HDC-1LがオーディオPCであることを示す一番重要なハードウェアが、光学ドライブの後ろにレイアウトされたサウンドボードだ。これはオンキヨー製のオーディオカードでも採用されている「VLSC」回路の上位バージョンとなる「VLSC2」を搭載している。PCで特に問題となる内部ノイズの「完全シャットアウト」を可能にし、S/N比120デシベルを実現する。LとRにそれぞれ独立した2ch DACを採用した本格的なものだ。
なお、マザーボードのオンボードサウンドチップはRealtek製を採用しており、VLSC2を実装したサウンドボードは、Readtekのチップから出力されたオーディオストリームを解析して補正する。
ソフトウェア面でもHDC-1Lは注目すべきものがある。例えば、サウンド・オンの状態でオーディオやビデオを鑑賞しているときに、そのバックグランドでメールを受信したとしよう。受信時に設定されていた「鑑賞時の音量」でメールの着信音が鳴り響くことになる。PC利用時に設定されている警告音が音楽や映像を楽しんでいる最中に聞こえてしまっては興ざめだ。
そこで、HDC-1Lは着信音や警告音をシャットアウトするPDAP(Pure Direct Audio Path)テクノロジーを導入して、PC側のOSやアプリケーションで設定されたアラームサウンドで邪魔されずに音楽を楽しめる環境を備えている。ただし、PDAPが利用できるアプリケーションは音楽再生専用ソフトの「PureSpace」だけで、iTunesなどほかの再生ソフトではPDAPが適用されないので注意が必要だ。
Atomにはインターネットサービスを利用できるだけではなく、あまり重い負荷でなく、あるいは3Dグラフィックスなどを利用しないのであればほかの用途にも十分使えるだけの処理能力が備わっている。HDC-1LはAtomの低消費電力の特徴を静音性能の実現に生かし、CPU負荷の高くない利用目的としてインターネットだけでなく「音楽」にフォーカスを当てた。そのために高音質なサウンドボードを追加し、それを楽しむアプリケーションをバンドルしている。NetbookやNettopでありがちなスペックの横並びから脱した製品という意味で評価できる。
HDC-1LはSOTECブランドであるが、オンキヨーのオーディオPCラインアップとしては、「低価格なオーディオPC」と考えることもできる。オンキヨーのオーディオPCを振り返れば、Core 2 Duoという比較的熱量の大きなCPUを搭載しながらも静音性能を高め、さらに高音質なサウンドボードや高品質な電源回路を組み合わせており、そのために、オーディオ機器としては「オーディオマニア向けの高級機」という価格だった。
HDC-1Lは、PCとしての性能を見れば従来のオーディオPCに及ばないものの、オーディオ中心の用途として考える「オーディオ機器」であれば、ちょうどいいスペックと価格といえる。Nettopのニーズである2台目PCとしては、こうした特定目的に特化した製品がほかにも登場していいのではないだろうか。
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