標準設定にして150dpi/200dpi/300dpiで読み取りPDF化したデータ(クリックで、より広い範囲の画像を表示)。ぱっと見では150dpiでも十分だが、表の文字やけい線が崩れ気味だ。けい線部分の線を比べると200dpiでも崩れ気味だが、我慢できるレベル。300dpiでは満足できるレベルだが、スキャン時間は2分半近くかかってしまう

フラットベッドスキャナもドキュメントスキャナも1台で済ませたい人へ

 GT-D1000はADFで1パス両面読み取りができない点、設置面積が大きめな点、そしてPC経由で利用したときにGT-D1000の高速性を最も引き出せると思われるAcrobat Standardや同Professionalが付属してない点など、ADF読み取りだけの他社製ドキュメントスキャナに比べて、使い勝手で分が悪い点があることは否定できない。

 しかし、片面ながらADFを使った読み取り速度は不満がないうえ、通常のCCDセンサー搭載フラットベッドスキャナとしても使える守備範囲の広さは見逃せない。家電量販店での実売価格は3万8000円前後と無難なところにおさまっている。ADFしか装備していないドキュメントスキャナでは物足りないというユーザーや、フラットベッドスキャナを普段からよく利用するが、ドキュメントスキャン機能も欲しいというユーザーにおすすめだ。ビジネスに限らず、家庭内のドキュメント類を手軽にデジタル化したいユーザーにも向いている。

 個人的にはこれに1万円程度上乗せしたAcrobat Standardバンドル版や、購入者向けのアフターサービスとして、安価にAcrobatシリーズを販売すれば、より製品の魅力が増すのではないかと思う。また、今後は1パスで両面スキャンが可能な上位モデルが登場すれば、スキャナ市場で新たな魅力を持つ製品になることは間違いない。

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