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NASらしからぬ自由度が魅力――ネットギア「ReadyNas NV+」を試す元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年01月23日 17時30分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

家庭向けから小規模オフィス向けまでのNASをラインアップするネットギア

ReadyNas NV+

 ネットギア(NETGEAR)は、1996年にBay NetworksのSOHO向け製品部門として設立されたネットワーク機器ベンダーだ。その後、Nortel Networksによる親会社Bay Networksの買収などを経て、2002年から独立したネットワーク機器会社として活動、NASDAQに上場もしている。

 そのネットギアが本格的にネットワーク接続型ストレージ(NAS)事業に参入したのは2007年3月、NAS専業ベンダであったInfrantを買収してからだ。それまで同社のNASは、パーソナル向けの「SC101」のみだったが、Infrantの買収によりSOHO〜小規模事業所クラスへ展開できる製品ラインアップを得た。

 ここで紹介する「ReadyNAS NV+」は、4台のHDDを内蔵可能なSOHO〜小規模オフィス向けのNASシステムである。HDDなし、1Tバイト(250Gバイト×4)、1Tバイト(500Gバイト×2)、2Tバイト(500Gバイト×4)、4Tバイト(1Tバイト×4)の5種類の構成が販売されている。今回試用したのは1TバイトのHDDを4台内蔵した4Tバイトモデル(RND4410)だ。

企業ユースに耐える金属製のボディ

 ReadyNAS NV+シリーズの特徴の1つは、ボディが金属製であること。通風用のパンチグリルも含め、ボディの大半が金属でできており、高級感がある。変な例えかもしれないが、クロームを効果的に配したデザインは、アメリカン・グラフィティに登場してもおかしくないモダンなデザインだ。堅牢な作りのボディサイズは200(幅)×222(奥行き)×132(高さ)ミリ、重量は約4.6キロと重量感もあり、信頼性の要求される企業での利用にも十分応えてくれるだろう。

 中央部のパンチグリル部はそのまま扉になっており、開くとHDDベイが4基用意されている。いずれもしっかりした金属製のマウントを用いたスロットで、ホットスワップが可能だ(2台以上のドライブで冗長構成をとっている場合)。前面パネルの下には本機の動作状況を表示するLCDパネルがあるが、5分後にバックライトが消灯する仕様となっている(電源スイッチを短く押すことで点灯する)。

 上部にはUSB 2.0のポート、バックアップボタン、HDDのステータスLED、アクセスLED、電源スイッチが並ぶ。バックアップボタンは、標準では前面パネルのUSBポートに接続された外部HDDに本機のデータをバックアップする設定になっているが、ワンタッチで任意のバックアップを行うよう設定しておくこともできる。加えて、背面には2つのUSB 2.0ポートが用意されており、USB接続の外部HDDに加え、プリンタやUSBフラッシュメモリ、UPSといったさまざまな周辺機器を接続することが可能だ。

本体前面(写真=左)と背面(写真=中央)。前面には状態表示LEDやUSB 2.0ポート、バックアップボタンが並ぶ。前面の扉を開くとHDDベイにアクセスできる(写真=右)

X-RAIDモードでHDDの増設が容易に行える

 さて、本機はHDDなし、あるいは2台のHDDを内蔵した構成でも販売されていることが示唆するように、ドライブ構成の自由度が高い。これはそのままRAID構成の自由度が高いことを示している。本機の動作モードは、Flex-RAIDモードとX-RAIDモードの2つに分けられ、Flex-RAIDモード時はRAIDレベルを0/1/5から選ぶことになる。

 一方、このReadyNASシリーズ独自のRAID機能であるX-RAIDモードは、ストレージ容量(ドライブ数)により自動的にボリュームサイズを拡張できるRAID技術だ。1台のドライブのみを内蔵する際は冗長性を得ることはできないが、そこにもう1台のHDDを追加することで、利用可能な容量は1台の時と変わらないものの、RAID 1に相当するRAID機能が自動的に加わる。さらにもう1台追加して計3台にすると、ボリューム容量が2倍(2台分)になり、RAID 5相当の冗長性が得られるようになる。計4台ならRAID 5相当の冗長性を維持しつつ、ボリューム容量が3台分になるというわけだ。

 通常、こうしたRAIDレベルの変更を伴うボリュームサイズの変更は、ボリュームデータの消去も行うため、データを一時的に別のストレージにバックアップする必要があった。もちろん、バックアップ/リストアの作業中に、アプリケーションからRAIDボリュームにアクセスすることはできない。その点、ReadyNAS NV+であれば、ボリュームサイズの変更中も、性能は低下するもののデータにアクセスすることができる。しかもホットスワップをサポートしているから、NASをシャットダウンする必要もない(もっとも、ボリュームサイズの変更中は冗長性が失われているので、アクセスしないほうが望ましいが)。

 X-RAID技術のメリットは、こうした自動的なRAIDボリュームの拡張を、データのバックアップなどを必要とせず、オンラインのまま行える点にある。この技術の応用として、オンラインのままRAIDボリュームを拡張することも可能だ。例えば500Gバイト×4で構成された2Tバイトのボリュームを、1台ずつドライブを1Tバイトに交換していき、4台目の交換が終わった時点で4TバイトのRAIDボリュームにすることができる。1台ずつ交換していくため時間がかかる(1台交換するたびにRAIDボリュームの再構成が行われるため)が、途中でデータをバックアップせず移行できるというメリットがある。

 このX-RAID技術を利用するための条件は、追加するHDDが稼働中のHDDと容量が同じか大きいこと、利用するRAIDボリュームが1つに限定されることの2点だ。逆にいえば、Flex-RAIDモードであれば、4台のHDDを2台で構成されるRAID 1ボリューム×2として利用することができるが、X-RAIDモード時はこれができない。X-RAID技術の柔軟性を考えれば、十分に納得の行くトレードオフだろう。

機能は多彩、設定は容易

 今回試用したRND4410は、工場出荷時に4台のHDDがインストール済みであるため、4台のドライブがFlex RAIDモードのRAID 5で構成されていた(後から拡張する必要がないため)。しかし、ドライブを内蔵しないベアボーンとして、あるいは2台のみを内蔵したモデルとして導入する場合には、X-RAIDは魅力的なオプションに違いない。ちなみに、ベアボーンで導入できるということが示すように、本機のOSは本体側にファームウェアとして実装されており、データを失うことをいとわなければ、すべてのHDDを一気に交換することもできる。

 こうした高度な機能を備えるReadyNAS NV+だが、利用や設定は極めて容易だ。HDDを内蔵して出荷された製品であれば、イーサネットケーブルを接続し、電源を投入するだけで基本的に動作する。設定は、付属のユーティリティであるRAIDarと、Webブラウザで行う。Webブラウザからは、ネットワーク関連の各種の設定に加え、HDD1台ごとの温度や冷却ファンの回転速度まで、細かなステータスを調べたり、ファームウェアの更新を行うことが可能だ。ほかに省電力設定(HDDのスピンダウン設定)やBitTorrent設定、さらにはBonjourサービスやUPnPの設定も行うことができる。

RAIDarを起動すると、レーダーのアニメーション表示で、ネットワーク上のReadyNASデバイスを探索する(画面=左)。発見されたReadyNASデバイス。設定ボタンを押すとWebブラウザが開く(画面=中央)。ReadyNAS NV+の設定画面。すべてをメニューから行うアドバンスモードと、初期設定を手順にそって行うウィザードモードが利用できる(画面=右)

ステータスの利用環境タブの内容。両端のドライブ1とドライブ4が3度づつ温度が低いことが分かる(画面=左)。ディスクのスピンダウン設定に加え、毎日定時に起動し、定時にオフする、という利用も可能だ(画面=中央)。BonjourやUPnPにも対応(画面=右)

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