音質重視の設計が目立つSPX-1だが、PC本体(HDC-1.0)の基本性能にも不満はない。Windowsエクスペリエンスインデックスを見てみると、Intel 945GMチップセット内蔵のグラフィックス機能が足を引っ張り、基本スコアは2.9と低めの値になっているが、サブスコアはCPUが4.7、メモリが4.5、グラフィックス(Windows Aero)が2.1、ゲーム用グラフィックスが3.0、HDDが4.5とまずまずだ。プリインストールOSのWindows Vista Home Basicを動作させるのに問題がないどころか、Vista Home Premiumも動かせるだけのスペックを持つ。
ベンチマークテストの結果については、Core 2 Duo T5500(1.66GHz)と1Gバイトメモリを組み合わせたことで、CPU周りのパフォーマンスは実用十分と言える。チップセット内蔵のグラフィックス機能なので、3Dグラフィックス性能を評価する3DMark06のスコアこそ低くなってしまったが、HDC-1.0の性格からすると、3Dゲームよりはコンパクトさと静粛性を狙うべきで、この仕様は正しい選択だ。実際、CarryOn Music 10で音楽を鳴らしながらWebブラウズしてもパフォーマンスはまったく問題なく、ファンの回転音をはじめとする動作音も気にならない。
最後にSPX-1.0を考察すると、“HDオーディオコンピューター”をストイックに追求したPCと言える。本体のインタフェースは非常にシンプルで、メモリカードスロットもなく、デジカメや携帯電話で使うメモリカードとやりとりするには別途カードリーダーが必要になる。プリインストールされているOSはWindows Vista Home Basicで、Windows AeroやリビングPCに必須と言われている10フィートUIのWindows Media Centerは含まれない。いわゆるAVパソコンのようなTV録画機能もない。このようにSPX-1.0は、家庭で使うメインマシンというよりは、あくまでも音楽を聞くためのコンピュータだ。
では、高音質スピーカー付きのHDDジュークボックスと考えた場合にリーズナブルかと言われると、疑問符が付く。世の中には10万円程度で250GバイトのHDDを搭載し、ネットワークダウンロード機能付きのミニコンポも存在するので、実売26万円前後のSPX-1(HDC-1.0は実売21万円前後)は決して安くはないだろう。
しかし、Windows Vista搭載PCとして汎用性が高く、さまざまな圧縮形式と音楽配信サービスが利用可能で、さらにオーディオ機器としても高い音質を誇るSPX-1は、旧来からのオーディオファンにとって注目すべき存在と言える。とくにこれまでピュアオーディオしか触っていない人にこそ、HDDジュークボックスの手軽さと便利さを知ってほしい。1人1台のPCが当たり前のいま、TPOにあわせてPCを使い分けるという贅沢が許されるなら、音楽用のPCとしてぜひともほしい1台だ。
唯一注文を付けるとすれば、次は音楽専用でもいいのでHDMI端子を追加して、24ビット/192kHzのリニアPCM出力に対応してほしい。オンキヨー自身も発売している最近のAVセンターにHDMIでデジタル接続できれば、e-onkyo musicでダウンロードできる高音質コンテンツがより生きてくることだろう。
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