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第1回 今年は複合機の“当たり年”――最新モデルの傾向と注目機は?複合機08-09年モデル徹底検証(3/4 ページ)

» 2008年12月08日 12時45分 公開
[榊信康,ITmedia]

キヤノンの複合機注目モデル

・PIXUS MP980(キヤノン)――実売3万円台前半

「PIXUS MP980」

 「PIXUS MP980」はPIXUS MPシリーズの新しいフラッグシップモデルだ。概観は昨年の「PIXUS MP970」と似通っているが、コーナーにやや丸みを持たせたデザインになった。また、本体サイズは470(幅)×385(奥行き)×199(高さ)ミリとなり、わずかに縮小している。

 最大の特徴はプリントエンジンだ。昨年のMP970は染料フォトインクと顔料ブラックを含む7色セットだったが、MP980はフォトインクをなくしてグレーインクを追加した6色セットになった。フォトインクが不在だと印刷時の粒状性が懸念されるが、グレーインクによりまろみが出るため、ドットが目立ちにくくなっている。また高速化への対策も万全だ。プリントヘッドにはシアン、マゼンタ、グレーを各1536ノズル、イエロー、染料ブラック、顔料ブラックを各512ノズルも搭載し、さらに印刷速度に磨きがかかった。

 スキャンエンジンに変更はなく、4800×9600dpiの解像度を備える。センサーはCCD方式を採用。カラリオの最上位機がCISセンサーになったため、2008年末モデルでは唯一のフィルムスキャンに対応した複合機ということになった。

 無論、CD/DVDレーベル印刷や自動両面印刷、前面カセットと後部トレイによる2系統給紙など、従来からの特徴も継承している。ただ、前面カセットで利用できる用紙が普通紙のみに退化したのは残念なところだ。ネットワーク機能は100BASE-TXの有線LANに加えて、IEEE801.11b/gの無線LANも標準装備している。プリンタ、スキャナともハードウェア仕様に一切の妥協がなく、実にフラッグシップらしい製品だ。

前面と背面の2系統給紙に対応している(写真=左)。インクはグレーインクを用いた全6色セットで、装着ミスやインク切れを確認できる赤色LED搭載の独立式カートリッジを採用する(写真=中央)。スキャナは光学4800dpiのCCDセンサーを備えており、今回取り上げる7モデルで唯一、フィルムスキャンが可能だ(写真=右)

・PIXUS MP630(キヤノン)――実売2万円台半ば

「PIXUS MP630」

 今年のPIXUS MPシリーズはミドルレンジに2台の「MP600系」を用意している。中途半端になりがちな一昨年の「MP800系」を復活させるよりも、売れ筋の価格帯にバリエーションモデルを増やす方針なのだろう。それだけに両機の個性はしっかり把握しておいたほうがいい。

 まず「PIXUS MP630」は、昨年の売れ筋モデル「PIXUS MP610」の正統後継というべき製品だ。本体サイズは450(幅)×368(奥行き)×176(高さ)ミリとなっており、前モデルのMP610と比較した場合、奥行きは21ミリ、高さは12ミリ削減された。

 プリントエンジンはレギュラー4色(シアン、マゼンタ、イエロー、染料ブラック)と顔料ブラックの5色構成となる。プリントヘッドは従来から変更しているが、顔料ブラックが512ノズルから320ノズルに減少した以外はノズル数に変更はない。シアンとマゼンタは各1536ノズル、イエローと染料ブラックは各512ノズルだ。

 無論、最小インク滴1ピコリットルの3サイズドロップレット技術も継承しているので、MP610とほぼ同等の印刷速度を備える。スキャンエンジンはMP980と同じ4800×9600dpiの解像度を持つ。ただし、センサーはCIS方式で、フィルムスキャンは非対応だ。

 そのほかの機構もMP610と同様だ。自動両面印刷機構や2系統給紙(前面カセットは普通紙のみ)、CD/DVDレーベル印刷機構を搭載しており、快適な使い勝手に変わりはない。また、デジタルカメラ、メモリカード、プリントビームなど、各種のダイレクトプリント機能も漏らさず継承している。ダイレクトプリントは従来からの機能に加えて、リポート用紙や方眼紙などのフォームプリントやカレンダープリント、証明写真プリントといった新機能が利用できる。

前面と背面の2系統給紙はMP980と同様だ(写真=左)。インクは染料4色と顔料ブラックの5色構成で、3サイズのインク滴を打ち分ける高速エンジンを継承している(写真=中央)。スキャナは光学4800dpiのCISセンサーを搭載し、こちらはフィルムスキャンに対応していない(写真=右)

・PIXUS MP620(キヤノン)――実売2万円台後半

「PIXUS MP620」

 今年からラインアップに追加された「PIXUS MP620」は、MP630の下位にあたる複合機だ。MP630にはない100BASE-TXの有線LANとIEEE801.11b/gの無線LANを標準搭載したネットワーク対応モデルとなる。店頭価格で見ればMP620のほうが上だが、プリンタの性能はMP630が上となる点は覚えておきたい。

 従来機のMP610よりも丸みを帯びたボディデザインはMP630と共通で、本体サイズは450(幅)×368(奥行き)×176(高さ)ミリだ。外観の違いは液晶モニタ周囲のカラーが異なる程度なので、購入時には間違えないように注意したい。

 見た目はさほど変わらないMP630とMP620だが、プリントエンジンには大きな差がある。MP620に搭載されたプリントヘッドのノズル数は、シアンとマゼンタが各768ノズル、イエローと染料ブラックが各256ノズル、顔料ブラックが320ノズルとなっている。要はシアンとマゼンタのノズルが半減したわけだ。当然ながら印刷速度はMP630よりも落ちる。PC経由のL判印刷ではノズル数を反映して、約2倍の印刷時間を要した(印刷速度の検証は次回以降で掲載予定)。スキャナも解像度2400×4800dpi(CISセンサー)と控えめだ。

 機能面でもネットワーク機能を標準装備した一方で、CD/DVDレーベル印刷機構、自動両面印刷、プリントビーム(オプションで対応可)が割愛されている。プリントエンジンの性能やこうした付加機能よりもネットワーク機能を優先したい一部のユーザー向けの製品だ。

前面と背面の2系統給紙は上位モデルと共通だ(写真=左)。インクは染料4色と顔料ブラックの5色構成でMP630と同じだが、プリントエンジンの性能はMP630にはおよばない(写真=中央)。スキャナは光学2400dpiのCISセンサーを搭載し、フィルムスキャンには非対応だ(写真=右)

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