最終回 奥深い高級紙プリントの世界へA3ノビプリンタ特集(2/2 ページ)

» 2008年12月05日 17時15分 公開
[榊信康,ITmedia]
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エプソンの「PX-5600」とキヤノンの「PIXUS Pro9500」が優勢

 写真印刷のクオリティを重視して5台のA3ノビ対応インクジェットプリンタを使い比べてみると、やはりエプソンの「PX-5600」とキヤノンの「PIXUS Pro9500」という国内2強メーカーの上位モデルが優勢だった(各モデルの画質についての詳細はこちらの記事を参照)。

エプソンの「PX-5600」

 この2つのモデルで万人におすすめできるのはPX-5600だろう。長らく顔料機を研さんしてきたエプソンの最新鋭機だけあって、画質が頭1つ抜けている。特にVM(ビビットマゼンタ)インク搭載のきっかけとなった人肌の再現力はすばらしい。そのVMインクのせいか、カラー印刷では多少のクセが見られるものの、大筋を外してはいないので、この程度の個性であれば、乗りこなす楽しみができたとも思える。

 モノクロ印刷は素直な出力で、しかも品位が高く、評判がよかった前モデル「PX-5500」(2005年5月発売)のユーザーでも買い替えて損のない出来栄えだ。そのほかの部分もオールラウンドで一線を張れるだけの性能を備えている。

 無論、弱点がないわけではなく、手動で入れ替えが必要なフォトブラックとマットブラックのインクカートリッジは扱いが面倒だ。この機構のおかげで、テスト中にかなりのインクと時間を浪費してしまった。また、リアトレイからの給紙の精度も、多少は改善されたとはいえ、まだ不満は残る。

キヤノンの「PIXUS Pro9500」

 かたやPro9500は、ペーパーハンドリングの面で秀でている。パスの切り替えはトレイの上げ下げだけででき、ストレート給紙には専用のボタンも用意しているため、紙送りのミスが生じにくい。後部に用意された車輪もちょっとした移動に重宝する。

 ハードウェアだけでなく、ソフトウェアにも注力している。キヤノンのデジタル一眼レフカメラに付属するRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(またはPhotoshop)から、印刷プラグインソフト「Easy-PhotoPrint Pro」に至るワークフローの簡便さは見事で、カメラメーカーとしてのノウハウがうまく生かされている印象だ。ユーザーが快適に使用できるように隅々まで配慮されており、長く使っていきたいと思わせる。

 こちらの弱点は速度と対応用紙にある。速度は前記した通り、安定性を重視した結果だ。対応用紙に関しては光沢系の写真用紙を苦手とし、印刷面の平滑性にも欠ける点である。筆者のように光沢感は不要とするならばよいが、光沢感を珍重する人は多い。エプソンの顔料機はグロスオプティマイザやクリア樹脂により光沢感がある印刷に対応しているが、Pro9500はキヤノン初の顔料機(コンシューマ向けでは)だっただけに、気付いてはいても手が回らなかったのだろう。

 ただし、モノクロ印刷、それもアート紙への出力はPX-5600にも引けを取らない。モノクロ印刷が主体か、カラーで光沢感を欲しない人ならば買って損はないはずだ。また、PX-5500のリア給紙にストレスをため込んだ人には、むしろ率先して試していただきたい。


 以上で全5回に渡るA3ノビ対応インクジェットプリンタ特集は終了となる。次からは年末商戦で盛り上がっているA4複合機の注目モデルを集め、徹底検証していく予定だ。

 2008年末の最新複合機の特集記事はこちら

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