高音質PCは立派なオーディオ機器になれるか?――オンキヨー「SPX-1」Vistaに頼らず音を追究(1/4 ページ)

» 2007年04月04日 11時00分 公開
[八木慎伍,ITmedia]

オンキヨーの新提案はコンポサイズにおさまった高音質PC

オンキヨーの高音質サウンドカードを搭載した小型デスクトップPCと専用ステレオスピーカーがセットになった「SPX-1」

 老舗の音響機器メーカーであるオンキヨーは、PC向けのサウンドカードやUSBオーディオプロセッサなど、高音質が売りのPC向けオーディオ製品を「WAIVO」ブランドとして販売してきた。そんなオンキヨーが手がけた高音質PCが“HDオーディオコンピューター”と名乗る「HDC-1.0」だ。

 こう聞くと、「WAVIOのサウンドカードを入れたPCを出しただけ」と思う人がいるかもしれない。しかし、その認識は間違っている。オンキヨーが自ら考える「音楽を楽しむためのPCはこうあるべき」という姿をHDC-1.0は具現化しているのだ。

 まずはボディのデザインからして通常のデスクトップPCとは違う。本体サイズ205(横幅)×240(奥行き)×92.5(高さ)ミリ、重量約3キロの小型軽量ボディは、オンキヨー製のスピーカーやアンプなどと組み合わせることを想定したもので、同じく横幅205ミリのハイコンポシリーズ「INTEC 205」とデザインが共通化されている。前面にスロットイン式DVDスーパーマルチドライブを配置したシンプルな外観は、単品のCD/DVDプレーヤーのような雰囲気があり、INTEC 205シリーズと並べた場合に自然に溶け込むだけの高級感を持つ。

 ラインアップは、PC単体モデル「HDC-1.0」、デジタルアンプ内蔵ステレオスピーカーとのセットモデル「SPX-1」、デジタルアンプとのセットモデル「APX-1」が用意されている(ディスプレイは別売)。いずれもプリインストールOSはWindows Vista Home Basicだ。オンキヨーによると、HDC-1.0は「AVパソコンではなく、高音質パソコン」なので、Windows Media CenterをはじめとするVista Home Premiumに付加されるAV機能は必要なく、音楽は独自ソフトウェアでまかなう仕様にしたという。今回は3月10日に発売されたSPX-1を入手できたので、PC本体(HDC-1.0)のレビューを中心に、付属のステレオスピーカーと接続した場合の音質についてもチェックする。

SPX-1のほかに、PC単体モデル「HDC-1.0」(写真=左)、デジタルアンプとのセットモデル「APX-1」(写真=右)が用意されている。3モデルともディスプレイは付属していない

ノートPC向けアーキテクチャで静音性、放熱性、小型軽量を実現

 HDC-1.0の音質に対するこだわりは、徹底した静音化に現れている。音楽を楽しむためのデバイスが、自ら騒音源になることは許されない。このため、HDC-1.0は発熱量の少ないノートPC向けデバイスで構成されている。基本スペックは、CPUがCore 2 Duo T5500(1.66GHz)、チップセットがIntel 945GM+ICH7M、メモリが1GバイトのSO-DIMM、HDDが2.5インチのSerial ATAタイプで容量120Gバイト、光学ドライブがスリムタイプのDVD±R DL対応DVDスーパーマルチだ。このようにノートPC向けのパーツを採用することで、本体の小型化と静音化を両立している。

前面は、電源ボタンとCD/DVDイジェクトボタン、CD/DVDのスロット、USB 2.0×2のみと非常にシンプル(写真=左)。Core 2 DuoのロゴがさりげなくPCであることを主張している。背面には、ディスプレイ接続用のHDCP対応DVI-I(デジタル/アナログ兼用)をはじめ、1000BASE-Tの有線LAN、6ピンのIEEE1394、4つのUSB 2.0、オーディオ接続用のライン入出力(RCAピン)と光デジタル出力(丸形)の端子が並ぶ(写真=右)

 それでもクーリングファンは必要で、実際電源を入れると回り出すのだが、その音は極めて静か。エアコンの電源を切って近くに寄らないと、ファンの回転を認識することすら難しいレベルだ。ベンチマークテストプログラムを動かすとファンの回転数は上昇し、その存在感を主張しはじめるのだが、グラフックス機能を評価する3D系のベンチマークテストでは、ほとんど回転数は上がらない。CPUに負荷をかけるテストでそれなりに音が聞こえる程度で、ファンコントロールはかなり節度が保たれていた。ケースのカバーを開けると、CPUやチップセットをすっぽりと包むダクトユニットが現れ、エアフローの効率化が図られているのが分かる。

 さらに特筆すべきはHDDのシーク音で、まったく聞こえないほどに抑えられている。ユーザーにHDDの存在を意識させないためか、HDDのアクセスランプも排除されており、アプリケーション起動時の待ち時間には正常に動作しているか不安に思ってしまうほど。HDDからの音楽再生時にカリカリと音をたてることもなく、高級オーディオ機器並みの品位ある静かさだ。

 音楽CD再生時も同様に、光学ドライブの回転音はかなり抑えられている。高速回転の光学ドライブにありがちな、うなり音とは無縁。単品のCDプレーヤー並みと言ってもよいほどだ。その半面、音楽CDからHDDへの転送時間は遅い。4分の音楽ファイルの場合、普通のデスクトップPC向け5インチドライブなら30秒程度でリッピングできるのだが、HDC-1.0のノートPC向けドライブでは1分30秒ほど必要だった。静粛性を優先させていることを考えるとやむ得ないが、大量の音楽を一気に読み込みたい場合は、ほかのPCを使って読み込み、ネットワークや外付けHDD経由でデータ転送するのも手だ。

 このようにHDC-1.0は、PCとしてはもちろん、オーディオ機器としても一流の静かさと言える。メーカー公称値の22デジベルという静音性は伊達ではない。インテルの研究所「筑波デスクトップ・ラボ」で熱と騒音の解析を行ったとアピールするだけあって、その信頼性も高そうだ。

 音楽再生時のノイズ源となるボディの振動に対しても対策が講じられている。外装は剛性の高いアルミ製のフロントパネルに、INTEC 205シリーズと共通化されたオーディオ機器仕様のシャーシを採用。底面には、オーディオ用に設計されたインシュレーターが装着されている。ボディ内部は、光学ドライブや基板を防振材で浮かせつつ、防振用のテープを貼るといった念の入れようだ。

ケース内部は、CPUとチップセットを黒いダクトで包み、光学ドライブの上に防振用テープ、各所に黒い防振材を貼るなど、静音と防振が重視されている(写真=左)。光学ドライブとHDD、サウンドカード、ダクトユニットなどを取り外したところ(写真=中央)。ノースチップ、CPU、背面の冷却ファンが直線上に並んでおり、前面から背面に向かって効率よく排気が行われる。CPUに冷却ファンは装着されていない。SO-DIMMのメモリスロットは1基空いているが、メモリを増設するにはかなりの分解を要するうえ、保証対象外となる。底面は4隅にインシュレーターを装備(写真=右)。インシュレーター内部にはプチルゴムを手作業で貼り、本体との接着面にオイルを適量塗るなどして、防振性を高めている

Mini-ITXのマザーボードを搭載(写真=左)。PCIスロットには独自のサウンドカードが装着されている。Mini PCIカードスロットは空いた状態で出荷され、純正オプションなどは用意されていない。電源はACアダプターで供給する仕組みだ(写真=中央)。USB接続のキーボードとマウスが付属する(写真=右)。キーボードはコンパクトだが、キー配列にクセがあるうえ、キートップが少しぐらつく印象で、高級感ある本体と少しアンバランスな印象だ。また、音楽を楽しむという性格の製品であることを考慮すると、ワイヤレス仕様のキーボードとマウスを付属してほしかった。なお、オンキヨーからは別途ワイヤレスキーボード/マウスシステム「KM-1W」が4月中旬に発売される予定だ

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